段ボール市場に関する調査を実施(2023年)~巣ごもり需要が一巡した中、消費財の価格上昇が段ボール需要を直撃、2022年秋以降低調推移に転じる、インバウンド需要の押し上げ効果も限定的~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の段ボール市場を調査し、参入企業動向、需要分野別、地域別の動向、将来展望を明らかにした。

1.調査結果概況

2022年の段ボール需要は巣ごもり需要が継続する中で、コロナ禍で減少していた分野が概ね回復基調で推移した。行動制限の緩和により人流が回復したこと、また下期以降、水際対策が大幅に緩和され、底這いしていたインバウンド需要が上向いたことにより、薬品・洗剤・化粧品向け需要がようやくプラス推移になるなど、回復基調で推移した。
しかし、一方で、原燃料価格の高騰や円安の進行などを背景に、夏頃から食料品をはじめとする多くの消費財の価格上昇が目立ち始め、節約意識の高まりから消費マインドの低下が顕在化した。それにより、段ボール需要においても、秋頃から加工食品向けを中心にその影響が出ており、低調推移に転じた。

2023年に入っても、前年からのマイナス影響は継続しており、段ボール需要は低迷している。さらに、5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行し、外出機会が増加していることにより、ここ数年、段ボール需要を下支えしてきた巣ごもり需要が一巡したことも低迷要因の1つとなっている。回復が期待された土産品向けの需要も弱含みの状況が続いている。
また、インバウンド需要は急回復しているものの、モノ消費からコト消費にシフトしていることや、モノ消費の代表格であった中国人旅行客の回復が限定的であることなどから、段ボール需要には繋がっていない。当面、物価高の影響は続くと考えられることから、2023年の段ボール生産量は減少を避けられない見通しである。

2.注目トピック~2度の価格転嫁により原紙・製品市況は上昇したが、現状では原紙市況の軟化要因が顕在化

原燃料価格の高騰、さらには為替の円安進行で生産コストが急上昇したことにより、段ボール原紙メーカーは2022年春と秋、2度の原紙価格の値上げを実施した。これを受けて、段ボールメーカーにおいても、エンドユーザーに対して、2022年、2023年と2年連続で価格転嫁を実施している。これら2度の価格修正により、段ボール原紙、製品(段ボールシート・ケース)の市況は上昇した。

しかし、一方で国内段ボール需要の減少と段ボール原紙の輸出急減に伴い、現状、原紙在庫量が過去最高水準となっており、市場では供給過剰感が生まれている。またゼロコロナ政策などにより、中国国内の段ボール需要が冷え込んだことで需給が緩み、2022年秋以降、段ボールの原料となる段ボール古紙の市況が下落している。現在、段ボール原紙メーカーでは生産調整を実施し、供給量を押さえているものの、このような要因により、今後段ボール原紙市況が軟化することになれば、それが段ボール製品市況に波及することも懸念される。

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