航空機産業 供給網強化へ 工場稼働状況をAIで把握 長崎県など実証試験

工場に取り付けた稼働状況管理システムをタブレット端末で確認するラプラスのスタッフ(右)=佐世保市三川内新町、ハマックス九州工場

 長崎県と県産業振興財団は、県内航空機産業のサプライチェーン(供給網)強化を目的に、製造現場の設備の稼働状況を人工知能(AI)で識別・把握するシステムの開発を進めている。生産性向上や業務効率化を図り、受注獲得競争で本県の優位性を確保する狙い。来年度の実用化を目指す。
 県は、造船産業の金属加工技術を生かし、今後市場拡大が期待できる航空機産業の基幹産業化を目指している。県内企業・団体でつくる県航空機産業クラスター協議会を2018年に設立。企業間連携や新規参入、誘致で企業集積が一定進んだ。今後は大手重工などに部品を納める中核企業を増やし、企業群全体で付加価値や競争力を高める必要がある。
 県によると、航空機産業ではサプライチェーン全体で厳しい品質・工程管理が求められる。本県の製造業の多くはこれまで、オーダーメードによる受注を主体とし、個別で担ってきた。今後、航空機メーカーからの大量発注に対応するため、デジタルトランスフォーメーション(DX)によるサプライチェーン全体の可視化が課題という。そこで県と同財団は、全体を一括管理する共同プラットフォームの構築に乗り出した。
 具体的には▽個別の工場の稼働状況管理▽サプライチェーン全体の工程管理-の二つの機能を備える。このうち稼働状況管理システムは、設備近くにカメラを設置し常時撮影。設備のランプの色、扉の開閉、作業員の有無などからAIが作業内容を判別し、記録する。
 AIによる画像解析技術を得意とするスタートアップ企業「LAplust(ラプラス)」(長崎市)が開発を受託。2社の工場に機器を設置し実証試験したところ、おおむね正確なデータを得ることができた。
 このうち濱田屋商店(長崎市)のグループ企業でボルト製造を手がけるハマックス(兵庫県姫路市)は、九州工場(佐世保市)での実証試験に協力。濱田幹雄取締役は「機械だけでなく人の動きも把握できるので、データに基づいた人員配置や生産計画、技術者の指導・評価に生かせる」と手応えを語る。
 サプライチェーン全体の工程管理システムについても本年度中の実証試験を計画。県企業振興課は「国内の先進的な事例としてアピールし、本県サプライチェーンの強みとしたい」としている。

© 株式会社長崎新聞社