上良潤起(香川ファイブアローズ)、B2復帰に向けキャプテンとして、シューターとしての思いを語る

今週末で第8節に差し掛かるB3リーグにおいて、11月に入って負けなしの6連勝と調子を上げてきた香川ファイブアローズ。B2からの降格という屈辱を味わった後、ヘッドコーチ交代と大幅なロスターの入れ替えを経て臨んだ今シーズンは、開幕からの8試合が4勝4敗とスタートダッシュとしては芳しくなく、最短でのB2復帰に向け不安を感じたブースターもいたかもしれない。しかしここにきて、新任の薮内幸樹HCのフィロソフィーが浸透し始めるとともに、この力が融合し始めているような印象だ。

11月17日の東京ユナイテッドBC戦で今シーズン最長となる6連勝を手にした直後、非常に大きなチャレンジに向き合うシーズンにキャプテンを任された上良潤樹に話を聞いた。上良は沖縄県出身で、小禄高校から九州産業大学に進み、卒業前からファイブアローズで特別指定選手としてプレーしているシューティングガードだ。今シーズンは開幕からの14試合すべてに出場し、平均5.8得点、3P成功率34.9%、2.5リバウンド、2.3アシストのアベレージを残している。

上良潤樹プロフィール: #93 SG 187cm/80kg 1997年8月26日沖縄県生まれ(写真/©月刊バスケットボールWEB)

松井啓十郎からメンタル・タフネスを学ぶ

——11月に入ってチームの調子が上がってきていますが、要因はどんなことですか?

開幕から難しいゲームが続いて、11月は自分たちでリーグの風向きを変えようと話をしていました。11月頭のゲームからは、僕らの持ち味であるディフェンスを強化して相手の失点を抑えられたことで自分たちのゲームになっています。そこを求めてきて、事実今までのゲームで失点が少ないので、そこが連勝の要因かなと思います。

——昨シーズンは悔しい思いをしたと思いますが、今シーズンのここまではどんな心境でプレーしていますか?

本当に昨シーズン悔しい思いをしているので、今シーズンは何が何でもB2昇格が目標です。達成しないと自分が残った意味がないという気持ちで残ると決めましたし、開幕戦から、スタートなり控えなりコートに出た時間はしっかり仕事をしようというのを自分の中で掲げています。キャプテンという役職も任されていますので、プレーもそうですけど、チームをまとめられるように意識しています。

——新加入のベテラン、松井啓十郎選手から学んだり吸収できているのはどんなことですか?

プレーもそうですけど、メンタルな部分で学ぶことが多いなと感じています。KJ(松井のニックネーム)がリーグ屈指のスペシャルシューターであることは皆さんもご存じだと思うんですけど、KJから学ぶことは打ち続けることです。やっぱり調子の悪いときもありますし、入らない日が続くというのもありますが、彼はシューターとして、どんなに調子が悪くてもシューティングタッチが悪くても、自分の仕事を継続していきます。普通なら入らないことで落ち込むと思うんですけど、KJはそこで切り替えて次のプレー次のプレーというメンタル。そこは本当に僕も学ぶべきところです。

僕は今まで香川にいて、ベテランというベテランがいませんでした。KJはB1にいた選手ですので、いろんなことを吸収しながら学ぶことが多いです。

自分にフォーカスして、これまで以上に得点を意識

——上良選手はどんな性格ですか?

自分で言うのもアレなんですけど、周りを気にしすぎてしまう性格です。いいところでもありますけど、プロバスケットボール選手である限り、周りのことを考えすぎるというのは自分の仕事を殺してしまう感じにもなりがちで。そうするとメンタル的にも消極的になってプレーもうまくいかなくなります。そこが課題だとわかっているんですけど、自分の性格上周りの人を見てしまう。普段はそういう性格でいいんですけど、バスケではもっと自分のことにフォーカスしてプレーしないといけないなというのは、自分の課題だと思います。

