【キッコーマンしょうゆ工場見学が予約制で再開!】宮内庁に納める御用蔵醤油とは?しょうゆソフトや工場限定商品も現地ルポ

日本の食卓に欠かせない調味料・醤油(しょうゆ)。国内シェアNo.1のしょうゆメーカー「キッコーマン」では、国内3ヶ所にあるしょうゆ工場で、2023年5月から工場見学を再開しました。今回、千葉・野田工場の施設内にある“しょうゆ”のすべてがわかるミュージアム「キッコーマンもの知りしょうゆ館」を訪問。今昔のしょうゆづくりを学べて、工場限定商品やスイーツもありました!

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しょうゆづくりに適した地、野田市

約350年前の江戸時代、利根川と江戸川が近くに流れる千葉県野田でしょうゆづくりを始めた「キッコーマン」。当時は江戸川を利用して、江戸(東京)まで半日かけてしょうゆを運搬していたそう。その交通の便のよさが、しょうゆづくりが発展した大きな要因の1つでした。また、しょうゆづくりに合う水質の地域で、近隣から大豆と小麦を、行徳や赤穂から塩を容易に集めやすいということも、大きく影響しています。

1925年に現在の野田工場がオープンし、1991年に見学施設として整備され、これまで大人から子どもまで多くの人に“しょうゆ体験”を届けてきました。しょうゆを使ったレシピを公開し、小学校での“しょうゆづくり体験”や、工場見学の受け入れなどの「体験」を通して、様々な「食育」にも取り組んでいます。

コロナ禍を経て2023年5月から、千葉・野田工場、兵庫・高砂工場、北海道キッコーマンの3ヶ所で、完全予約制(無料)の工場見学を再開。スタッフさんと一緒にしょうゆの歴史や知識などを、楽しく学べる見学コースです。

野田工場は、東武鉄道アーバンパークライン(野田線)「野田市駅」から徒歩約3分という駅近にあり、見学ツアーは工場内の「キッコーマンもの知りしょうゆ館」にて行われます。

館内はリニューアルしていて、オレンジと白の通路はポップ! 奥では「萬」の字が渋い内装です。

キッコーマンのキャラクター「なあにちゃん」のフォトスポットや売店などもあり、記念撮影やお買い物も楽しめます。

約1時間の工場見学

工場見学は、映像ホールにて「映像視聴」からスタート! 「原料処理、製麹(せいきく)、仕込み、圧搾・清澄(せいちょう)、火入れ、詰め」という製造工程を経て、しょうゆは私たちの食卓へと届きます。キッコーマンの歴史、しょうゆの製造工程など、約15分の映像を見て、ふむふむとお勉強!

映像を観た後、スタッフさんと一緒に館内を巡ります。実際の製造ラインや、熟成する「もろみ」の色や香りまで体験でき、親しみあるイラストや写真で説明もわかりやすい(展示は撮影OK、工場の機械や動画での撮影はNG)。

「蒸した大豆・炒って砕いた小麦・食塩」と、300年以上前から変わらない原材料を使い、しょうゆづくりに欠かせない醸造微生物は、門外不出の「キッコーマン菌(麹菌)」と、「酵母」「乳酸菌」の3種類。大豆と小麦に麹菌を混ぜて、3日間かけて「しょうゆ麹」を育てます。

こちらは、小学校での“しょうゆづくり体験”で観察できるしょうゆ麹の変化の様子。

(左から)1日目は、大豆と小麦がふっくらして、中は温かくて香ばしい香りがしています。2日目は、菌が白っぽく表面を覆っているので、手でしっかり混ぜて全体を馴染ませます。3日目は湯気のように菌がふわぁ~と舞い上がっていました!

今は機械化していても、昔はこのように手作業で「しょうゆ麹」はつくられていました。

この「しょうゆ麹」に食塩水を加え、半年かけて「もろみ」を仕込みます。(右奥から)仕込みたて、2~3ヵ月後(発酵期)、4~6ヵ月後(熟成期)と、徐々に色が濃くなって、香りも深みが出てきます。

見学コースでは、実際に、熟成過程のもろみの色や香りを比べることができます!

そして、もろみは、工場の屋外にある、大小あわせて数百本の仕込みタンクで発酵・熟成します。1番大きいタンクは、直径7m・高さ20mもあり、1リットルボトルで約30万本のしょうゆができるのだそう!

