<インタビュー>13季ぶりのJ1復帰へ!大卒ルーキー・J2山形MF泉柊椰が語るJ1昇格への決意

J2モンテディオ山形は今季21勝4分17敗でJ1昇格プレーオフ(PO)圏内の5位に入り、今月25日午後1時に静岡・IAIスタジアム日本平でJ1昇格を争う4位清水エスパルスと対戦する。

POに優勝すれば2011年以来13季ぶりのJ1復帰を目指す山形に、意欲に満ちあふれる大卒ルーキーがいる。今季J1優勝争いを繰り広げるヴィッセル神戸から育成型期限付き移籍で加入したMF泉柊椰(とおや)は、昨季大学No.1と称されたサイドアタッカーであり、キレのあるドリブルとゴール前でのチャンスメイクで違いを作り出せる逸材だ。

今回Qolyは山形に育成型期限付き移籍した大卒ルーキー・泉にインタビューを実施。J1復帰への思いやルーキーシーズンの手応えなどを聞いた。

山形に舞い降りた昨季大学No.1ドリブラー

――ルーキーシーズンを振り返っていかがでしたか。

一言でいえば悔しいシーズンだったと思います。

自分が思い描いていたものと違うこと、(J1第5節サガン鳥栖戦で)点を取ってから「いい状況になっていくんだろう」と自分の中で思っていたので、そこからどんどん良くなくなっていったという悔しいところだと思います。

――神戸でのプロ初ゴールですね。

あの鳥栖戦のときのゴールは自分的にも良かったですし、ゴールだけじゃなくて、そのゲーム自体も攻撃のところでは違いも出せていたので良かったと思いますけど、そこからですね。どんどん(調子が)落ちていったので悔しかったです。

――山形への育成型期限付き移籍の経緯を教えてください。

神戸で出場機会があまり得られなかったところですね。神戸のときに、右サイドハーフなどで結構プレーしていたと思うんですけど、自分的にも上手くできてない自覚もありました。

やっぱり左で勝負したいということもあって、左サイドでプレーできるチームを探すわけじゃないですけど、神戸の強化部長と話して、期限付き移籍で興味を持っている、自分を求めているチームが山形でした。

そこで「左サイドで勝負してほしい」と言われましたし、それでレンタル移籍になったと思います。

――過去に神戸アカデミーの先輩で、大学を経て神戸に加入した小林成豪選手(現・レノファ山口)が山形に育成型期限付き移籍してリーグ戦34試合12得点と活躍されましたけど、そういった過去のケースは調べていましたか。

モンテディオ山形はサイドアタッカーのステップアップが多いチームという話は聞いていましたし、僕も調べていたので把握しています。(小林成豪の山形への期限付き移籍も)僕がユース時代から活躍していたので知っています。

山形での成長と感じた課題

今年8月に育成型期限付き移籍で山形に加入した泉は、これまで7試合に出場した。繊細なタッチを入れたドリブルや鋭い動き出しなど、サイドで多くのオプションを見せて相手の脅威となった。神戸では今季リーグ戦8試合1得点とプロ初ゴールを挙げたものの、先発は1試合のみだった。新天地山形で収穫と課題を見つけることができた。

――山形に加入して抱いた印象、チームの雰囲気を教えてください。

チームの雰囲気としては、フレンドリーな選手が多かったですね。自分が期限付き移籍なので半年の契約ですけど、迎え入れるチームの雰囲気の良さがありました。

プレー面でも自分がボールを持ったら「何でもやりたいようにやっていいよ」と言ってくれた。自分がやりやすい環境を作ってくれる雰囲気だったと思います。

――自身の強みを山形にどう還元しようと取り組んできましたか。

自分の武器はやっぱりドリブルだと思っていますし、左サイドを突破することが自分のできること、チームから求められていることだと思っています。左サイドでプレーした時間が神戸のときはあまりなかったということもありますけど、(山形で)左サイドとドリブルの感覚を戻してというか。

