民族問題を軽視するな!豪1部ブリスベン、問題提起の「先住民族ユニフォーム」がカラフルで美しい

オーストラリア1部ブリスベン・ロアとキットサプライヤーのNew Balanceは20日、1試合限定で着用する「先住民族ユニフォーム」を発表した。

ブリスベンは昨年10月に不慮の病でこの世を去った故・工藤壮人さんの古巣クラブでもある。

Brisbane Roar 2023-24 New Balance Indigenous kit

ブリスベン・ロア 2023-24 New Balance 先住民族 ユニフォーム

前面と背面の色鮮やかなグラフィックが美しい先住民族ユニフォーム。26日に行われるブリスベンの男女チームによるダブルヘッダー開催の試合で、男女両チームがこの素晴らしいデザインのユニフォームを着用する。

前面と背面に描かれているグラフィックは、クラブのプラチナ・パートナーで“Interim Truth and Treaty Body(ITTB)”という団体のトレードマーク。同団体を端的に説明するならば、アポリジニなどオーストラリア先住民族の地位向上を目指す独立機関だ。

ITTBの象徴的なロゴマークを使った今回のユニフォーム。その背景には、アポリジニやトレス海峡諸島といった同国における先住民の問題がある。

10月に行われた先住民の地位向上を目標とした国民投票の結果は、ある意味で衝撃的なものだった。

オーストラリア政府は今年10月、アボリジニなど先住民がオーストラリアの「ファーストネーション」(最初の人々)であることを明記し、先住民の声を政策に反映しやすくするための専門機関の創設などを含む憲法改正の政府案について「The Voice」という国民投票を実施した。

白人の入植によって迫害されたアボリジニなどの先住民は、平均よりも世帯収入や教育水準が低く、平均寿命も短いなど格差が存在する。それらを是正する最初のステップとして実施したのが「The Voice」だった。

この国民投票自体が事前から賛否両論だったのだが、結果は反対票が約60%を占め政府案は否決。これに失望したのがITTBであり、歴史的に先住民との関わりが深く、この投票を推進してきたブリスベンのホームタウンが属するクイーンズランド州だ。

先住民族、とりわけアポリジニの血を引くサッカー選手は少なからず存在する。かつてFC東京と北海道コンサドーレ札幌でプレーし、アポリジニ系で初の代表キャプテンとなったブリスベンのレジェンド、ジェイド・ノースはその代表格といえる。

今回のユニフォームと「The Voice」の投票結果の関係性は不明だが、タイミングを考えれば先住民族問題を蔑ろにされているという危機感が「先住民族ユニフォーム」につながっている可能性は高いだろう。

クラブのCEO(最高経営責任者)カズ・パタフタ氏はこのユニフォーム発表の際に、「ブリスベン・ロアは背景に関係なく、すべての人々を歓迎し尊重しており、国とサッカーコミュニティを形作るすべての先住民文化を支援することに今後も専念する」とコメントしてる。

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単なる美しいデザインではない「先住民族ユニフォーム」は、クラブのオンラインストアで販売中。現時点で大きめのサイズは完売となっている。

今では世界的にレアで懐かしい新品ユニフォームが揃う「Qoly × LFB Vintage」。“あの頃”を思いだす数々のユニフォームやグッズは見るだけでも楽しいです。

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