「落としたほうが、潔い」 池田勇太はシードと最終戦出場をかけた1週間

15年連続の最終戦には「勝つしかない」 ※撮影は21日(撮影/谷口愛純)

◇国内男子◇カシオワールドオープン 事前(22日)◇Kochi黒潮CC(高知)◇7335yd(パー72)

「シードを落としたほうが、潔いなと思っていた。そしたら来年は、治療をして出なくていい」。試行錯誤を続けた1年を振り返ると、そんな考えも頭をよぎった。ツアー通算21勝の池田勇太は、現在賞金ランキング63位。2008年から守って来た賞金シードは、まだ少し危うい位置にいる。

来季のシードが得られるのは、出場義務試合数が満たない2選手を除いた賞金ランク67位まで。次週「日本シリーズJTカップ」は30人に出場が限られるため、多くの選手にとってはこれがシーズン最後の試合になる。今週はランキングで池田の下位につける選手が多く出場しているため、まだ油断はできない状況。池田の場合は『生涯獲得賞金上位25位』の資格で1シーズンの出場が可能だが、来季はツアーを離れて治療に当てることも考えた。

顎(がく)関節のバランスの崩れを原因とした体の痛みを解消するため、ことしは4本の歯を削る手術を3度行った。来年1月も6本の施術を予定しているが、治療のおかげで、体の痛みはだいぶ楽になったという。

ショートゲームの感覚が「消えた」 ※撮影は21日(撮影/谷口愛純)

「体は去年よりも健康」。試合に入って苦しんだのは、ショートゲームの“違和感”だった。「アプローチ、パターの感覚がない。急に手や足が震えたり、動かなくなったり。はじめはイップスになったと思った」と話す。パワーで振り切れるショットはまだいい。繊細なタッチが必要なショートゲームは、体や筋肉のバランスの変化で、以前のようにはできなくなった。

握り方や打ち方を変え、「ことしは、それをどうしたらいいのか分からなかった」と模索を続けながら今季は予選落ちが11回。「耐えがたい、屈辱だけど」と話したが、体の変化がゴルフに与える影響は、実戦でなければ分からなかったもの。「そこで知りえたものは、すごく大きい」と振り返った。

試行錯誤を続けながら、シーズン後半は上位フィニッシュも徐々に増え、3試合前の「マイナビABCチャンピオンシップ」は今季自己ベストの8位。トップ10に入ったのは今季初めてだった。「良い感じでゴルフをできているときもあるけど、直近は2週連続で予選落ち。大して変わらないよね」と切り捨てたのは、悔しさの表れでもある。

シーズンを締めくくるエリートフィールドには、14年連続で出場してきた。「来週出るためには、もう勝つしかない。2週連続で予選落ちたけど、優勝を目指してやっていた。それはなにも変わらない」。春先には口にしていなかった、「勝ち」への強い思いを言葉にした。(高知県芸西村/谷口愛純)

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