それも含めながら山形で求められているプレーは突破のところだと思うので、そこを還元しようと思いました。

――今季山形で成長した部分はありますか。

成長した部分でいうと途中交代からの出場が多かったんですけど、一気に流れを変えるプレーが求められたと思います。そこで背後を取りに行くところですね。自分は足元でプレーすることが多い選手だったので、背後を取るスプリントで縦に勝負するとか、そういう自分がいままでやってきたプレーとは違うプレーも求められることが多くなりました。

より縦に推進力を使うところに対する自分なりの意識も変わりました。そこのレベルも上がったのかなと思います。

――課題はありましたか。

課題はフィジカルの部分です。そこが改善されればもっともっと良くなると思うので、攻守においてそこが大事だと思いますね。

――今季の神戸、山形で学んできたことで、アマチュアとプロでの違いはありましたか。

(プロは)プレースピードが早いですし、守備のインテンシティも高いです。その中で技術を出すところと、テクニック的な部分が必要じゃない場面もありました。

背後に抜けるパワー、スピードや、フィジカル的な部分も必要なんだと神戸、山形でも感じましたね。

大学時代は三笘を研究、それはいまも生きている

びわこ成蹊スポーツ大時代は日本代表MF三笘薫のドリブルを研究していたという泉。アカデミー時代から憧れの存在で、そのドリブルを自分のものにしようと研さんを重ねてきた。時折見せる反発ステップからの流れるようなドリブルで相手を翻ろうする山形の背番号28は、さらなる進化を遂げようとしている。

――神戸はJ1優勝争いをしていますけど、神戸から刺激を受けていますか。

もちろん全試合見ていますし、神戸にいる選手たちからも連絡をもらったりもします。気にかけてくれているんだなと思います。

僕も、もともとは神戸の一員でチームと、みんなと戦ってきたというのもあります。そこは刺激をもらえますし、なにより優勝してほしいという気持ちが強いですね。

――山形サポーターの印象を教えてください。

神戸のときはあまりサポーターと関わる機会が多くありませんでした。公開練習も月に1、2回でした。それと比べて山形は1週間の間に2、3回公開練習があって、試合後にもファンサービスをできる環境があります。

自分のプレーに対して沸いてくれたりとか、僕のファンとしてドリブルに、僕のプレーに興味を持ってくれる人たちもいて、「山形に残ってほしい」と言われたりと、直接サポーターと関わる機会が多いので嬉しい部分もあります。

ファン、サポーターの方々が大事だと思うので、そういう関わりは僕的には嬉しいです。 ドリブルしたときにスタジアムが沸く感じはいまでもはっきりと覚えています。山形はいい環境、いい雰囲気だと思います。スタジアム含め、サポーターと距離が近いのでいいと思います。

――山形の生活は初めてですか。

山形は初めてですし、東北が初めてです。

――山形に来て驚いたエピソードはありますか。

車を運転していると、モンテディオ山形のエンブレムのリボンが付いている車をよく見かけます。それで僕の車が県外ナンバーということもあって結構バレることが多いです(苦笑)。

それで手を叩いてくれたりとか、そういうことにも驚きました。

あと、なによりご飯が美味しいです。果物も美味しくて、友人や家族に果物を送りました(笑)。

――大学サッカーでやり続けてきた努力は、山形で生きていますか。

大学に入学する前はそこまでドリブラーじゃなかったんですよ。中央寄りのポジションで、ドリブルするタイプではなかった。パスを出す、ザ・トップ下というようなプレーをやっていたんですけど、大学に入ってからドリブルに目覚めたというか。

ドリブルの魅力を感じて、自分なりにドリブルにこだわってプレーしてきました。そこは山形でも生かされていると思いますし、プロになれたのもこの大学の経験があってからだと思います。大学時代がないと(プロ入りは)無理だったかなと思います。

