社説:ガザ戦闘休止 国際社会は停戦へ後押しを

 イスラエルとイスラム組織ハマスが、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を4日間休止することで合意した。

 双方が合意を守れるのか予断を許さないが、確実に履行し、停戦につながる一歩にしなくてはならない。

 合意では、ハマスは拘束する人質の女性や子ども50人を解放するという。

 イスラエルも、パレスチナ人の女性や未成年者150人を釈放することで了承した。ハマスが人質を追加で10人解放するごとに、さらに1日ずつ戦闘を休止するとしている。

 ハマスの奇襲攻撃が始まった10月7日以降、初めての休止合意である。逃げ遅れた人の避難や支援物資の輸送など、人道危機の回避に力を尽くしたい。

 ただ、4日間はあまりにも短く、求められるのは休止ではなく停戦だ。

 ガザ地区では、燃料も水も電気もなく、住民たちは過酷な状況下で避難を余儀なくされている。この間、少なくとも1万4千人以上が死亡した。大半が子どもや女性だという。

 特にイスラエル軍は、ハマス司令部が地下にあると主張し、病院を襲撃して、新生児を含む民間人の犠牲者を増やし続けている。「自衛」の域をはるかに超え、国際人道法違反は明らかであり、常軌を逸した行為というほかない。

 イスラエルのネタニヤフ首相は「全ての目的を達成するまで戦争は続ける」と明言している。ハマス壊滅の方針に変わりはなく、休止後は侵攻がさらに激化するおそれも強い。

 多くの市民が退避するガザ地区南部に侵攻することになれば、さらに悲惨な事態になるであろう。何としても止めなくてはならない。

 戦闘休止の合意に至った背景には、国連安全保障理事会が人道的な戦闘休止などを求める決議案を、賛成多数で採択した国際圧力があろう。

 ガザ戦闘に関しては過去4回否決され、機能不全に陥っていたが、ようやく法的拘束力のある決議にこぎつけた。

 日本やフランス、中国が賛成。英国、ロシアに加え、イスラエルを擁護して拒否権を発動してきた米国は棄権した。

 病院襲撃などを受け、米国内をはじめ世界各地でイスラエル非難のデモが起きている。米国は国際世論の批判が高まったことで軌道修正を余儀なくされ、事実上採択を容認した。

 国際社会は停戦につながるよう後押しをいっそう強めたい。

 民間人への武力行為はいかなる理由があっても許されないとの意思を明示し、和平交渉も視野に入れてほしい。

 日本は、イスラエル、パレスチナ双方と外交を展開してきた長い歴史がある。米国はもちろん各国への働きかけなど、踏み込んだ行動をとることで存在感を発揮すべきだ。

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