“翔んで埼玉”続編、きょう全国公開 「大宮ナンバーの車で都内に入るのが怖くなくなった」と言われ衝撃受けた監督、すでに進行していた“世界埼玉化計画”語る 続編で滋賀が巻き込まれた理由

「埼玉ポーズ」を決める映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』の武内英樹監督(相澤利一撮影)

 映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』が23日、全国公開する。前作に引き続きメガホンをとった武内英樹監督は、「埼玉」の名を全国に知らしめるきっかけをつくった大功労者のひとり。周囲から続編を求める声が多くあった一方、「地域格差」という難しい題材をどのように「郷土愛」へと落とし込むのか。今回も事前の取材活動から撮影・編集に至るまで丁寧に奔走し続けた。武内監督に、続編に込めた思いや埼玉への印象の変化などを聞いた。(森本勝利)

―続編を作ることになった経緯を教えてください。

 パート1が公開した時は、世間にどう受け入れられるのか正直不安でした。もしかしたら、とんでもないことになるかもとすら思いました。しかし多くの埼玉県民の皆さまが大らかな気持ちで喜んでいただき、ありがたいことに「続編はいつですか」「もっとうちの地域もディスられたい」という声もありました。

 ネタ出しの段階から実際の撮影まで、現場は楽しい雰囲気で、興行としても成功を収めることができたことは成果です。2020年3月の日本アカデミー賞で数多くの賞をいただいたあたりから、次回作の構想が持ち上がりました。全国で愛あるディスりを求める地域を探し、その思いに応えるべく、勇気をもって続編を作ることを決めました。

―今作は関西が舞台となりますが、着目したポイントはありますか。

 前回は「埼玉vs千葉」といった、関東地方の地域格差に焦点を当てていたので、次は「関西の方々にもこの笑いを届けたい」という思いが、ありました。

 そして関西は各地域で文化の違いがあり、より個性が際立つと感じていました。パート1では、少し無理やり色付けした部分があったので、その点では明確なヒエラルキーが描けていると思います。続編の構想を東映の岡田裕介会長(当時)に伝え、さまざまなアドバイスもいただき、前作以上に丁寧な下調べと取材を繰り返して撮影に臨みました。

 関西でどの地域を巻き込むのか、現地の方々と徹底的に話し合いを重ねた結果、滋賀県のフィルムコミッションが特に熱心でした。情熱に動かされた部分はあります。いろいろとリサーチをしていくと、埼玉と似ている部分が多くあり、滋賀県を選ばせていただきました。

―埼玉にさまざまな形で関わるようになったかと思いますが、埼玉への印象の変化などはありますか。

 埼玉がより元気になっていると思います。「住みたい街ランキング」で浦和、大宮は常に上位ですからね。前作を見て、俳優や関係者の方々から「堂々と埼玉出身だと言えるようになりました」と、伝えてくれるようにもなりました。一番衝撃を受けたのは、「大宮ナンバーの車で都内に入るのが怖くなくなった」という言葉でした(笑)。

 続編を撮影するにあたり、パート1で行けなかった県内スポットを訪れました。特に良かったのが「秩父・長瀞エリア」です。撮影前に視察していたら、ディスりが弱くなってしまうぐらい素敵な場所でした。「長瀞ラインくだり」や名物のかき氷、イチローズモルトなど、さまざまな魅力が詰まっていました。

―作品を楽しみにしている多くの『翔んで埼玉』ファンに、「愛のある」メッセージをお願いします。

 「郷土愛」というテーマは変わらず、むしろ前作以上のスケールで、自分が住む地域に誇りを持とうという強い思いをお届けしています。どの地方でも均一化が進んでしまう中で、個人的には地域格差はひとつの文化でもあり、独自性につながると信じています。そこに根付く文化を後世に残していくためにも、反作用の郷土愛を持って、愛あるディスりで地域を盛り上げていきたいです。

 作品を通じて埼玉にご縁をいただき、さらにパワーアップしている姿を見ると、どこか誇らしい気持ちです。日本だけでなく世界から、埼玉に来てもらえる機会をつくっていきたいです。「世界のSAITAMA」を目指して、「日本埼玉化計画」そして「世界埼玉化計画」は進行中です。

 今作は関東を飛び出して、関西を巻き込んだ「東西対決」となります。パート2が関西の皆さまにも受け入れていただけると幸いです。ぜひ劇場でご覧いただき、埼玉はもちろん、自分の地元をさらに愛するきっかけになったらうれしいです。

■武内英樹(たけうち・ひでき)

 1966年生まれ。千葉県出身。早稲田大学卒業後、1990年にフジテレビ入社。数多くのテレビドラマの演出を手掛け、ドラマ「神様、もう少しだけ」「電車男」「のだめカンタービレ」などヒット作を送り出す。また映画「のだめカンタービレ 最終楽章」「テルマエ・ロマエ」シリーズで監督を務めた。前作の「翔んで埼玉」で、「第43回日本アカデミー賞」最優秀監督賞を受賞。2022年にフリーとなり、本作は独立後の初監督作品となる。

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