ダイオウイカを公開解剖 性別は? なぜ日本海沿岸に漂着? 大学教授が執刀、解説に子どもら興味津々

解剖前のダイオウイカに触れる子どもたち=ジオパークと海の文化館

 1月に兵庫県香美町香住区下浜の沿岸部に漂着したダイオウイカの公開解剖が23日、同区境のジオパークと海の文化館であった。遠くは埼玉県や長野県など県内外から約80人が訪れ、島根大学の広橋教貴教授(海洋生物学)が体の構造や生態の謎について解説しながら執刀した。(長谷部崇)

 このダイオウイカの全長は、触腕(ほかの腕より長い2本の腕)を含めて6.4メートル。1月12日、香住高校の生徒たちが発見、水揚げし、同館が冷凍していた。

 広橋教授は「研究者でも生きた個体を見た人はほとんどおらず、生態は謎が多い」と紹介。ダイオウイカは世界で1種のみで、水深450~1千メートルに生息し、欧州や北米、アフリカなどでも見つかる。寿命は長いもので15年とされるが、成長過程や個体数など不明点が多いという。

 解剖で卵巣や輸卵管が確認され、この個体は雌と判明。広橋教授は墨袋や鰓(えら)心臓、肝臓、直腸などを切り分けて参加者と観察した。日本海沿岸に漂着する個体はいずれも原因不明の衰弱が見られ、広橋教授は「胃の中が空っぽの個体が多い」として、餌不足による飢餓の可能性を指摘。この個体の胃は大学に持ち帰り、内容物を分析するという。

 「深海生物という未知の存在に対して子どもたちが興味や憧れを持てばうれしい」と広橋教授。ダイオウイカを初めて見たという豊岡市の男性(31)と妻(33)は「各部位のサイズが大きく、見応えがあった」と話した。

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