4年ぶり笑顔満開、ランナー2万人疾走 戻ってきたコロナ前の風景 「らしさ」あふれた神戸マラソン

ビルが立ち並ぶ神戸の街中を走り出したランナー=神戸市中央区

 「『ありがとう』を、この街と。」をキャッチフレーズに掲げた「神戸マラソン2023」(神戸新聞社など共催)は19日、神戸市役所前をスタートし、神戸・ポートアイランドの市民広場前をフィニッシュする42.195キロで行われた。新型コロナウイルス禍での2年延期や制限付き開催を経て、今年は沿道からの声出し応援が復活し、海外在住者の募集も解禁。4年ぶりに「コロナ前」と同じ光景が戻り、随所に「神戸マラソンらしさ」があふれるレースが繰り広げられた。(大原篤也、前川茂之)

 阪神・淡路大震災で国内外から寄せられた支援への感謝の気持ちを込め、2011年に始まった大会。11回目の今回も変わらず「感謝と友情」をテーマに開催された。レースには2万366人が出走し、1万9579人が完走。比較的、天候にも恵まれ、完走率は96.1%だった。 ### ■涙の初優勝

 男子はバーナバ・キプコエチ(ケニア)が2時間11分19秒で制し、女子は堀江美里(シスメックス)が2時間33分4秒で初優勝を飾った。

 女子では日本人選手として2大会ぶりの頂点に立った堀江。神戸市立舞子中学校から星陵高、武庫川女子大を経てノーリツへ進み、20年にシスメックスに移籍した。36歳のベテランだが、一貫して兵庫県内を拠点に活動を続けてきた。

 レースは序盤から、第9回大会の覇者で前回も日本人トップの2位に入った山口遥(AC・KITA)との一騎打ちに。30キロまでは並走が続いたが、終盤に入って一気に突き放し、フィニッシュ地点ではちょうど1分の差をつけた。

 大会を特別協賛するシスメックスからの優勝者は初めて。しかも生粋の神戸っ子だ。地元の大歓声を浴びながら栄冠を手にし「いっぱい感謝の気持ちを伝えたい人がいる」と涙を浮かべた。 ### ■61万人の大声援

 4年ぶりの声出し応援解禁で、沿道からは約61万人が声援を送った。

 都市マラソンながら沿道応援とランナーの距離が近く、目の肥えた陸上ファンも多い神戸。鳴り物や手作りの応援グッズを手にした人たちの声援は、42.195キロの長丁場でも途切れなかった。今年からはレース最大の難所でもある終盤の神戸大橋周辺で神戸市消防艇による海上からの応援放水も実施された。

 要所の公園などでは集客イベントも開催。折り返し地点に近い舞子公園(神戸市垂水区)では4年ぶりに応援イベントが開かれ、家族連れらでにぎわった。

 会場には地元の飲食店など13店舗が出店したキッチンカーや屋台が並び、応援を終えた家族らが長い列をつくった。コース沿いには特設ステージも設けられ、チアリーディングや和太鼓、アカペラグループなどが登壇。パフォーマンスでランナーを励ました。

 地元のチアグループ「ゴールドスターズ」の須藤果子さん(14)は「手を振り返してくれたり、一緒に踊ってくれたりする人がいて、ランナーの反応がうれしかった。応援する方も楽しい気持ちになる」と笑顔だった。

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