運転手不足 バス深刻 茨城県内減便、人手確保へ優遇策

茨城交通の路線バス(資料写真)

茨城県内の路線バスが運転手不足で、大幅な減便を余儀なくされている。主要2社が相次いで発表した。コロナ禍が響いて人手不足が続く中、残業規制が強化される「2024年問題」により、今後さらに深刻化する恐れもある。事業者は労働条件の優遇策を広げるなど運転手確保に力を注ぐ。

■コロナ響く

「必要人員の採用見込みが立たず、来春適用の改善基準を守れない。減便せざるを得ない」

関東鉄道(土浦市)は12月20日から、路線バスを減便すると発表した。総務部取締役の鈴木篤さん(54)は苦渋の決断と強調する。

運転手の残業規制が強化される24年4月まであと約4か月。規制により、必要な人員が増える。現状の運転手の数では難しいと判断し、つくば市など8市町で平日8.5%、土日祝日6.1%、路線バスの本数を減らす。

同社の運転手は減少が続く。21年3月の567人から、今年10月末には533人と30人以上減った。

新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、路線バスの乗客が徐々に戻り、高速バスの需要も回復傾向にある。しかし、運転手が足りず、休日出勤などで対応する厳しい状況が続く。鈴木さんは「待遇と労働環境を改善しなければ、悪循環を断ち切ることはできない」と話す。

■県内250人減

茨城交通(水戸市)もコロナ禍前に比べ、運転手の数が約1割減った。コロナ禍で高速バスなどの運行が激減し、残業代や手当が減ったことで運転手の離職者が出た。担当者は「コロナの影響は大きい。転職や年齢的な理由で退職を選ぶ人もいた」と明かす。

日立市と常陸太田市で運行する路線バスを9月から約1割減便。10月には、水戸市を含む4市町を走る路線バスも5.5%減便を発表した。利用者への影響を最小限に食い止めたいものの、利便性への影響は否めない。

県バス協会によると、加盟する乗合バス運転士の数は、今年3月末時点で2184人。コロナ禍前の19年の2434人から250人減少している。

■支援を充実

バスの運転には第2種免許の取得が欠かせない。政府は年齢要件などを緩和。取得支援として、県などを経由して民間バス会社に補助金を交付する。会社側は補助金を活用しながら支援策を充実させ、人材確保に力を入れる。

関東鉄道は来春新卒採用者から、普通運転免許の取得費用を会社が負担。社員寮を用意し、引っ越し費用や入社支度金も用意する。

茨城交通は、未経験でも運転手を目指せる独自の教育プログラムや、普通免許取得後1年を経過し、「受験資格特例教習」を受講して第2種免許を取得できるように取り組む。

今年7月には、別の職業から就けるように転職準備金や、遠隔地から入社しやすいように転居費用の支援も導入した。茨城交通総務担当部長の小泉創さん(53)は「採用につながり、効果が出始めている」と手応えを示す。

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