「まちおこしに終わりなし」八戸せんべい汁研究所 設立20周年/魅力発信これからも

セレモニー終了後、せんべい汁が市民に振る舞われた
記念イベントで20年を振り返る木村所長

 青森県八戸市の市民団体「八戸せんべい汁研究所」(汁”研)が今月、設立から20周年を迎えた。郷土料理や食のPRにとどまらず、「B-1グランプリ」を考案し全国にご当地グルメブームを巻き起こすなど、八戸地域や青森県の魅力発信に貢献してきた。25日、同市で記念イベントを開き、「まちおこしに終わりなし」を合言葉に活動の継続を確認した。

 汁”研は2003年11月、翌月の東北新幹線八戸駅開業1周年を契機に県南地方の郷土料理を全国区に押し上げるため、現所長の木村聡さん(59)=VISITはちのへ事務局次長=ら市民有志12人で発足。せんべい汁の提供店を紹介したマップを作製し、12月1日の1周年イベントでは八戸駅でせんべい汁を乗客らに振る舞った。

 約2年後の06年2月、第1回B-1グランプリを同市の八食センターで開催。ご当地グルメでまちおこしに取り組む全国の10団体が八戸に集結し、地域を売り込んだ。同イベントは数年後、数十万人が訪れる全国有数のグルメイベントに成長した。

 汁”研の初代所長を務めた田村暢英さん(70)=元八戸市物産協会常務理事=は「新幹線開業以前、八戸の知名度や物産の認知度は低かったが、木村さんら創設メンバーには、みんなやる気があった。その熱意が化学反応を起こし、メディアにも取り上げられて飛躍を遂げた」と振り返る。

 11年、総務省の分科会は汁”研が八戸地域にもたらした経済波及効果は年間563億円に上ると試算した。12年の第7回B-1グランプリでは念願のゴールドグランプリを受賞。せんべい汁は青森県を代表する観光資源として全国に広まり、今年、文化庁が地域に根付く食文化をPRする「100年フード」にも選ばれた。

 VISITはちのへの塚原隆市理事長は「全国からVISITはちのへを訪れる観光関係者の大半の目的は、せんべい汁か木村さん。八戸のまちづくりの功労者」と評価する。

 25日、八戸市のマチニワで開いた20周年記念イベントでは、熊谷雄一市長や武輪俊彦八戸商工会議所会頭、塚原理事長らが汁”研を激励。集まった市民にせんべい汁が振る舞われた。

 あいさつに立った木村所長は「活動当初は『せんべい汁が八戸の名物だなんて恥ずかしいからPRしないで』と言われたこともあった。20年間で一番うれしいのは、そんな市民が『八戸にはもっと楽しいことがある』と自分の周りを見つめ直し、八戸を発信するきっかけになったこと」と力を込めた。

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