高取家コレクション、1日だけ「里帰り」 肥前の炭鉱王の名品

九州陶磁文化館の鈴田由紀夫館長(奥)による作品解説に耳を傾けながら、「鉄絵蒲公英文茶碗」を手に取る来場者=唐津市北城内の旧高取邸

 佐賀県立九州陶磁文化館(有田町)に寄贈された「高取家コレクション」のうち、えりすぐりの名品14点が20日、唐津市北城内の旧高取邸に一日限りで“里帰り”した。約130人が邸宅の各部屋に華を添える名品を鑑賞した。

 高取家コレクションは、肥前の炭鉱王と呼ばれた高取伊好(1850~1927年)と夫人の志那氏、長男の九郎氏の時代から、邸宅を訪れた皇族、財界人らをもてなしてきた陶磁器。子孫が約3500点を九州陶磁文化館に寄贈した。

 普段はガラスケースに収められている作品が“むき出し”の状態で各部屋にたたずんだ。大広間では、鍋島藩窯の「青磁染付寿字桃宝尽文雲形大皿」と絵唐津「鉄絵蒲公英文茶碗」が共演。九州陶磁文化館の鈴田由紀夫館長が解説し、来場者は手に取って往時に思いをはせていた。

 唐津市の男性(74)は「床の間などに実際に置かれた姿は、文化館で見たものと違う雰囲気を感じた」と感激した様子。鈴田館長は「ケースの中よりも、焼き物がいきいきと見える。本来あったところで見ることが文化の生かし方の一つだ」と話した。

 新たな文化シーンの創出に挑戦する佐賀県の文化芸術祭「LiveS Beyond(ライブスビヨンド)2」の第6弾として開かれ、唐津観光協会が主催した。(松岡蒼大)

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