昨年、12年ぶりにWRC世界ラリー選手権のカレンダーに復帰したラリージャパンは、豊田スタジアム内でのスーパーSS実施や岡崎SSSの改善など、この2023年に大幅なアップデートを加えての開催となり成功裡に幕を閉じた。既報のとおり11月16日（水）から19日（日）までの来場者数は、有料観客席で9万300人。イベント会場や沿道応援者数を含めると53万6900人もの動員が確認されている。
前年の雪辱に燃える地元トヨタのワークスチーム、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム（TGR-WRT）は今季第13戦として行われた同イベントで“チャンピオン”らしく強さを発揮し見事、多くのファンが見守るなかでワン・ツー・スリー・フィニッシュを達成。また、金曜のデイ2でのアクシデントで順位を下げたあと計10回のステージウインを飾るなど、怒涛の追い上げで総合5位まで挽回してみせた勝田貴元（トヨタGRヤリス・ラリー1）の力走も、観客の胸を熱くした。
そんなラリージャパン2023をWRC公式サイト『WRC.com』が絶賛。2023年シーズンのフィナーレを飾った日本のラリーイベントについて「感動は並々ならぬもの」「忘れられない思い出を持たずに日本を離れることはできない」と高く評価している。ここではその全文を紹介する。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
■日本のWRCマジック：印象に残るシーズンファイナル
（ラリー1カテゴリーのすべてのチャンピオンシップが確定した第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリーで）FIA世界ラリー選手権の見事なシーズンをすべて見終わったと思った矢先、日本でさらなる感動が待っていた。
先週のフォーラムエイト・ラリージャパン2023の感動は並々ならぬものだった。木曜日の信じられないような豊田スタジアムのスーパーSSからその後の4日間、その熱気は一向に冷めることがなかった。ファンは今年もっとも感謝し、礼儀正しく、熱狂的な人たちだ。
そしてチームもそれを愛している。
ファンの頭の上に置かれたヒョンデi20 Nラリー1の完璧な模型を見て、ティエリー・ヌービル（ヒョンデ・シェル・モビスWRT）は微笑んだ。
「ここは本当に特別な場所なんだ」と彼はニヤリと笑った。
「ここにいるファンは素晴らしく、このスポーツを愛しているし本当にそれを実感できる。ここに来られてうれしいよ」
サービスパークのTGR-WRTスペースから勝田貴元が姿を現すと、メイン会場となった豊田市の騒音レベルは別次元に達した。勝田はラリーが始まる前から“ヒーロー”だったが、ステージウインを重ねるごとにその期待と評価は天井を突き抜けんばかりに一気に高まった。
また、晴天に恵まれた土曜日のロードセクション（リエゾン／移動区間）で何千人ものファンの中に立ってみると、その雰囲気は素晴らしいものだった。すべてのドライバーとコドライバーにフラッグとメッセージが掲げられていたが、やはり勝田はそのショーの主役だった。彼がトヨタGRヤリス・ラリー1を止め、勝田の写真を手にした幼いファンと並んだとき、そこに思い出が作られ、絆が結ばれ、永遠の友情が生まれた。
勝田が手を振るとその子はじっと見つめ、応援フラッグを降ろすと誰よりも長く手を降って大きな声援を送った。彼女はその瞬間を決して忘れないだろう。
私たちも忘れられない思い出を持たずに日本を去ることはできない。（ドラマを生んだ）金曜日の雨も、伊世賀美隧道（旧伊勢神トンネル）を駆け抜けるラリーカーの音も、冬の訪れを感じさせる冠雪をバックにした紅葉も、そこにあった思い出とともにフォーラムエイト・ラリージャパン2023を忘れることはない。
Arigato.（ありがとう）