——スペーサーの役割で、アウトサイドで待つ立場だと余計に難しいのではないですか? ボールが来たら高確率で決めないといけないし、かといってなかなか来ないときもあるでしょう。「よこせ!」という気持ちと同時にみんなを生かさなければと思ってしまうわけですよね。

本当にその通りで、もっとボールをもらわなければいけないなと自分でも感じています。性格上チームのスペースを悪くしちゃいけないというのを第一に考えてしまうことがあって。自分でプレーしなければいけないというのはわかるんです。でも、自分がもらいに動いたところでもしパスが入らなかったらスペーシングが悪くなってしまうとか、いろんなことを考えながらプレーしてしまって、自分自身もフラストレーションがたまりますし、でもチームのことを考えなきゃいけないなというのもあります。そこは僕自身もちょっと模索しているというのはありますね。

——今、シューターとしての課題や目標はどんなものですか?

今シーズンは今までと違って得点を意識しないといけないと思っています。3Pショットなりドライブでアタックするなり、オフェンスのバリエーションをどんどん増やしていかなければいけないというのが今シーズンの課題。去年までと違ってオフェンスでもっと得点に絡めるように、そこを求められていると思うのでしっかり磨いていきたいです。それと同時に、今まで通りディフェンスも自分の仕事と思っているので、引き続きインテンシティーを保ってチームの失点を抑えられるようなディフェンスをしていきたいです。

——シューティングで何か特別に取り組んでいることはありますか?

シューティングは毎日しているんですけど、僕はどちらかというと、自分たちのセットオフェンスの中で僕のポジションが打つようなプレーでのシューティングをやるようにしています。ただスタンディングで打って感覚を整えるというのもありますけど、ゲームはやっぱり動いているので、動きの中でのシューティングを日頃からしていないと試合では絶対に決めきれないと思いますし。

それをやったからと言って必ず入るようになるということでもないですが、本当に反復練習が大事になってくると思っています。それも、意味のある質の高いシューティングにしないとゲームで生かせないと思うので、僕はそこを意識しています。一日何本というのは決めていないんですけど、だいたい二人一組になって1時間くらいは必ず打つようにしています。

「いい選手ではなく怖い選手になってほしい」——薮内幸樹HC
上良がインタビューの最初のやり取りで触れているとおり、ファイブアローズは現在B3全体で失点が2番目に少ない平均73.4。11月に入ってからはさらにそれが70.0まで下がっている。ただし上良自身は11月の6試合でアベレージを4.5得点に落としており、シュートタッチもよくはない状態だ。そこにはやはり、やや考えすぎてしまっていることや、スペーサーとしての仕事の難しさがあるのだろう。

それでも、キャプテンとしての最大の責任は勝利だろう。個人的なパフォーマンスの観点からは我慢の時期かもしれないが、11月に入って勝ち続けていること自体が大きな成果だ。次は安定した心持ちを保って自身の持ち味をプレーとして表現することだが、ここを乗り越えたら良い波が訪れるのではないだろうか。

薮内HCによれば上良は「優しくていい子」。今はプロとしての執着心を強めていけるように向き合っているという。「潤樹に最近言ったのが、ただ抽象的なシーズンを過ごすのではなく、年齢的にも26歳になるので何か数値的な目標を持った方がいいということ。毎試合のアベレージを10得点に乗せなさいということで、3Pショット3本~4本でも、あるいはフリースロー10本でもいいので、数字に対して追いかける執着心を求めたいです」。プレーヤーとしてのポテンシャルはすでに十分わかっている。しかし、薮内HCは「潤樹っていい選手だねではなく、怖い選手だねと言われるプレーヤーになってほしいです」と一歩進んだ期待を語る。

現在6連勝中の香川は、首位の福井ブローウィンズ(11勝3敗)を1ゲーム差で追う2位まで順位を上げている。B3の今シーズンは上位7チームが2ゲーム差の中でしのぎを削る大混戦だが、ファイブアローズとしても、頭一つ抜け出すために上良の爆発がほしいところに違いない。キャプテンとして、シューターとしての飛躍に期待しよう。

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