神戸市都心部のタワマン規制、条例改正から3年 市長「まちの荒廃防ぐ」と改めて強調 人口減招くとの指摘も

就任10年の節目を前にインタビューに応じる久元喜造神戸市長=同市役所

 神戸市が都心部でタワーマンション(タワマン)の建設規制を始めて3年が過ぎた。全国的には住宅需要の拡大で建設が相次ぐが、そんな他都市を横目に、久元喜造市長は一線を画した街づくりを貫く。人口減少が続く中、タワマンに頼らない選択の行方はいかに-。(井沢泰斗)

 「数十年先、タワマンは廃虚化する可能性が高い。私はあの世から荒廃した神戸を見たくない」

 就任から10年の節目のインタビューで久元市長は、改めて持論を強調した。

 市は3年前の条例改正で、三宮など都心部での新規建設を制限。市内に立つ高さ60メートル以上のタワマンは74棟で、このうち規制エリアに21棟あるが、改正後に建てられたケースはないという。

 市が建設抑制を続けるのは、タワマンの持続可能性に懸念があるためだ。老朽化した際の建て替えや修繕は、費用面などで住民の合意形成が難しく、将来の不安要素となっている。最終的に誰も住まなくなり、廃虚と化すのではないか-。

 市の担当者は「建設から数十年たったタワマンがまだ存在しないため未知数」としつつ、「市の中心部に廃虚が残れば、景観への影響も大きい」とみる。

 都心部の住宅地化に歯止めをかけ、商業・オフィスの機能拡充を図る狙いもある。同様の規制を先行導入した横浜市ではかつて、タワマンの増加で居住者が増えた一方、オフィスや商業施設で働く人が減った。

 大阪のベッドタウン化を避けたいとの考えもあり、市は「三宮に商業・オフィス機能があるから人が集まり、周辺人口を支えている。住宅地化が進めば都市構造が崩れる」とする。

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 市の人口は10月、22年ぶりに150万人を切った。タワマン規制によって、流入人口を増やす機会を逃していると見る向きもある。

 不動産経済研究所大阪事務所(大阪市)によると、近年、利便性の高い都市部のタワマンは需要が高まり、業者側も開発意欲が旺盛という。マンション開発の和田興産(神戸市中央区)の担当者も「現在の規制では挑戦することもできないが、三宮で商品価値の高いマンションを建てたいという希望はある」と本音を明かす。

 こうした見方に、久元市長は「人口という観点ではマイナスだが、人口減少時代にふさわしいバランスの取れた街づくりが必要だ」と規制にこだわる。

 市は、郊外駅周辺の再整備でかつてのニュータウンの環境を整え、本格化している三宮再開発をてこに企業誘致を進める。市企業立地課は「三宮ではオフィスがさらに増える。駅前の魅力が高まれば企業誘致もしやすくなる」と期待する。

 規制の成果は未知数だが、同事務所の笹原雪恵所長は「企業誘致が進めば就業人口が増え、周辺の住宅需要にもつながる。規制の成否は誘致にかかっている」と分析する。

     ◇ 【神戸市のタワーマンション規制】 2020年7月に「神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例」を改正。JR三ノ宮駅南側の22.6ヘクタールで新たな住宅建設を禁止した。新神戸駅から神戸駅までの約292ヘクタールでは、大型敷地(千平方メートル以上)に新築するビルの住宅部分の容積率を400%以内に限定。タワマンは事実上、新築できなくなった。規制は06年に導入した横浜市に次いで2例目。

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