次は、「圧搾・清澄」の工程へ。もろみを大きな布(ろ布)に入れて、3階建てのビルほどの高さまで折り重ね、上から最大2,000トンの重さで圧し、20時間かけてゆっくりと搾ります。

搾った後の「生しょうゆ」を数日間休ませると、「しょうゆ油」「きれいなしょうゆ」「おり」の3層に分かれ、「きれいなしょうゆ」に「火入れ」をして、色・味・香りを整えて、遂にしょうゆの完成です!

写真では、左の箱の中にもろみを入れたろ布を入れ、上から重りを置きしょうゆを搾り、小学校での“しょうゆづくり体験”で説明する「圧搾・清澄」の様子を再現しています。

(左から)「特選 丸大豆しょうゆ」、「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」、「いつでも新鮮 味わいリッチ減塩しょうゆ」。赤橙色の濃さ、香り、味わいのキレは似ているようで微妙に違うのが、並べてみたらよくわかります。

「火入れ」をしない「生(なま)しょうゆ」は刺身や冷奴など、つける・かけるしょうゆ向きで、「火入れ」をすると煮物料理などに合うしょうゆになるそうです!

工場では、もろみを搾った後の「しょうゆ粕」は乳牛の飼料やキッコーマンの名刺など再生紙へ、「しょうゆ油」は工場のボイラーの燃料へとリサイクル。無駄もないです!

見学コースの最後は、歴代のしょうゆや世界で販売している商品を並べているコーナーへ。江戸時代から昭和初期までは樽に入れていて、その後は、缶・ガラス瓶・プラスチックと時代に伴い容器も変化してきました。

甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の5つの味のバランスがよくて料理に合うしょうゆ。キッコーマンは今では、海外8ヵ国に工場をおき、世界100ヶ国以上へしょうゆは広がっています!

「御用醤油醸造所」も見学OK

1908年に宮内省(現在の宮内庁)の御用達(✳現在、宮内省御用達制度は廃止)を賜って以来、今でも「御用蔵醤油」をつくり続けており、施設内にある「御用醤油醸造所」も、もの知りしょうゆ館見学者は自由に見学ができます。

1939年、御用醤油の専用醸造所(通称:御用蔵)として江戸川沿いに建設されましたが、老朽化により野田工場へ移築しています。2階建てで、建設当時に使われていた大きな樽や道具類などを数多く展示しています。

御用蔵醤油は、国産の大豆・小麦・食塩のみを厳選し製造しています。写真は、しょうゆ麹を育てる「麹室(こうじむろ)」を再現したもの。

工場で近代的なしょうゆづくりを見学したばかりなので、多くの工程を手作業で行っていたと思うと、当時の職人さんの根気強さに頭があがりません!

もろみは、杉の木桶に仕込んで約1年間発酵・熟成します。「仕込室」は現在も使っており、もろみがポコポコと熟成する音も聴こえてくるそう。

このようにして御用蔵でつくられた「御用蔵醬油」は、宮内庁に納められる他、工場内の「もの知りしょうゆ館内売店」や、D2C限定商品を紹介する専用サイト「亀甲萬本店」のオンラインで販売しています。

戦時下でも伝統的なしょうゆ醸造の技術を継承し、御用醤油醸造所は「ちば文化資産」に選定されていたりと、貴重な文化を知ることができます。

お土産探しとおやつを楽しもう

締めくくりは、見学者だけが利用できる「もの知りしょうゆ館売店」での買い物や、「まめカフェ」でのスイーツを楽しみましょう!

売店おすすめ土産は?工場限定商品も豊富!

売店では、キッコーマンのしょうゆ、野田市の名物、オリジナルグッズなど、工場限定商品もたくさん販売しています。濃口、淡口、甘口、だし入りなど使い分けも楽しめる、こだわりのしょうゆも種類豊富!

通年販売「亀甲萬本店 御用蔵」(税込1,944円)。先ほど見学した御用醤油醸造所でつくられた貴重な火入れしょうゆ。

1年に1度の限定醸造・数量限定「亀甲萬本店 御用蔵生」(税込2,700円)。食塩水の代わりに、御用蔵で約1年間かけて発酵・熟成させた「生」のしょうゆ。贈答にも喜ばれる逸品です。

「亀甲萬本店醤油 三種アソート」(税込3,564円)。亀甲萬本店「火入れ醤油 亀甲萬」「生醤油 一番しぼり」「生醤油 二段熟成」の3種セットで、しょうゆの使い分けを楽しめます。

