【編集長の独り言】直近の決算内容から見るゲーム各社の戦略

前回のコラムでAMDシンポジウムの内容を取り上げましたが、そこでゲーム市場の変化について少しだけ触れました。個人的には今がちょうど次の動きを模索している時期だと感じているのですが、それは各社の直近での動向からも見えてきます。その動きを分かりやすく感じ取れるのが上場企業の決算発表、ということでいくつかかいつまんで紹介していきます。

と言っても、これは丁寧な市場分析というよりも各社の動き方から今自分が感じていることに過ぎませんので、そこはあらかじめご理解いただけますと幸いです。

■コンソール市場での地固めが印象的なカプコン

カプコンの2024年3月期第2四半期における決算は、売上高が749億3400万円(前年同期比52.7%増)、営業利益が338億3500万円(前年同期比54.5%増)、経常利益が361億6400万円(前年同期比57.3%増)と、増収増益を果たしています。※

※下記参照
https://www.capcom.co.jp/ir/data/html/result/2024/2nd/1.html

これは「ストリートファイター6」の貢献が大きいのは間違いないのですが、それだけでなく同社が継続的にデジタル販売を通じたリピート販売で好調に推移しているのが大きいです。それだけ、デジタル販売における優良コンテンツが揃っているということの表れだと思います。

数年前まで、カプコンはモバイルを含むオンラインゲーム市場にもタイトルを複数展開していましたが、近年は自社開発による新規タイトルはリリースされていません。モバイル市場においては「モンスターハンターNow」のようなライセンサーとしての動きのほうが目立つ印象です。

そうしたコンソール市場への積極的なタイトル投下に一役買っているのが、同社の内製エンジン「RE ENGINE」であることは想像に難くありません。オンラインイベント「CAPCOM Open Conference Professional RE:2023」では次世代エンジン「REX ENGINE」の開発にも取り組んでいるということで、コンソールタイトルへの注力には今後も期待できそうです。

■IP軸への転換でエンタメ領域全般をフォローするバンダイナムコ

バンダイナムコホールディングスの2024年3月期第2四半期の売上高5020億200万円(前年同期比5.1%増)、営業利益654億7900万円(前年同期比19.8%減)、経常利益739億3100万円(前年同期比20.0%減)となっています。※

※下記参照
https://www.bandainamco.co.jp/files/2024E5B9B43E69C88E69C9FE7ACAC2E59B9BE58D8AE69C9F_E.pdf

利益こそ減っているものの、これは「ELDEN RING」というヒット作の反動と考えると妥当なところかと思います。しかしながら、近年ではこれまでグループ各社で各領域を担っていたIP軸の取り組みに関して変化が生まれており、その点が今後の展開にも影響してくるものと考えています。

その主だったものが「ガンダム」と「アイドルマスター」です。どちらもグループ全体で動こうとする流れが確実に生まれていて、それはバンダイナムコグループが掲げる中期ビジョン「Connect with Fans」の一角を担う、「IP軸戦略」とも合致する動きとなっています。

その考え方のもと、特にゲームから生まれた「アイドルマスター」に関しては、2023年は「MRプロジェクト」や「vα-liv(ヴイアライヴ)」といった新たな展開を見せました。この取り組みに対する評価はもうしばらく先になりそうですが、ゲーム外の施策に積極的に取り組んでいるのは、エンタメ企業のバンダイナムコらしいと言えるかもしれません。

■かつてのソーシャルゲームメーカーの現在地

最後に、ここ10年の市場で主役となっていたソーシャルゲーム会社の現在の取り組みに少し触れたいと思います。

プラットフォーマーであるグリー、DeNAの2社ですが、現在はゲームに軸足を持ちつつも、グリーであればメタバース領域、DeNAはライブストリーミングやスポーツ事業への取り組みを進めています。

そのほかの会社も既存タイトルの運営を中心に、新規事業への模索を続けている状況です。例えばKLabやCROOZ、gumiなどはweb3への積極的な投資を行っていて、将来的なゲーム市場への浸透を目指しているというところでしょうか。ドリコムはWeb3のほか、出版領域にも取り組むなど、独自の動きが印象的です。

mixiが「モンスターストライク」で成功を収めたように、他事業からゲーム事業での成功という観点ではいくつか事例が思い浮かぶものの、ゲーム事業からの転換を果たしているケースは少ないように感じられます。いかに事業を多角化、もしくはシフトさせていけるかが各社の今後の動きに表れていきそうです。

こういう市場の変化はユーザーの行動様式との相関もあるというところで、まだまだ見通せない部分はありますが、もうしばらくは高止まりしたスマートフォンゲーム市場での競争は継続しつつ、各々が戦えるフィールドを模索することになりそうだと感じています。


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