『駿河湾の宝石』サクラエビ求め長い列…ただ漁獲量は減少傾向 さらに伊豆の海には「温かい海の魚が」 静岡の海に異変?

山﨑優ディレクター:「静岡市清水区の飲食店に来ている。先ほどオープンしたばかりだが、多くの人が行列を作っている」

静岡市清水区にある「ごはん屋さくら」。祝日の23日はオープン直後から大盛況で、駐車場には県外ナンバーが目立ちます。

客のお目当ては…。

神奈川県から:「サクラエビ」

浜松市から:「もちろん、サクラエビです。生サクラエビを食べに来ました」

駿河湾の宝石と呼ばれる海の幸「サクラエビ」。今月、漁が解禁となったこともあり、由比名物のサクラエビを求め、午前10時半の開店からほどなくして店内は満席状態です。

ごはん屋さくら 伊藤忠雅店主:「この時期、通年一応冷凍技術が良くなって、生(サクラエビ)として提供できるんですけど、やはり皆さん獲れたてを求めて来ている」

お店のイチオシは、生と釜揚げが両方楽しめる「桜えび定食」。かき揚げと佃煮、お吸い物にもサクラエビが入った、サクラエビ尽くしの料理です。

ごはん屋さくら 伊藤忠雅店主:「佃煮まで含めて4味(のサクラエビ)を味わってもらえれば、一通り満足してもらえると思う」

プリプリのサクラエビ。お客さんも大満足のようです。

愛知県から:「三色丼(釜揚げシラス・釜揚げサクラエビ・生サクラエビ)を食べた。あと、(サクラエビの)かき揚げとサクラエビのコロッケ。全部おいしかった。来た甲斐がある。満足です」

浜松市から:「おいしかったです。初めて食べて感動しました。ボリュームもあって」

Q.清水のサクラエビは良いですか?
A.「良いですね、おいしいです。来ます、また」

お客さんの笑顔の一方で、お店側は複雑な心境も口にします。

ごはん屋さくら 伊藤忠雅店主:「(秋漁が)始まって25日ほど経つが、若干まだ出船回数は少ない。ただ出るごとに徐々に獲れ高は増えているので、もっともっと期待できると思っている」

実は、今年の春漁初日のサクラエビの水揚げ量は、由比港と大井川港合わせて40トンだったのに対し、秋漁の初日はおよそ4トン。お店の生命線であるサクラエビの漁獲量が減っていることに不安を隠せません。

ごはん屋さくら 伊藤忠雅店主:「どうしてもサクラエビ漁は春と秋の年に2回なので、獲ったものを、次のシーズンまで使い続ける。そしてそのシーズンで獲ったものを次のシーズンに。これが(漁獲量が)少ないと、次のシーズンが始まる前にサクラエビがなくなってしまう。サクラエビがないと客も『じゃあまた今度』となってしまう」

ここ数年、漁獲量が極端に減ったり、一時的に豊漁になったりと、サクラエビをはじめ、数々の海の幸を巡って異変が起きています。こうした“これまでとは違った状況”は県内の別の場所でも起きていました。

伊豆には「温かい地域」の魚が

21日、熱海市の魚市場で競りにかけられていたのは、静岡県ではなかなか見慣れない魚「シイラ」。温かい海に生息し、ハワイでは「マヒマヒ」と呼ばれています。

熱海魚市場 宇田勝社長:「夏の魚なのに冬場にこの魚がまわったこと自体、ちょっと不思議だなと」

さらに…。

熱海魚市場 宇田勝社長:「夏場なんて何十キロってグルクンが揚がったりしてました。夏というより、つい最近まで揚がってました」

伊東市では同じく温かい海に生息する「クマノミ」の目撃情報も。なぜ県内近郊の海でこのような異変が起きているのか? 理由の一つには「海水温の上昇」があるといいます。

静岡県水産海洋技術研究所は「黒潮大蛇行の影響で温かい水が熱海や伊東に面した相模湾の方に流れ込んだのが、原因の一つではないか」としています。

漁で数多く取れ始めている南の魚。ところが…。

熱海魚市場 宇田勝社長
Q.(南の魚は)よく売れる?
A.「売れないですよ」

サクラエビの不漁や、いないはずの魚の出現など静岡の海で起きている異変。そんな状況とは裏腹に、きょうもサクラエビを求めるお客さんで賑わった静岡市清水区の由比エリア。

「サクラエビの街・由比」のブランドを保つためには、安定したサクラエビの供給が欠かせません。

サクラエビの秋漁は12月25日まで行われる予定です。

© 静岡朝日テレビ