【MLB】 大谷のスプリットにウェインライトのカーブ!? 山本の超一流のレパートリーに太鼓判

写真:山本由伸©Getty Images

現地20日、山本由伸は正式にポスティング公示され、MLBのチームとの交渉が解禁された。既に”リーグの半分”が山本にコンタクトを取ったとも言われ、争奪戦は激しさを増す一方のようだ。

『MLB.com』のデビッド・アドラーは山本のレパートリーを分析。球速・回転数・変化量といったデータをMLBの投手と比較し、山本の成功の可能性に太鼓判を押している。

山本のトラッキングデータはWBCでMLB球を投じられたものに限られているが、少ないサンプルの中で山本はピカイチの素材を示した。

まず、山本の4シームは、球速もさることながら、浮き上がるような変化が特筆されている。

平均球速95.3マイル(約153.4キロ)はMLBの平均より2マイル速く、最速は96.9マイル(約155.9キロ)に達した。

そして、横方向への変化量11インチ(約27.9センチ)は平均を大きく上回り、縦方向への変化量(落下量)はわずか13.2インチ(約33.5センチ)に過ぎない。つまり、山本の4シームは「シュート方向に大きく食い込みながら、沈むことなく浮き上がるような変化を見せる」ような優秀な球種ということだ。

山本の4シームとよく似た4シームを投げるのが、今季ア・リーグサイ・ヤング賞投票3位のケビン・ゴーズマン(ブルージェイズ)だ。球種の有効度を示す指標”ラン・バリュー”ではゴーズマンの4シームは、メジャー7位の+16を記録している。

また、これはWBCのみのデータであり、レギュラーシーズンで山本はさらに球速が上がっていることを考えれば、山本の4シームは通用する可能性が高いのではないだろうか。

次に分析されたのが山本の代名詞のひとつである大きなカーブだ。アドラーは山本のカーブを「美しい球」と形容、カーブを武器に活躍するレジェンドの名前を引き合いに出した。

平均77マイル(約123.9キロ)で65.8インチ(約167.1センチ)の縦変化量、そして14.2インチ(約36.0センチ)の横変化量を誇る山本のカーブは、クレイトン・カーショウ(ドジャース)やアダム・ウェインライト(元カージナルス)、ダルビッシュ有(パドレス)らのカーブが比較対象に挙がった。

しかしそれでも、カーショウやダルビッシュ、そしてブレーブスのエースであるマックス・フリードのカーブは、横への変化量は山本には及ばない。最も近い変化を見せているのが、ウェインライトのそれだ。

通算200勝を達成したウェインライトは、球速が衰えてからも伝家の宝刀であるカーブを多投し、老獪に打者を抑えてきた。山本のカーブはウェインライトと同じように、それ単体で通用するクオリティを秘めているかもしれない。

山本の最も美しい球種がカーブならば、最も”エグい”球種はスプリッターだろう。山本のスプリッターは、WBCで打者のスイングのうち半分を空振りに仕留めた。

山本のスプリッターは平均89.8マイル(約144.5キロ)で、縦変化量は32.8インチ(約83.3センチ)そして横変化量は9.6インチ(約24.3センチ)。高速でこれだけの変化を見せる恐ろしい球種だ。

球速・変化量からいえば、山本のスプリッターに最も似ているのは大谷翔平のスプリッターだ。大谷のスプリッターはスイーパーの台頭によって年々数を減らしているものの、いまだ空振り率41.4%を記録しており、その絶大な威力がうかがい知れる。

山本の第4の球種はカッターだ。山本のカッターは、カーブやスプリッターといった決め球の影には隠れているが、平均で150キロに迫る球種だ。アドラーは山本の高速で小さく動くカッターを、その使い方から今年のサイ・ヤング賞投手ゲリット・コール(ヤンキース)のスライダーと比較した。

ゴーズマンの4シーム、ウェインライトのカーブ、大谷のスプリッター、コールのスライダー。MLBの超一流と似た球種を持つ山本の成功の可能性はいかに。

アドラーは「千賀や大谷、その他のNPBのエースたちのように、MLBで支配的な投手になる素質を秘めている」と締めくくり、太鼓判を押した。

© 株式会社SPOTV JAPAN