【リニア新幹線】国の有識者会議の成果については評価 JR東海の希少植物保全の方法については課題を指摘 静岡市 難波喬司市長

静岡市の難波喬司市長は22日の定例会見でリニア新幹線問題に関連し、事実上協議が終了した国の有識者会議の成果を評価した一方、JR東海が行っている植物の移植については課題を指摘しました。

静岡市 難波喬司市長 午前11時
「科学的根拠に基づく議論によって、南アルプスの生態系とこの場所の環境影響評価の方法・在り方についての知見が非常に高まったと思っている」

22日の定例会見で静岡市の難波市長が言及したのは、11月7日に事実上、協議が終了したリニアをめぐる国の有識者会議についてです。

これまで27回に渡り、リニア工事に伴う「水問題」や「生態系への影響」について議論されてきた国の有識者会議。

環境問題については、「トンネル掘削によって南アルプスの植物などに影響が及ぶ可能性はないと考えられる」とされています。

ただ、協議が事実上、終了したことについて川勝知事は苦言。

川勝知事 県庁 9日
「我々は今後も議論が必要な課題が残されていると認識していて、十分な議論がなされないまま取りまとめられようとしていることについて非常に残念に思っている。当初目的であったJR東海に対する具体的な助言、指導まで踏み込まれていない。有識者会議の議論は尊重するが、それに従うということは一度も言ったことはない」

Q.県としては従わないということ?

「いいえ、残されている課題がいくつかあるからそれを議論するということ」

静岡県側は「まだ議論の余地がある」として審議の継続を要求しています。

一方で静岡市側の意見は・・・

静岡市 難波喬司市長 午前11時
「国の有識者会議の報告書がなければとてもこれ以上の、上には行けないわけで、かなりの精緻な議論で相当の高みまで積み上がっていると思いますので、それから先、一部不十分なところがあるのは事実だと思いますけれども、それらを市の協議会の委員の先生方と一緒に議論して、市の見解をまとめていきたいと思っています。」

国の有識者会議は節目を迎えたものの、南アルプスにおける「生態系への影響」については新たな調査結果も。

JR東海は2017年から環境アセスメントに基づいて南アルプスの希少植物保全のために、絶滅の恐れがある希少な植物などを別の場所へ移殖したり、種を巻いて保存していく取り組みをしています。

ところが、静岡市が行った追跡調査では移殖された植物の生育が確認できなかったり、育っても数年で個体数が減ったりするケースが多いことが明らかとなったのです。

静岡市 難波喬司 市長 午前11時ごろ:
「多くの種では2019年度から2021年度までの3年間の調査時と比較して、生育が確認された個体数が減っている。今回の調査結果というのは、やはりこれは重く受け止めざるを得ないと思っている」

難波市長はJR東海が行っている移殖について、「非常に不確実性が高い」としたうえで、移殖個体の長期的な根付かせは難易度が高いと結論付けました。

市は今回の調査結果をJR東海に伝え、リニア工事によって植物などの生育範囲が減少することに対し、どのように補っていくかを今後協議していくとしました。

Q移植などの措置が難しいことがわかったということは、影響の回避を何か考えないといけないと思うが、そこまで遡るような議論も今後行われる可能性はある?

静岡市 難波喬司市長 午前11時ごろ:
今回、(JR東海が)代償措置を行ったが充分ではなかったということを踏まえ、それに対してどういう風な措置を講じていくか。今まで代償措置として機能しなかった部分を補ってまで、さらなる代償ということを次の段階で考えていく必要があると思っている」

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