24歳女性ハンター「シカを仕留めて足が震えた」 クマ出没増加で注目されるハンターに密着…課題は高齢化

静岡県富士宮市の内房地区に、18日集まっていた地元猟友会のメンバーたち。県内でも11月から解禁された狩猟に、これから向かうところです。

イノシシやシカを猟犬が追い立てたところをハンターが迎え撃つ、「巻き狩り」と呼ばれる伝統的な方法で猟を行います。

ディレクター:「何かいそうな雰囲気が…」

富士宮猟友会会員:「ありますね。なんかにおいするんですよね」

クマの目撃が去年の3倍

ハンターたちが本格的に活動を始めるこの時期。しかし、今シーズンは例年とは違った緊張感があるといいます。

富士宮猟友会会員:「ニュースでも見る通り、クマが出たりとか報道されていると思うのですけど、実際問題そういうところが心配なので…」

今シーズンのクマの目撃情報は17日までに79件。去年のおよそ3倍と急増しています。県がまとめたクマの出没マップを見ると、市町別で最も多いのは静岡市の31件。山間部のオクシズだけでなく、市街地や海に近い地域でも目撃情報が寄せられていて、従来の生息域の外でも多数確認されていることが分かります。

一体なぜ今年は、県内でもクマの目撃が相次いでいるのでしょうか。

静岡県森林・林業研究センター 大橋正孝さん:「やはりエサ不足でそうしたことが起きていると考えられる。(エサとなる)ドングリがなる山というのは、標高1000mよりも高い所が主体になると考えられる。(静岡市清水区由比の)薩埵峠でも確認されているんですが、航空写真で見ると、静岡の山は割と木でつながっているところが多い。出没する可能性はある。ひょっとしたら市街地近くまでクマが来ても不思議ではない」

富士市では住宅街での出没情報が相次いだほか、これまでは「クマがいない」とされていた伊豆半島でも発見される事態に。

クマへの警戒強めるが…保護している動物なので「撃ちたくはない」

今年静岡市に次いで、県内で2番目に目撃情報が多い富士宮市。ハンターたちもクマへの警戒を強めています。

富士宮猟友会 風岡正則会長:「クマを1回だけ見たことあるんですけど、こうゆう植林している山を上から下に走っていくときはものすごく速いですよね。獣が歩くところなんですけど、そういうところにシカの罠をかけるので、そこを歩きやすいからよく(クマが)罠にかかるケースが多いです。出やすい時間というのは、僕はないと思いますよ。常日頃エサを探しているし、警戒していると思います」

一方で、県内ではクマの狩猟は自粛扱いとなっているため、ハンターにとっては警戒が必要なのはもちろん、悩ましい存在でもあります。

富士宮猟友会 風岡正則会長:「静岡県では、とにかく保護するんだという話になっているんで、保護しようと言っているんだから撃ちたくはないですよ。それは自分とか他人とかに被害が及ぶということになれば、どうしても撃ったり殺したりしなければならない」

課題はハンターの高齢化

増えすぎた野生のシカやイノシシによる様々な被害を抑えるのが目的の狩猟。ただ、その担い手であるハンターをめぐっては、大きな課題が…。

県によりますと、県内で狩猟免許を持つ人は7443人。そのうちの半数以上が60歳以上です(2022年)。こちらの猟友会で、最高齢は…。

榛原郡猟友会 杉本栄作さん:「83歳です。年金生活者ですね」

24歳の女性も…「シカを仕留めて足が震えた」

この日もベテランが多い中、数少ない若手の姿も…」

榛原郡猟友会 牧野徳子さん:「いま24歳ですね。(猟に参加したのは)去年の12月」

富士市に住む牧野徳子さん。普段は会社員として働いています。

大好きな犬と一緒に何か始めたいという思いで関わるようになった狩猟。免許を取ってからまだ1年足らずですが、シカを一頭仕留めた経験があるそうです。

榛原郡猟友会 牧野徳子さん:「うれしさもあったけど、申し訳ないという感じもあったりと、複雑でしたが、足はすごく震えていましたね」

若い担い手を増やそうと、県はおととしから資格を持たない学生を対象にした講習会を開催。一方で、猟友会は新人ハンターを対象にした研修会を年2回行うなど、フォローアップの態勢整備も進みつつあります。

その成果もあってか、20代30代のハンターは2015年度と比べて1.5倍の1158人にまで増加しています。

牧野さんも新人ハンターの研修会に参加しています。

榛原郡猟友会 牧野徳子さん:「良くある話かもしれないですけど、命をいただいているというのをすごく身に染みて感じますね」

83歳。最高齢の杉本さんに同行すると

この日の猟には、およそ20人が参加。巻き狩りでシカやイノシシを捕まえます。同行した最高齢の杉本さん。急な斜面を物ともせずに進んでいきます。

ディレクター:「大変つらくないですか? 歩いていて…」

榛原郡猟友会 杉本栄作さん:「これが猟なんですからね。(山を歩くことも)猟の楽しさですから」

杉本さんが狩猟に出会ったのは27歳の時。その仕事にすぐに魅了されたといいます。

榛原郡猟友会 杉本栄作さん:「(狩猟の魅力は)感動を与えてくれるというところです。もう年ですから80歳ぐらいでやめようかと思ったのですが、歩ける限りは続けようかと…」

ポイントに到着すると、猟犬の鳴き声などで獲物の位置を確認します。

榛原郡猟友会 杉本栄作さん:「猟犬がすぐそばまで来ていますね。イノシシのようです。安全ピンは外しておきますね。いつ発砲してもいいように」

獲物が近づくその時を、静かに待ちます。

榛原郡猟友会 杉本栄作さん:「来た!」

(発砲×2)

ディレクター:「仕留められましたか?」

榛原郡猟友会 杉本栄作さん:「いや。外しましたね。仕留められないことがあるからまた、挑戦したくなるんですよね」

クマを撃つことへの批判に対しては…

命と向き合う狩猟。全国的にクマによる被害が相次ぐ今年、ハンターに対して「かわいそうだ」「なぜ殺したのか」といった苦情や中傷も問題となっています。

こうした現状に、県内のハンターたちは―

富士宮猟友会 風岡正則会長:「クマの命と人間の命とどっち大事なのか、しっかりはかりにかけてくれているのか? クマの怖さを知らない人は無責任だと思う」

榛原郡猟友会 杉本栄作さん:「生き物を殺すということで批判もあるんですが、猟をすることで数が少なくなれば、農作被害も少なくなるのではと思います。我々のように年を取ったものが山の中に入っているんですが、これからは若い人にも猟に参加していただきたい」

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