北海道の“カプセルトイ”市場を深堀り 絶好調のワケと業界の裏側とは?

今回のテーマは「カプセルトイ」。今や大人が楽しむ趣味のひとつに成長し、市場規模は約720億円。好調の秘密と、さらなる飛躍のために乗り越えなければならない課題を探った。

【急成長で年商100億円 カプセルトイ店づくりの秘密】

帯広のトーシンが運営する「シープラプラス・狸小路2丁目店」。ことし9月にオープンした。道内最大規模となる、1200台の自動販売機がずらりと並ぶ。一昔前、カプセルトイといえば、店舗の空きスペースに数十台置かれている、いわゆる「軒先商売」だったが、最近は、数百台から1000台以上をそろえる「専門店」が増えている。

メインの価格帯は300円から500円だが、中には1000円を超える精巧なフィギュアもある。訪れているのは子どもではなく、10代後半から20代を中心とした大人たちだ。 

トーシンが本格的に「シープラ」の展開を始めたのは2019年。それから4年余りで全国に114店を構えるまでに急拡大。店舗数の拡大に伴って売り上げも急成長し、今年度はなんと100億円の大台を超える見込みだ。他社との差別化としてトーシンが力を入れるのが「エンターテインメント空間」としての店づくり。

トーシンの宮本社長は「カプセルトイ業界はそもそも低く見られていた。どちらかというと"隙間産業"というか。そのイメージを変えたいということで、デザインや見栄えの部分に投資をしてきた」と話す。シープラは狸小路5丁目にも店を構えるが、客の食い合いにはならず、月商約2000万円の売り上げがあるという。宮本社長は、今のカプセルトイ人気は、幅広い世代に受け入れられる多種多様なジャンルの商品があることが要因とみている。

【カプセルトイ人気に注目 誘致の効果は?】

こうしたカプセルトイの人気に注目した企業が、イオン北海道。道内20余りの店舗にシープラを誘致している。イオン北海道の鈴木執行役員は、誘致の理由として「専門店ゾーンの品ぞろえの強化」と「空きスペースの有効活用」をあげる。

鈴木執行役員「小さなフードコートは客が休んだりコミュニケーションの場でもあったが、コロナによって使っていただくことができなくなった。対策の一つとしてシープラ・ミニを導入して喜んでいただいている」。シープラ・ミニは、自動販売機の台数が200程度の無人店舗。カプセルトイは、店舗の広さに合わせて台数を調整するだけでどこにでも出店できる。これも強みの一つだ。

【カプセルトイ販売会社の舞台裏 課題と解決策は】

カプセルトイは全て受注生産。つまり発注する段階では、3カ月先に売れるだろうという商品を見極めなければならない。カプセルトイ専門店には「レジ」がないため、レジと連動するPOSシステムが使えず、リアルタイムの販売管理ができない。現状、データとして把握できるのは「各店舗に出荷したカプセルトイの数」と、「各店舗で自動販売機に補充した数」のみ。この2つのデータから、売れ行きを推測している。

トーシンの宮本社長は「例えば10%上振れしただけ、もしくは10%予測を下回っただけで月々の仕入れと支払いの差額が数千万円、大きなときは1億単位になってくる」と話す。この課題解決のために取り組んでいるのが、自販機のIOT化。1台ごとにセンサーを付け、どの商品がどのぐらい売れているのがリアルタイムで分かるようにする計画だ。

宮本社長「(IOT化の)実現に近いところにいる会社は、ライバル会社でいくつかある。うちはちょっと出遅れているから、今必死に巻き返しを図ろうとしている」。投資額は数億円。今後、3年から5年をかけて実現を目指す一大プロジェクトになる。 
(2023年11月25日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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