年金支給額2年連続の目減り、「相対的貧困世帯」増加の懸念も…その理由と年金受給世帯がこれから取り組むべきことは?

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。11月22日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『公的年金』2年連続“目減り”の見通し その理由は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです

◆公的年金が2年連続の目減り その理由は?

来年度の「公的年金」の受給水準が目減りする見通しであることが、ニッセイ基礎研究所の試算で分かりました。目減りは2年連続です。

吉田:「公的年金」は、自営業者らが入る「国民年金」と、会社員ら向けの「厚生年金」のことですが、こちらが目減りする理由を教えてください。

塚越:来年度の年金支給額の額面は増えますが、物価や賃金の上昇率よりは上がらないので、実質的に目減りするということです。「公的年金」の金額は、経済状況の変化に対応して価値=価格を維持するため、毎年度、金額が見直されています。

今回の年金額の目減りの理由は、2004年の年金改革で導入された「マクロ経済スライド」という、年金の給付水準を調整する仕組みが発動されるためです。

この「マクロ経済スライド」は、年金財政の長期安定を目的に、年金の給付額を物価や現役世代の賃金の伸び率よりも抑制する仕組みです。日本は少子高齢化の影響で、年金受給者は増える一方で、現役世代が減ってしまいます。

そのなかで、現役世代の負担が大きくなりすぎないように厚生年金は保険料の上限を18.3%に固定して、給付水準を財源の範囲内に抑えています。そうしないと、将来世代の年金給付が大きく減少する可能性があるためです。

来年度の年金の支給額は引き上げとなる見通しです。ニッセイ基礎研究所の試算では支給額が2.6%増えます。これは年金が前年の物価上昇率を反映するので、来年度、上昇すれば2年連続で増額改定になります。とはいえ、「マクロ経済スライド」で金額を調整するので、賃金上昇率の3.0%から0.4%引き下げ調整し、年金の給付額は2.6%増にとどまることになります。簡単に言えば手取りは増えるのですが、実質的な支給率は0.4%マイナスになるということで、この実質的な支給率の目減りも2年連続となる見通しです。

吉田:本来であれば、年金額が3.0%増加するはずが、「マクロ経済スライド」の発動によって、2.6%の増加になる。つまり、この0.4%分が目減りするということですか?

塚越:そうですね。現実の物価や賃金の上昇と比較して、年金支給額が事実上少なくなるとイメージしてもらえばいいです。

◆目減りが続くようなら「相対的貧困世帯」の増加の懸念も

ユージ:わずかな目減りとはいえ、年金を受給する方は困ってしまいますよね。

塚越:年金受給層からは、当然、反発があると思うのですが、将来の年金財政や現役世代の負担を考えると、財政健全化と世代間の不公平の改善という側面があります。

ただし、年金受給世帯が「相対的貧困」、つまり社会の大多数よりも貧しい状態になる可能性が高まるという側面もあります。1年だけの目減りなら(もちろん苦しい人は多く出るが)相対的に大きな影響ではないかもしれません。これが何年も続くことになると、ますます厳しくなります。

◆現役世代・年金受給世代の“世代間対立”は得策ではない

ユージ:年金額が2年連続で目減りすること、塚越さんは、どう受け止めましたか?

塚越:「マクロ経済スライド」の発動は2004年の制度導入から2015年、2019年、2020年、そして2023年度にしか発動されていません。来年度(2024年度)も発動されるので2年連続目減りとなるわけですが、さらに続くとかなり厳しくなります。

年金受給世代は、それこそ節約と資産の活用の検討が必要ですが、こういうときこそ詐欺のリスクも高まります。そういう意味で、投資であれ何であれ、厳しいときにこそお金の扱いには慎重になる必要があると思います。

もう1つ重要なことは、現役世代も年金受給世代も、ともに不満はあります。ここで対立するのは得策ではないということです。「特定の年齢層が悪い」という思考になってしまえば、さらに問題が拡大します。

現役世代は給付額の下がる年金世代のことを思い、年金受給世代は、(受け取る年金の)金額が変わらなければ、少子化・長寿化の影響で将来の世代がさらなる負担を負うことを思う必要があるのかなと思います。非常に難しいところですが、ユージさん、いかがですか?

ユージ:これは本当に難しいです。年金を払っている現役世代の人たちが支給対象年齢になるのは20~30年先になります。そのときに現在のルールがさらに変わっている可能性があるわけですね。良い方向に変わっているといいですが、見通しが分からないですよね。なので、不安がたくさんあるなというのが今の印象です。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

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11月22日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2023年11月30日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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