兵庫の食品メーカー、看板商品「アラ!」を改称 アレよアレよと12万個超販売 企画の部長コンビ「阪神がアレしてくれて本当によかった」

「アレ!」の企画や販売を推し進めた(左から)ブンセン直販事業部長の中岡淳好さんと総務部長の高島宏明さん=たつの市新宮町新宮

 プロ野球・阪神タイガースが38年ぶりの日本一を達成した今年は、食品メーカー・ブンセン(兵庫県たつの市新宮町)にとっても特別な年となった。看板商品ののりつくだ煮「アラ!」を、チームが目指した「アレ!」ともじって発売。虎柄パッケージの限定商品は虎党の心をつかみ、アレよアレよと12万個以上を売り上げた。自身も熱狂的な阪神ファンという発案者の高島宏明総務部長(46)らに激動の1年を振り返ってもらった。(真鍋 愛)

 阪神の岡田彰布監督が昨年10月の就任会見でリーグ優勝を「アレ」と表現してから、高島さんの脳裏には自社の商品名がちらついていた。1961年の発売以来、同社で一番の売り上げを誇る「アラ!」だ。「トップ商品の名称を変えていいのか」との葛藤もあったが、年明け早々、田中智樹社長に「『アレ!』を販売したい」と売り込んだ。

 元高校球児でスポーツ好きの田中社長は快諾。ただ他の社員は「『アレ』って何?」と反応はいまいち。そんな中、高島さんを支えたのが「ヤクルトに怒濤(どとう)の追い上げを受けて優勝を逃した92年からの阪神ファン」と話す同僚で直販事業部長の中岡淳好さん(41)だった。阪神優勝を信じてやまない2人がタッグを組み、企画を推し進めた。

 追い風も吹いた。1月中旬、サンテレビジョン(神戸市中央区)からコラボ商品販売の打診があった。「パッケージは虎柄がいい」「税抜き価格は(85年4月17日の)伝説のバックスクリーン3連発にちなんで417円にしよう」。とんとん拍子で話は進み、中岡さんは「虎党ばかりが集まった、楽しい打ち合わせだった」と振り返る。

 今季の阪神は開幕から4連勝を飾り、その後も好調をキープ。社内では「阪神が負け続けたら売れないのでは」と懸念する声もあったが、3月に販売を始めてから阪神ファンの店長がいるスーパーを中心に順調に売り上げを伸ばした。

 9月に入り、優勝マジックが減り始めるとさらに加速。同14日のリーグ制覇、10月20日のクライマックスシリーズ突破、11月5日の日本一決定時には同社ホームページにアクセスが集中し、サーバーがダウンするほどの熱狂ぶりだった。

 当初は限定販売にする予定だったが、追加生産を決定。社内の雰囲気もがらりと変わり、今や「アレ!」の関連業務は最優先で進められるようになった。高島さんと中岡さんは「協力してくれる同僚たちに感謝するばかり」とほほ笑む。

 来季は球団史上初のリーグ連覇を目指す阪神。2人は「来年はV2だからチームスローガンは『アレ2』かな?」「じゃあ商品名は『アレ!!』やろか」と早くもアレこれ想像を巡らせている。

 今季、岡田監督が試合中に好んでなめる「パインアメ」が話題になった。一方、「アレ!」を口にしたという話は今のところ2人の耳には届いていない。

 「今年は阪神がアレ(優勝)してくれて本当によかった」と高島さん。「『アレ!』も食べてくれたらもっとうれしいですね」

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