[社説]県民平和大集会 世代超え広がる危機感

 「11.23県民平和大集会」が那覇市の奥武山公園陸上競技場で開かれた。

 政府が「台湾有事」を念頭に進める軍備増強に反対する大規模集会だ。

 快晴で汗ばむほどの日差しの下、昼食時間を挟むプログラムを考慮し会場にはキッチンカーが出店。集会前の音楽コンサートでは平和を題材とした曲とともに、エイサーも披露された。

 若者世代の主導で和やかな雰囲気で始まった集会だが、しかし、登壇者が口々に語ったのは南西諸島の島々で軍備が増強され、軍事訓練が相次いで実施されていることへの強い危機感だった。

 「このままでは本当に戦争が起きかねない」

 平和集会から見えたのは、日常生活に侵入する「戦争の脅威」である。

 新たな部隊の配備や、相次ぐ日米共同の即応態勢訓練など昨年の安全保障関連3文書の閣議決定以降、急速に進む軍備増強の波は南西諸島の島々に怒濤(どとう)のように押し寄せている。

 石垣島ではビーチに迎撃ミサイルが配備され、本島や与那国島では戦闘車が公道を走り、集落の中を行軍する-。

 宮古島市に住む福里猛さんは「有事になれば九州へ避難するというが、戦争になれば町が破壊され島には戻れなくなってしまう」と悲痛な心情を語った。

 生活の営みと並行して有事への準備が着々と進んでいることを住民たちは身をもって感じている。

 集会は島々から見える戦争準備の実態と、戦争の脅威を全国に発信しようとする試みだ。

■    ■

 同じ日には国会前でも種子島、奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島の島々の住民が集まり、政府の軍拡方針に抗議した。

 北朝鮮のミサイル警戒として宮古や石垣、与那国の3島には空自のPAC3が配備を継続。加えて与那国では、新たに中国への攻撃を念頭に置いた長射程ミサイル配備が検討されている。

 逃げ場のない離島が戦場とされることへの住民の不安は大きい。集会では繰り返し「琉球弧の島々を戦場にするな」との声が上がった。

 政府は防衛力強化の下でシェルター整備や避難計画策定などを急ぐ。だが、いったん戦場となれば住民の犠牲は避けられない。

 有事を想定した軍拡は周辺国との軍拡競争を招き、かえって戦争に巻き込まれる危険性が高まるのではないか。

■    ■

 集会では、イスラエル軍が地上侵攻を進めるパレスチナ自治区ガザの惨状に心を痛める参加者の姿も少なくなかった。ガザの犠牲者は1万人以上に上り、その半分近くが子どもだ。

 いつの時代も戦争の犠牲となるのは無辜(むこ)の民である。78年前の沖縄戦でも多くの子どもや女性たちが命を失った。

 悲劇を繰り返さないためには、戦争を起こさないだけでなく、戦争に巻き込まれない努力も求められる。

 政府は、島々の住民を危険にさらす軍拡方針を改めるべきだ。 

© 株式会社沖縄タイムス社