北朝鮮が人工衛星を搭載したロケットの打ち上げを予告 期間は11月22日から12月1日まで

北朝鮮当局から海上保安庁に対して、日本時間2023年11月22日から12月1日までの間に「人工衛星の打ち上げ」を実施するという通報があったことをNHKなどが報じています。2023年に入って北朝鮮が衛星の打ち上げ期間を予告したのは、5月と8月に続いて今回が3回目です。【最終更新:2023年11月21日11時台】

海上保安庁の「海の安全情報」ウェブサイトでは、黄海・東シナ海・ルソン島(フィリピン)東の3か所の海域に関する「衛星ロケット打ち上げ」の情報が、11月21日2時40分付の緊急情報として掲載されています。期間は日本時間2023年11月22日0時0分~2023年12月1日0時0分です。

また、同庁が提供している日本航行警報(太平洋、インド洋及び周辺諸海域を航行する日本船舶に対する緊急に必要な情報)を参照すると、黄海と東シナ海の境界付近に計2か所と、フィリピン東方の太平洋に1か所、合計3か所の海域を地図上で確認することができます。

【▲ 北朝鮮の通報を受けて黄海に設定された計2か所の海域を示した図。海上保安庁の水路通報・航行警報位置図から引用(Credit: 海上保安庁)】

【▲ 北朝鮮の通報を受けてフィリピン沖の太平洋に設定された海域を示した図。海上保安庁の水路通報・航行警報位置図から引用(Credit: 海上保安庁)】

通報された海域はすべて、2023年5月と8月に北朝鮮が実施した「チョンリマ(千里馬)1型」ロケットの打ち上げ時と同じです。チョンリマ1型は軍事偵察衛星「マンリギョン(万里鏡)1号」の軌道投入を目的に、1回目は日本時間2023年5月31日、2回目は日本時間2023年8月24日に打ち上げられました。打ち上げは2回とも失敗に終わっており、1回目はチョンリマ1型の2段目エンジンに異常が生じて黄海(朝鮮西海)に墜落、2回目は3段目の飛行中に非常爆発システムの誤作動が発生したとされています。

8月24日の打ち上げ実施直後、北朝鮮の国家宇宙開発局は2回目の打ち上げ失敗について、各段のエンジンの信頼性やシステム上の大きな問題が原因ではないと朝鮮中央通信を通じて述べていました。また、同局は2023年10月にも3回目の打ち上げを実施すると述べていましたが、10月に打ち上げの予告はありませんでした。

【▲ 朝鮮中央通信が2023年6月1日付で掲載した画像。2023年5月31日に北朝鮮が打ち上げた「チョンリマ(千里馬)1型」ロケットとみられる(Credit: 朝鮮中央通信)】

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北朝鮮は人工衛星を搭載したロケットの打ち上げを2016年までに4回行ってきました。2023年5月と8月に続いて今回も軍事偵察衛星の打ち上げを目指している場合、地球観測衛星や偵察衛星で利用される極軌道への投入が行われるものとみられます。

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東西冷戦期の米ソ宇宙開発競争で大陸間弾道ミサイルが人工衛星や有人宇宙船の打ち上げに転用されたように、大陸間弾道ミサイルと衛星打ち上げ用のロケットは表裏一体なシステムでもあります。しかし、地下核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対して、国連安全保障理事会は弾道ミサイル技術を使用した発射をはじめ、弾道ミサイルおよび核関連活動の停止・計画の放棄を安保理決議で義務付けています。

首相官邸によると、今回の打ち上げ予告を受けて岸田総理は「関係省庁間で協力し、情報の収集・分析に万全を期し、国民に対して、適切に情報提供を行うこと」「米国や韓国等関係諸国と連携し、北朝鮮が発射を行わないよう、強く中止を求めること」「不測の事態に備え、万全の態勢を取ること」を2023年11月21日1時50分に指示しました。また、防衛省は2023年5月の打ち上げ予告を受けて5月29日に発出した弾道ミサイル等に対する破壊措置命令を現在も維持し、警戒を続けているということです。

Source

  • 海上保安庁 \- 海の安全情報
  • 海上保安庁 \- 日本航行警報
  • 首相官邸 \- 北朝鮮より衛星を打ち上げる旨通報があったことに関する総理指示(01:50)
  • NHK \- 北朝鮮が「人工衛星」打ち上げを通報 22日から12月1日までに

文/sorae編集部

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