「高さ日本一のビル」だけじゃない…麻布台ヒルズが「ヒルズの未来形」といわれる納得の理由

オフィス、ホテル、病院、学校、マーケットなど都市に必要な機能が高度に融合したコンパクトシティが麻布台に誕生(写真:弁護士JP)

すぐ北隣には虎ノ門、西には東京タワー、南に六本木という極上立地の麻布台エリア。そこに、一世代以上の歳月と総事業費約6400憶円をかけた大規模再開発を経て誕生したのが、複合施設「麻布台ヒルズ」だ。11月24日のオープンを前に、ついにベールを脱いだ”ヒルズの未来形”。その形容にふさわしい、最先端のまちづくりの成果を詳しくリポートする。

構想から35年、ついに完成した「ヒルズの未来形」

同施設で自ずと目に付くのが高さ約330mの森JPタワー。「あべのハルカス」(300m)を抜き、高さ日本一の超高層ビルだ。だが、麻布台ヒルズの開発ヒストリーをさかのぼれば、そんな記録もあくまでこだわりの一部でしかないことが分かる。

東京タワーを見下ろすような眺望は圧巻のひと言

壮大な再開発がその第一歩を踏み出したのは、35年前。約300人の地権者1人ひとりとの地道で粘り強い交渉からだ。地権者それぞれの想いをくみ取りながら、担当者が細分化された敷地や老朽化の進む建物の建て替え、さらにインフラ整備の必要性などを訴えながら一歩一歩丁寧に歩を進めていった。

「壁」は地権者だけではない。東西に細長く、高台と谷地が入り組み、高低差の大きい地形は、土台から作り変える必要がある。多数の地権者、そして複雑な地形。これほどまでの難題が山積するプロジェクトは、そもそもやろうにもやれないーー。実はこれこそがこのプロジェクトがいかに規格外かを示しており、最大の肝といえる。

同プロジェクトの総合デベロッパーである森ビルにはこれまでに数多くの「ヒルズ」を手掛けてきたノウハウがある。同じような「壁」も経験し、乗り越えてきた。それらをすべて注ぎ込み、あらゆる難題をクリア。執念といえる粘り強さで、難プロジェクトを成就させた。

昭和の町並みが、令和の次世代型複合施設へ

東西を貫く、桜麻通りの開通で街の機能は格段に向上

その東西には新たに設置された桜麻通りが走り、南北の幹線道路をつなぐ。通り沿いにはイギリスのトーマス・ヘザウィック氏がデザインした独創的な低層ビルが立ち並ぶ。昭和の町並みが、令和の次世代型複合施設へ。開発前を知る人にとっては、同じ場所とは思えないまさに別世界への変貌だ。

だからといって、単に “古き良き”を破壊したわけではない。再開発では、あくまで「人間中心」に徹し、住民の心地よさを最優先にしており、その姿勢こそがこれからの再開発のあるべき姿であり、「ヒルズの未来形」といわれるゆえんでもある。

施設全体のど真ん中に位置し、人の流れを活発にする「中央公園」

それを象徴するスタンスが、森JPタワーの建設場所の設定プロセスにある。施設全体の中に、そこに住む人、働く人、集う人が有機的につながる場所が必要。その実現には、ただ改良した土地の上に建物が立つだけでは不十分だった。そこでまず、どこに広場を設置するかを決め、それから各建物の位置を確定させた。つくる側の意向を優先する通常の建築プロセスとは真逆の、なんとも贅沢なアプローチだ。

都心ながら緑化率は約3割で緑があふれる

併せて、広場の広さ確保のため、容積率を勘案しながら建築計画を進行。その結果、森JPタワーに必要な高さが約330mと算出された。「高さ日本一」はあくまでもヒトの流れを優先にした開発の副産物でしかないのだ。ちなみに、最上階にある「アマンレジデンス東京」の居室は、なんと広さ1,500㎡。販売額は2億ドル(約300億円)ともいわれている。

次世代の街を優しく包み込む約30%におよぶ緑

超高層ビル下に広がる敷地には水と緑があふれる。これも、ヒトを中心に据えるスタンスと無関係ではない。コンセプトに<緑に包まれ、人と人をつなぐ「広場」のような場所>を掲げる麻布台ヒルズ。その具現化には、圧倒的な緑が不可欠となる。8.1haの区域面積に対し、緑化面積は2.4ha。実に約3割が緑だ。これは緑化率15%強の「六本木ヒルズ」の倍近い数字となる。

緑の中には果樹園もあり、みかん、レモン、リンゴも

あふれる緑は、公園はもちろん、低層部の屋上にもおよぶ。植栽は約320種と多種多様でその中には温州ミカン、レモン、リンゴなどの果樹園まである。3棟の超高層ビルが連なるエリアにいても、圧迫感はなく、むしろ心地が良く、落ち着いた気分でいられる大きな理由だろう。

都市においてどうすればこれからも人間らしく豊かに生きていけるのか

この中央公園と森JPタワーを中核に、麻布台ヒルズには、「ジャヌ東京」などの高級ホテル、商業施設が入るレジデンスA棟、ベンチャーキャピタルの成長と拡大を図る「Tokyo Venture Capital Hub」が入るガーデンプラザB、「エプソンチームラボボーダレス」が移転するガーデンプラザC、都心最大級のインターナショナルスクール、慶應義塾大学予防医療センターなどが集結。多様な都市機能が高度に融合した、「都市の中の都市」のひとつの完成形となっている。

レジデンスA棟にはアマンの姉妹ブランド「Janu」の世界初となる「ジャヌ東京」が入る

「圧倒的な緑に囲まれ、自然と調和した環境と多様な人々が人間らしく暮らしていける。都市においてどうすれば私たちはこれからも人間らしく豊かに生きていけるのか。麻布台ヒルズはその問いに対する一つの答えになるのではないかと考えています」と森ビル・開業推進室の森泰子氏は開業を控え、力を込めた。

11月24日の開業後にはオフィス棟では約2万人が就業予定で、レジデンス棟居住者やホテル利用者なども合わせ、国内外の多様な人々が行き交い、新しい街に新鮮な息吹を吹き込んでいく。

未開業の施設もあるが、2024年以降、ラグジュアリーブランドショップ、美術館、マーケットなどの施設が順次オープン。賑わいは年を超え、月日とともにさらに増していく。中央公園では、クリスマスイベントして「AZABUDAI HILLS CHRISTMAS MARKET2023」が12月9日~25日の期間で開催され、17の物販・飲食がオープン。限定商品などでクリスマスムードを演出し、生まれたばかりのホットスポットを盛り上げていく。

【開発経緯年表】
1989年 3月:「我善坊地区街づくり協議会」設立
1989年 5月:「八幡町地区街づくり協議会」設立
1989年12月:「仙石山地区街づくり協議会」設立
1993年 2月:「虎ノ門・麻布台地区市街地再開発準備組合」設立
2014年 7月:「虎ノ門・麻布台地区市街地再開発準備組合」区域拡大
2014年10月:東京圏国家戦略特別区域会議(第1回)
2016年12月:都市計画提案
2017年 9月:国家戦略特別区域法に基づく区域計画が認定、都市計画決定
2018年 3月:「虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合」設立認可
2019年 2月:権利変換計画認可
2019年 8月:着工
2023年 7月:森JPタワー・ガーデンプラザ竣工
2023年11月24日:開業

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