――大学時代に日本代表MF三笘選手のドリブルを卒業論文などで研究したと聞きました。その研究は生かされていますか。

もちろん生きています。僕は高校のときから三笘選手大好きでした。三笘選手が筑波大2年生のとき、ベガルタ仙台相手に天皇杯でぶち抜いて点を取ったときがありました。そのときぐらいから好きだったので。

ずっと見ていますし、その分析をして、自分なりに寄せるところと「ここは違うな」という部分が勉強にもなりますし、自分のドリブルにも生きているのかなと思います。

三笘薫

――山形でプレーして、その部分はさらにブラッシュアップできていますか。

左サイドでプレーする環境を与えられているので、できていると思います。いまはあまり試合に絡めてないですけど、トレーニングでも左サイドでプレーしていますし、監督とも「ボールを持ったときにはしっかり勝負してほしい」と言われています。そこは山形だからこそできていることなのかなと思います。

――今後のキャリアビジョン、展望を教えてください。

これからどうなるか分からないですけど、もちろんステップアップするために山形に来たのもありますし、山形を昇格させるために来たというのもあります。自分的にはもっと、もっと上のレベルに行って、J1でいずれ活躍する選手になって、日本代表に招集されたりとか、海外に行けたりとか、そういういろんな展望はあります。

でもいまはそんな余裕があまりないです。まずは一つ、一ついまJ2で戦って、結果を残してJ1にいく段階を踏むことしか考えられないというか。

目標を立てることは好きなんですけど、いまの状況だと先を見過ぎるのも難しいです。なので、一つずつかなと思います。でもいずれ海外に行ってプレミアリーグとか、三笘選手のようにという目標はあります。

総力戦のPOに勝って13季ぶりのJ1復帰へ!

昇格POは総力戦といわれている。今季泉は思うような出場機会を得ることができなかったかもしれない。ただチームの一員として戦う覚悟と決意はできている。総力戦となるこの決戦に出場すれば、チームの勝利のためにやるべきことは、はっきりしている。

――PO初戦は清水エスパルスと対戦します。出場した際の勝ち抜くビジョンがあれば教えてください。

清水は技術が高い選手が多いですし、名前の通っている選手も沢山います。前回対戦したときも技術が高くて、簡単にはボールを奪えなかったです。自分がボールを持ったときもプレッシングのスピードが早かったですし、J1で戦っているような感覚もあった。

強い相手だと思います。自分がもし出たときは、どこが対戦相手でもやっぱり変わらないと思うんですけど、突破のところだと思います。

自分がドリブルをしかけて相手のフォーメーションを崩す部分や、相手のディフェンスラインをはがしていくところが自分に求められていることだと思います。そこはどこが対戦相手でも変わらないと思います。

――POは総力戦になります。意気込みを教えてください。

自分が(試合に)出場できてないことはもちろん悔しいですけど、僕が出ていないということは、チームメートのいま左サイドを争っている二人が結果を出し続けているからだと思います。

そこは僕含め3人が切磋琢磨できているところかなと思いますし、自分も結果を出してその競争にも入っていきたいです。昇格の一つのピースになれればと思います。

――山形サポーターは長くJ1復帰を待ち続けている状況です。J1復帰への意気込みとサポーターへのメッセージをお願いします。

残り2戦は2つとも絶対勝たないと昇格できないと思うので、そこで自分ができることはドリブルのところや、ゴールでチームの力になるところだと思います。

まだ山形に来て点も取れてないですし、結果を残したい気持ちがすごくあります。出場時間はいまのところあまり取れてないですけど、それでも結果を残すために毎日努力し続けています。自分のプレーで山形を昇格させられるように頑張りますので応援をよろしく願いします。

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昨季大学サッカー最高のドリブラーといわれた期待のルーキーは今季才能の片りんを見せるも、激しい競争に苦しむ一面もあった。それでもメンタルは鍛えられ、いまはルーキーの面影はなく、J1復帰のために全力で戦う山形の戦士という表情を伺えた。この残り2試合で総力戦を制して悲願のJ1復帰につなげてみせる。

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