パラグライダーの翼を再利用、バッグやポーチ商品化 神戸出身の女性「生地一つ一つにストーリー」

役目を終えたパラグライダーの生地を活用し、ポーチやバッグなどを作る安國真理子さん=京都市左京区

 空での役目を終えた後は生活雑貨に-。神戸出身のイベントプランナーの女性が、廃棄処分されるパラグライダーの布製の翼を再利用し、ポーチやエコバッグなどを作っている。生地の提供元は、関西有数のパラグライダーの人気スポット・丹波市で営業するスクール。廃棄される物を加工し、新たな価値をつけて生まれ変わらせる「アップサイクル」製品として売り出している。(谷口夏乃)

 京都市在住の安國(やすくに)真理子さん(40)が手がける小物ブランド「parabum(パラバム)」。青や黄、赤やピンクの色鮮やかなサコッシュや大小異なるサイズのバッグなどの商品を展開する。材料にパラグライダーの翼に当たる「キャノピー」を使い、全てミシンで手作りしている。

 現役を引退した布地には日焼けやこすれ、汚れもあるが、それもどこか味わい深い。「生地一つ一つに空を旅していたストーリーがある。それを想像しながら何を作ろうか考えるのが面白い」。機材の不備が命の危険に直結する空のスポーツ。その安全を支える化学繊維の生地は、耐久性と速乾性、軽さに加え、カラフルさも魅力だ。

 安國さんは神戸市中央区出身。学生時代は山岳部などに所属し、アウトドアメーカー勤務を経て、現在フリーランスで、京都や神戸でイベントを運営する。2013年から、毎月1日に湊川神社(神戸市中央区)で開催される「楠公さんの手作り市」の運営に携わり、作り手たちと交流するうちに小物作りに興味を持ったという。

 現在の取り組みは昨夏、「丹波パラグライダースクール」(丹波市市島町上田)で働く友人から、機材は廃棄する際、金具やひもなどを全て取り外す必要があり、倉庫などで保管することが多いと聞いたのがきっかけ。「空を飛んでいた生地だから、倉庫で眠らせておくより外に出して使ったほうが絶対にいい」とアイデアが湧いた。

 友人を介してスクールに廃棄品の提供を依頼、本格的な小物作りに初挑戦した。シューズケースや旅行用の袋などを自作して使っていると周囲から好評で、商品化に乗り出した。

 今年2月、「楠公さん-」で初めて販売すると、性別や世代を問わず好感触を得たといい、以降、定期的に神戸や京都のマルシェに出店している。素材は生地が出てきたタイミングで同スクールへ取りに行き、隙間時間などに製作する。将来は登山スポットの山小屋などで商品を販売し、売上の一部を山道保全に充てる活動も考えている。

 安國さんは「普段使いやアウトドアなどで広く使ってもらいたい。買ってくれた人が環境への意識を持ち、身の回りにあるものの寿命を延ばす工夫を考えるきっかけにもなれば」と話している。

 パラバムは11月23日、丹波市山南町和田の薬草薬樹公園で開催される「ニード・マーケット」に出店予定。ポーチ1個1500円など。使っていないパラグライダーやハンググライダーの無償提供を受け付けている。

【アップサイクル】 廃棄物に新たな機能や価値を持たせて、新しい製品によみがえらせること。創造的再利用ともいう。廃材や規格外の食材、売れ残った服などを活用した商品例がある。持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた、環境意識の高まりなどを背景に注目が集まっている。

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