「御用蔵醤油」を使った野田の名物菓子も販売しています。

地元野田にある老舗和菓子屋「御菓子司喜久屋」が、6年の構想を経て平成元年に販売している「醤油羊羹 御用蔵」(税込1,700円)。御用蔵醤油を使ったべっ甲色の羊羹で、しょうゆの豊かな風味が広がる贅沢な羊羹。「第23回全国菓子大博覧会 無鑑査賞」を受賞しています。

野田土産には煎餅がぴったりみたいです。藤井本店の固焼き煎餅「箱せんべい」(税込1,080円)は、しょうゆ・ごま・七味の3種入りで、「第23回全国菓子大博覧会 栄誉大賞」を受賞しています。

(右)箸が止まらない!と云う「サクサクしょうゆ 90g」(税込375円)、(左)工場限定「サクサクしょうゆ 350g」(税込807円)は「2016年業務用加工食品ヒット賞」も受賞。両方とも大ヒットしています!

発酵もろ味を練り込んだ「夢中になるバウムクーヘン」(1個税込292円)も、とても気になります!

工場限定「なあにちゃんストラップ」(税込514円)。見学ツアーのスタッフさんも身に着けていて、とても可愛らしかったです!

しょうゆ卓上びんや、なあにちゃんのイラストをプリントした「タオル」(各税込540円)。

なあにちゃん柄のエプロン、「萬」印の帆前掛け、Tシャツなど、男女で使える衣類系(1,000円台~)。

しょうゆ粕を再利用したレターセット(税込200円)、ボールペン、クリップ、メモ帳、ロゴステッカーなど文具もありました。

お弁当箱サイズのトートバッグ(税込800円)、工場限定「しょうゆ卓上びんのストラップ」(税込257円)と、さりげないオシャレしょうゆグッズたち!

まめカフェ

売店の隣には、しょうゆのソフトクリームを楽しめる「まめカフェ」を併設。ベンチもあって、スイーツ休憩にもぴったり。

券売機で購入して奥のカウンターで引き換えてもらうスタイルです(現金のみ)。

「しょうゆ」「豆乳しょうゆ」「しょうゆ・豆乳のミックス」のソフトクリーム(各税込300円)。それぞれ「コーン・カップ」と選べます。カップにはウエハースが添えられていて、カップのみハーフサイズ(各税込200円)もOK。

筆者は食べ比べができる「ミックス/コーン」をいただきました。通常サイズがてんこ盛りでうれしい! バニラアイスとしょうゆの相性がいいように、ミルキーでふわっとしょうゆが香るしょうゆソフト。さっぱりしていても、しょうゆの香りと豆乳の豆感をしっかり味わえる豆乳しょうゆソフト。

色味が似ているからこそ、味覚を繊細に刺激してくれるミックス。なあにちゃんと記念撮影をして、工場だけの特別な思い出に残りました。

まめカフェ

営業時間:9:30~16:00(入館は15:00まで)

✳もの知りしょうゆ館見学者のみ利用可能

TEL:04-7123-5136

しょうゆ料理にチャレンジ!

工場見学終了後は、なんと記念にしょうゆもプレゼントされるので(プレゼントは変更する場合あり)、おうちに帰ったら早速しょうゆを使った料理にチャレンジしたくなりました!

ちなみに、キッコーマンのしょうゆは、関東では“濃口”が主に使われており、近畿では“濃口・淡口”を使い分け、九州・山陰など他地域では“甘口・淡口・刺身しょうゆ”を使い分けているみたいです。

ルーツを知り発見も多いキッコーマンの工場見学。350年前から始まったしょうゆづくりは現代的に進化しているものの、伝統を継承して、さらなる追求はまだ止まらないようです!

キッコーマンもの知りしょうゆ館(野田工場)

住所:千葉県野田市野田110 キッコーマン食品野田工場内

開館時間:9:00~16:00(入館は15:00まで)

休館日:土・日・祝日・毎月第4月曜(祝日の場合は翌日)・GW・お盆・年末年始

(都合により臨時休館する場合あり)

完全予約制工場見学

予約人数:2名様~

入館料:無料

見学案内時間:9:00、10:00、11:00、13:00、14:00、15:00(計6回)

見学所要時間:約60分(ビデオ上映約15分・しょうゆの製造工程見学約45分)

交通:東武アーバンパークライン(野田線)「野田市駅」より徒歩約3分

問い合わせ・予約:04-7123-5136

受付時間(休館日を除く):9:00~16:00(12:00~13:00以外)

公式サイト:https://www.kikkoman.com/jp/

亀甲萬本店(オンライン販売):https://www.kikkoman.co.jp/honten/

[all photos by kurisencho]

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