実は放送コードに抵触…金ロー『ノートルダムの鐘』に正直「ぽかん」?その理由を徹底解説

ディズニー映画が金曜ロードショーで11月17日(金)から4週連続で放送。

11月24日(金)は『ノートルダムの鐘』。

(画像:金曜ロードショー公式サイト)

主人公のカジモドは背骨が湾曲する病の持ち主です。

この特徴「せむし」が実は日本だけ放送コードに抵触するということで調整が入っています。

原題は『THE HUNCHBACK OF NOTRE DAME』ですので、そのまま訳せば「ノートルダムのせむし男」となるはずですが、日本では「ノートルダムの鐘」となっています。

「せむし」を意味する「HUNCHBACK」を「BELLS(鐘)」に変更しているのですね。

作品中のロゴも丁寧に直されてます。

ディズニーの夢見心地な世界観に、登場した異質感のある主人公。

なぜ、「せむし男」を題材にした作品が1996年に誕生したのか、時代背景をもとに考察してみました。

■時代背景が要因?

上映された1996年は作品の傾向としてどんな年だったかというと…

・前年の1995年に「フォレストガンプ」が大ヒット
・人より何かが劣っているけど「ピュア」という存在が神格化
・「軽度の障がい者=ピュア」作品がブーム化
・1996年には日本で軽度の障がい者系ドラマ「ピュア」「オンリー・ユー〜愛されて〜」が放送され高視聴率をマーク。

といった、いわゆる「訳あり」主人公ブームというのがありました。

もしかしたら、このブームに沿ったテーマで作品を出すことがミッションだったのかもしれません。

■ディズニー映画同行は王道を外れ試行錯誤期だった?

ディズニー界隈はというと、

・「リトルマーメイド」の大ブレイクでディズニー映画が一気に人気コンテンツになります。
・「美女と野獣」「アラジン」「ライオンキング」と王道系作品が続き、金字塔を打ち立てた黄金期。
・夢見心地で勧善懲悪な王道系でばっちり当てたところで、急な方向転換が訪れます。
・それが突然の「ポカホンタス」。
・観客の間で、ディズニーは「王道だけじゃない」という意識が芽生え始めます。
・メッセージ性を色濃くした作品を見ることこそ「真のディズニーファン?」という意識も生まれ始めました。

少し凝った話を展開することで、一体どの程度観衆がついて来れるのか試されているような時期だったのかもしれません。

■時代とのギャップは?

しかしながら、今回の金ローを観てちょっとだけ、「ぽかん」状態の人にお伝えしたいのが…

リアル世代もちょっとだけ「ぽかん」状態だったことを。

まず、1996年の東京はこんなとこでした。

(画像:時事)

こんな人達が本当に当たり前に街に溢れかえっていて、

(画像:時事)

飲食店は基本的に全て「喫煙可」。

まだスタバもまだあまり多くありません。

1996年の興行収入1位はド王道のハリウッド映画「インデペンデンス・デイ」。

ストレートな作品が受け入れられやすい環境であることは、今考えても察しがつくことと思います。

このような時代に、主人公が脇役化してヒロインの幸せを見守るという複雑なストーリーは少しハードルが高かったようで、やはり興行成績は低かったようです。

■映画界隈はシネコンとミニシアターブームがぶつかり激戦期

そして、映画界の動向はというと…

・1996年には3つのシネコンがオープン。90年代後半はシネコン設立ラッシュ
・ミニシアターブームも到来
・メジャー系、単館系の両軸が大ヒット
・「セブン」「ミッション: インポッシブル」1作目などが日本で上映される
・日本映画は北野武監督の「キッズリターン」、「岸和田愚連隊」など静かにブームの礎を築く

現在でも語り継がれるくらいの名作が次々に誕生した年でもあります。

やはり、1996年の「ノートルダムの鐘」は異質な存在だったのではないでしょうか。

■1996年、番宣等でとにかく推されていたことは「CGの綺麗さ」

1996年も、もちろん様々な番組で「ノートルダムの鐘」は番宣されていました。

そこで、とにかく推されていた「見るべきポイント」はズバリ「CGの綺麗さ」だったことを記憶しています。

特に、景色の表現が一線を画すものとのことで、空気の中にある「塵」が光に反射する様子まで表現されているとのことでした。

実際に映像を見ると、景色の表現は確かに気合が入ったものを感じることができます。

■その頃ジブリは?

さて、この映画の頃、ジブリ映画はどうしていたかというと…

・前年の1995年に「耳をすませば」上映
・1986年の「天空の城ラピュタ」以降は、活劇系から離れて「日常系」を描いている時期
・翌1997年に「もののけ姫」が堂々ロードショー。

ジブリが日常系作品を主軸にしていた1995年までの間、ディズニー映画は「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」「ライオンキング」という代表作を連発させたことになります。

しかし、ディズニー映画が路線変更を始めてまもなく、1997年にジブリの「もののけ姫」が完成したのは偶然とはいえ、どことなく機運の良さを感じさせます。

「もののけ姫」の完成度の高さと大ヒットは、ナウシカやラピュタのファンにとってある意味ジブリの復活を感じさせるものでした。

■ノートルダム以降のディズニー映画は?

その後のディズニー映画ですが、翌年1997年は「ヘラクレス」を公開。王道路線を復活させます。

その後、「ムーラン」「ターザン」「ダイナソー」と続き、様々な挑戦を行っていることが垣間見えます。

ピクサーとの共同製作では、「トイ・ストーリー2」や「バグズ・ライフ」「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」などを上映。

よりファミリー向けで明るい作品を提供しています。

ディズニー長編映画は、今後「アナ雪」のパート3や「ズートピア」のパート2が予定されており、今後の展開にも目が離せません。

<取材・文:おとなカワイイwebマガジンCOCONUTS編集部>

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