「やきゅうさま」が国の宝に…東松山「箭弓稲荷神社」が国重要文化財指定へ 野球関係者らの参拝でも有名

七五三詣での家族連れでにぎわう箭弓稲荷神社=23日、埼玉県東松山市箭弓町

 埼玉県東松山市箭弓町に鎮座する「箭弓(やきゅう)稲荷神社」が24日、新たに国の重要文化財に指定されることが決まった。思わぬ朗報に地元関係者は「望外の喜び」「後々まで継承を」と歓迎し、大切な地域の宝を再認識した。

 同神社は、古くから信仰を集め「箭弓さま」と親しまれている。初詣や節分祭、初午(はつうま)祭、春の牡丹(ぼたん)祭、秋の七五三詣でなど、年間を通して多くの人が参拝に訪れる。近年は「勝負の神様」とも知られ、社名の「箭弓」の響きにちなみ、プロ、アマ問わず、野球関係者の“聖地”にもなっている。

 同神社は2014年、創建1300年を迎え、記念事業の一環で保存修理・耐震工事(2013~15年)を実施した。ものつくり大学(行田市)の横山研究室(横山晋一教授)が本格的な学術調査研究を行い、洗練された彫刻技法や断片的でしか判明していなかった社殿の経歴などが明らかに。その報告書が重要文化財指定の答申につながった。

 横山教授は「近世における権現造形式社殿の最後を飾る集大成として見て取れる。調査研究の成果が認められて大変うれしい。頑張ったかいがあった。国の宝なので、後々まで継承してもらいたい」と話した。

 同神社のそばで生まれ育った前箭弓町町内会長の松本正さん(83)は「子どもの頃の遊び場で、心のよりどころであり誇りでもある。これまでの人生で『箭弓さま』を抜きには考えられません。とても素晴らしい話で、幸せに感じる」と笑みを浮かべた。

 前原利雄宮司は「(指定は)名誉なことで望外の喜び。江戸末期に再建に努力した人たち、これまで護持運営に協力していただいた歴代宮司、職員、総代、氏子ら関係者の皆さんに敬意と感謝を申し上げます。(歴史文化遺産の)この宝を多くの人に知ってもらい、これからも大切に守っていきたい」と話した。

■大変喜ばしい限り/森田光一市長の話

 箭弓稲荷神社本殿・幣殿・拝殿が、関東を代表する近世神社建築として、国の重要文化財指定に向けて答申されたことについては、大変喜ばしい限りです。

 箭弓稲荷神社が国指定文化財に指定されれば、東松山市としては4件目、実に65年ぶりの出来事となります。これまでの指定に向けた取り組みの中、ご指導・協力いただきました関係者の皆さまに深く感謝申し上げます。

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