高岡、金沢で国宝満喫 両市連携のモニターツアー開始勝興寺、瑞龍寺、尚蔵館展

壮大な伽藍を巡り、国宝の魅力を満喫する参加者=高岡市伏木古国府の国宝勝興寺

 加賀藩文化を共有する高岡市と金沢市が連携し、前田家ゆかりの歴史・文化を体感するモニターツアーは20日、両市で第1回目が行われた。ツアーは来春の北陸新幹線敦賀開業やインバウンド(訪日客)需要の高まりも見据え、新たな広域観光の定着を目指す。初日は石川、富山から76人が参加し、高岡市にある勝興寺、瑞龍寺の2国宝や金沢市内で開催中の「皇居三の丸尚蔵館(しょうぞうかん)収蔵品展」(北國新聞社共催)の国宝などを巡り、加賀藩がもたらした文化の魅力を堪能した。

 ツアーは、城や寺社、伝統工芸、禅など両市に共通する観光素材を切り口に造成。金沢発着とし、石川を訪れる観光客や石川県民を高岡に誘い、金沢観光の魅力再発見にもつなげる。

 昨年12月に国宝となった勝興寺では、観光ボランティアガイド「比奈の会」の案内で、参加者は壮大な伽藍(がらん)を散策した。

 国宝指定の本堂では、加賀藩前田家11代前田治脩(はるなが)が一時住職を務めており、還俗(げんぞく)して藩主となる際に勝興寺への支援を条件としたことで、本堂が整備された経緯が紹介された。「大広間及び式台」では、本願寺から勝興寺の住職となった良昌(りょうしょう)に3代利常の養女が嫁いだことで勝興寺は本願寺や前田家と密接な関係を築き、大広間の建設に至ったことも説明された。

 2代利長の菩提寺(ぼだいじ)として3代利常が造営した国宝瑞龍寺も訪れた。

 金沢市の石川県立美術館と国立工芸館では、国民文化祭のメイン行事「皇居三の丸尚蔵館(しょうぞうかん)収蔵品展」の後期展で、国宝8点を含む116点に目を凝らした。

 春日大社(奈良)にまつわる霊験譚(れいげんたん)をつづった国宝の絵巻物「春日権現験記(げんき)絵 巻八」の前では、寺を離れて涙する僧のもとに現れた春日明神が「離れていても見捨てはしない」と告げる場面などに見入った。

 伊藤若冲(じゃくちゅう)が全30幅にわたって動植物を描いた国宝「動植綵絵(どうしょくさいえ)」の「牡丹小禽図(ぼたんしょうきんず)」「大鶏雌雄図(たいけいしゆうず)」や、5代綱紀が工芸の百科事典として編集した重要文化財「百工比照(ひゃっこうひしょう)」も参加者の注目を集めた。

 金沢市京町の石塚耐子さん(73)は「前田家とのつながりが深い勝興寺や瑞龍寺、若冲の迫力ある筆遣いの作品を間近で見ることができ、ぜいたくな時間だった」と話した。

 能登町柳田の会社員、松山真也さん(28)は「勝興寺の大きな本堂に圧倒された。石川、富山にまたがる加賀藩前田家の歴史をより深く知りたいと感じた」と語った。

華やかな名品を眺めるツアー参加者=金沢市の石川県立美術館

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