梅毒感染者数、3年連続で過去最多更新 母子感染数も過去最多

 性感染症である「梅毒」の感染者数が3年連続で過去最多を更新した。同時に、母子感染例も過去最多となったことも判明。放置しておくと健康的な悪影響は軽くないだけに、関係者は危機感を募らせている。

過去最多、感染者13,251人

 東京都感染症情報センターが24日に公開した都内の感染者数統計の中に、国の集計結果も掲載されており、今月19日までの集計で過去最多の13,251人であることが分かった。昨年の12,966人を現時点で上回ったことになり、さらなる増加が確実視される情勢だ。

 梅毒は原因菌である「梅毒トレポネーマ」が、皮膚や粘膜から侵入して感染する。性交渉で感染することが多いことから性感染症に類型されている。病気の進行は大きく分けて4つに分かれるとされており、最初期は感染後約3週間で、感染した場所(性器、肛門、口など)に、できもの、しこり、ただれなどができる。痛み等はないことが多く、放置しても数週間で消失する。そしてその後1〜3ヵ月経つと、今度は手のひらや足の裏など全身に発疹やブツブツができる(第2期)。こちらも放置していても数週間で消失する。

 気をつけなければならないのは、梅毒は症状が消失しても治っているわけではなく、逆に体内で菌が増殖し進行しているということだ。この病気は早期に抗生剤をしっかり服用すれば完治するが、この皮膚など体表面に現れる症状をそのまま見過ごしていると、梅毒は次の段階に進行していき、それ以降は体に甚大な影響を与え始める。症状が出てくるのは数年~数十年後と幅広いが、その時は心臓、血管、神経に菌が入り込み痛みや吐き気などの激しい症状を伴い始める。治療開始が遅れれば、身体障害を含む後遺症が残るリスクまで高まってしまうのだ。

母子感染も32人、過去最多

 感染した母親から胎盤を通じて胎児が感染する「先天梅毒(母子感染)」も10月4日時点で32人と過去最多を更新している。こちらも胎児に大きな影響を与えかねないので、警戒すべき事態となっている。流産や死産になることがあるほか、生まれてきた赤ちゃんに難聴や失明、知的障害などが出ることがあるからだ。しかも母親が原因菌を持っている場合、胎児に感染するリスクは最大で80%もある。

 このように子どもの一生を一変させてしまう恐ろしいリスクをはらんでいるので、心当たりのある人は躊躇せずパートナーも含めて検査を受け、感染が分かった場合はしっかりと治療に取り組むことが大切だ。なお梅毒の検査は、検査を行なっている医療機関ならどこでもプライバシーを完全に秘匿できる体制を整えており、安心して検査を受けられるようになっている。

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