作品の世界を表現 『月とあざらし』テーマに小川未明フェス 朗読劇や合唱披露

『月とあざらし』の朗読劇。最後に太鼓を鳴らす親あざらしは穏やかな表情で、救いを感じさせる演出に

小川未明フェスティバル2023(新潟県、上越文化会館など主催)が26日、上越市の上越文化会館大ホールで開かれた。未明の作品『月とあざらし』をテーマに、朗読劇や合唱などさまざまな表現で童話に込められた思いに迫った。

同作はわが子を見失い、悲しみながら捜す1匹の親あざらしと、それを見た月があざらしを元気づけようとする物語。月はあざらしを楽しませようと太鼓を与え、あざらしが鳴らす太鼓の音が響き話が終わる。

朗読劇は上越シニア劇団と市民有志14人が出演。劇団「STAGE D」代表の保坂正人さんが演出した。親あざらしを演じた原等子さんの感情のこもった演技や、照明による演出などで、悲しさの中に温かさを感じる物語に。上演後のインタビューで保坂さんは「救いの気持ちをこめて演出した」と演出意図を解説。原さんは「(共演した)子どもたちとのやりとりで、未明の子どもを亡くした親の悲しみ、あざらしの気持ちが分かってきた」と語った。

続いて小学生による読書感想文の表彰と発表が行われた。150人からの応募があり、大賞の山田結菜さん(国府小6年)をはじめ19人が入賞。うち8人の感想文を本人が発表した。

山田さんは劇中で月が親あざらしに「寂しいか」と問い続けたことについて、「つらい気持ちを吐き出させて寄り添い、見守り、支えたい思いがあるのでは」と語り、「悲しんでいる相手の求める答えや言葉をかけられなくても、話を十分に聞き、心に寄り添い、共にいるということを伝えたい」と述べた。

第2部では同作を題材にした新作合唱と創作フラメンコを発表。合唱は後藤丹さんが作曲、ごぶいちけいさんが作詞し、グルポ・カントールが歌った。わが子を見失った親あざらしの悲しみや悔恨を強調しながらも、祈りにも似た希望をこめていた。

グルポ・カントールが歌う新作合唱「月とあざらし」は親あざらしの悲しみや悔恨が強調された

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