軽い気持ちで大麻、しかし覚醒剤にすぐ進み… 4度逮捕の青森刑務所40代受刑者、依存の日々語る

これまでに4度逮捕され「もう一人では薬物依存から抜け出すことができない」と語る男性受刑者=13日、青森市の青森刑務所

 「大麻はゲートウエードラッグ(入門薬物)といわれるけど、その通り。怖い薬物だ」。全国的に若年層の大麻乱用が深刻化する中、20歳で大麻に手を染め、これまで4度逮捕され青森市の青森刑務所に服役中の40代男性受刑者は「一人ではクスリをやめられない」と薬物の依存性の高さを語る。

 20歳の時、大麻を吸っていた先輩に憧れて手に取った。「テンションが上がって感覚が刺激される」。とりこになり、使い始めて1年半がたつと「体に合っているし、自分でもコントロールできている」とさらなる刺激を求めて覚醒剤を始め、3年後に大麻と覚醒剤の所持容疑で逮捕された。

 執行猶予付き判決を受けた後も関東地方の地元に戻り、仲間と薬物を使った。「覚醒剤と違って大麻は使用後でも寝られるし食事も取れる。ネットではたばこより害がないという情報が出ていたし、合法の国もある」と自分を納得させる理由を見つけ、「酒を飲む感覚」で大麻を毎日吸い続けた。

 2度目の逮捕は執行猶予判決から7年後。半年間服役し出所すると、3年後に地元で再び捕まった。2年余りの刑期を終え、今度は地元に帰らず北海道で過ごした。「見ず知らずの土地で過ごし1年半、薬と関わらずに過ごせた」。もう薬物は使わない-と自信を深めたが、いつしか地元の友人と連絡を取るようになり、「薬を勧められて、また始めてしまった」。おととしの大みそかに逮捕、青森刑務所に収容された。

 服役期間は通算で5年以上。「大麻は覚醒剤と比べて手軽に入手できる。大麻の入り口に入ってしまうと覚醒剤まで短いスパンで進んでしまう。もう自分の力だけでは立ち直れない」と後悔を口にする。

 刑務所など全国の刑事施設では、こうした薬物使用の受刑者を対象に「薬物依存離脱指導」を実施している。依存リスクや再犯性、受刑者の意欲などを考慮し、全対象者が受ける必修のほか専門、選択の各プログラムで断薬につなげる。

 青森刑務所はDVDやテキストを使った必修のほか、受刑者同士が自らの体験談を語り合うグループワーク(全12回)による専門、さらに依存症者社会復帰支援施設「青森ダルク」を招き、講話やミーティングを実施する選択の各プログラムを用意。薬物使用に至る流れや引き金を理解させた上で、効果的な対処法を受刑者自身に考えさせ、再使用防止計画に導く。

 同刑務所の増田康弘首席矯正処遇官は「全受刑者306人のうち、4割弱が薬物関連。薬物に関する正しい情報を伝え、プログラムを組み合わせながら再犯防止につなげたい」と語る。

 先の男性受刑者は言葉を強める。「信じてくれた人の信用を失い、薬物を使って得したことなんて一つもない。離脱指導を受けて、人生を一からやり直したい」

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