【ゲームサントラ紀行】第1回「ファイナルファンタジーXII」:ふたつのテーマが絡み合う、壮大な音楽

画像は「FINAL FANTASY XII THE ZODIAC AGE Original Soundtrack」

「FFXII」は、2006年3月16日にPS2用ソフトとして発売。架空の地・イヴァリースを舞台に、壮大なドラマが繰り広げられるRPGです。後に、キャラクターごとにジョブを選ぶシステムを導入した「ファイナルファンタジーXII インターナショナル ゾディアック ジョブシステム」(以下、「FFXII ZJS」)がリリースされました。

そして、「FFXII ZJS」をベースにしてさらに遊びやすさやシステムに改良を入れた「ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ」(以下、「FFXII TZA」)が、PS4/Nintendo Switch/Xbox One/PC向けに発売されています。

15年以上前の作品ながら、今なお数多くの現行機でプレイできる「FFXII」。本作の楽曲を手掛けているのは、「ファイナルファンタジータクティクス」や「タクティクスオウガ」などの作品でも知られている崎元仁氏です。

■メインテーマと帝国のテーマがあちこちに散りばめられている楽曲たち

本作の楽曲は、「メインテーマ」(「FFXII」のテーマ)と、「帝国のテーマ」、このふたつの旋律が多数の楽曲で使われています。わかりやすいところでは、「悲哀(解放軍バージョン)」「悲哀(帝国バージョン)」の他、「共存(解放軍バージョン)」「共存(帝国バージョン)」といった風に、同じ曲名でも解放軍バージョンと帝国バージョンがあったりします。

解放軍バージョンと帝国バージョンとでそれぞれどのような曲に仕上がっているのか、また同じテーマを使いながらも悲哀と共存という違う雰囲気をどのように出しているのかをサウンドトラックでじっくり聞いてみると、本作の音楽の奥深さを感じ取れます。

崎元氏の音楽の特徴は大きな芯(テーマ)をズドンと一本通し、そこから様々な派生を生み出していくことですが、「FFXII」では取り分けぶっとい芯を叩き込んだように感じられます。それはきっと、それだけ強いテーマがなければ、「FFXII」の荘厳な物語に、音楽が負けてしまうからではないでしょうか。

また、崎元氏の音楽はオーケストラが活かされているものが多いですが、「FFXII」はPS2の内臓音源ながら、表現が非常に豊かなサウンドになっています。

本作の楽曲は、「FFXII TZA」で崎元氏の手によってフルオーケストラでアレンジされていますすが、PS2版でも全く見劣りしない雄大な音を聴かせてくれます。

「FFXII TZA」にはオリジナル版のBGMとオーケストラ版BGMの両方が入っているので、聞き比べてみるのも面白いでしょう。ちなみに筆者は、なんだかんだと思い入れの大きいオリジナル版BGMのほうが好みではあるのですが、迫力は生オーケストラのほうが一層強まったと思います。

■名曲が多すぎるけど、無理やり2曲選びました

筆者のオススメの楽曲を実際に挙げてみようと思っても、100曲にも及ぶ楽曲の中から「コレ!」という1曲だけを挙げるのは難しいのですが、あえて選ぶのであれば、エリアに出た瞬間に目の前に広がった景色とBGMに震えた「東ダルマスカ砂漠」でしょうか。

1曲を通して、「FFXII」のメインテーマのアレンジになっているフィールド曲。そして「FFXII」はボス戦以外バトルBGMが切り替わりませんので、東ダルマスカ砂漠エリアのバトル曲とも言えますね。

冒頭のチュートリアルを抜けて、いよいよちゃんとガンビットでのシームレスバトルを使っていくにあたってのワクワク感と、ヴァンを操作して初めて街の外へ出るドキドキ感、そして実際眼前に広がる砂漠への驚き。ゲームをプレイするプレイヤーの感情を、この1曲にまとめているといっても過言ではない、全てを兼ね備えた素晴らしい楽曲です。

「FFXII」のフィールド曲は全体的に「東ダルマスカ砂漠」のように明るい曲が多く、ダンジョンはしっとりめだったり重めの曲調になっているものが多いです。この対比が非常に良く、フィールドでは青空を、ダンジョンではそのエリアが持つおどろおどろしさや神秘さなどを感じられて、ゲームプレイとしても上手く緩急がついたと感じます。

あともう1曲だけ選ばせてもらうならば、ラスボス戦のBGMである「自由への闘い」です。この1曲の中にメインテーマと帝国のテーマのどちらもが使われており、「FFXII」のサウンドを支えてきた二大巨頭がぶつかりあう楽曲となっています。その音楽の壮大さは、他のRPGでもなかなかお目に掛かれないレベルになっているのではないでしょうか。

このラストバトルにたどり着くまで、様々な場面でフレーズが出てきたふたつのテーマなのですが、この楽曲でまだこんなアレンジが出てくるのか、と感嘆の声しか出てきません。

このラストバトルのBGMの展開は崎元氏の得意とするところではあり、崎元氏がBGMを担当している多くのゲームで使われているのですが、その中でも「FFXII」の「自由への闘い」は(ループを含めて)9分近くある大作BGMとなっています。

ラストバトルでBGMからぞくっと震えてしまうような展開を、まだ「FFXII」を未経験の方には味わってほしいと思いますし、既に「FFXII」をプレイ済みのファンならば、あの素晴らしいバトルを思い出していただければ幸いです。

PS2版のオリジナルサウンドトラックでもCD4枚組、約100曲、5時間近い収録時間を誇る「FFXII」。全編を通じて、オーケストラならではの心地良い曲も多いです。ゲーム音楽がゲーム体験を見事に盛り上げていて、筆者の未だに大好きな一作となっています。未体験の方は、ぜひプレイしてみてください。

ファイナルファンタジーXII オリジナル・サウンドトラック
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