地球から2番目に近い球状星団「NGC 6397」をESAのユークリッド宇宙望遠鏡が撮影

こちらは「さいだん座(祭壇座)」の方向約7800光年先の球状星団「NGC 6397」です。球状星団は数万~数百万個の恒星が球状に集まっている天体で、宇宙で最も古い天体のひとつとされています。

【▲ 欧州宇宙機関(ESA)のEuclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡で撮影された球状星団「NGC 6397」(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi)】

天の川銀河ではこれまでに約150個の球状星団が見つかっています。欧州宇宙機関(ESA)によると、NGC 6397はそのなかでも地球から2番目に近い球状星団なのだといいます(※)。

この画像はESAの「Euclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡」の「可視光観測装置(VIS)」と「近赤外線分光光度計(NISP)」で取得したデータをもとに作成されました。Euclidは可視光線だけでなく人の目では捉えられない赤外線の波長でも観測を行うため、画像の色はデータ取得時の波長に応じて着色されています(700nm付近を青、1.1μm付近を緑、1.7μm付近を赤で着色)。

ESAによると、NGC 6397はこれまでにも「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」で明るい中心部分が詳細に観測されたことがあるものの、暗い低質量星が分布している中心から離れた領域全体を観測しようとすると、ハッブル宇宙望遠鏡の狭い視野では長い時間がかかります。一方、Euclid宇宙望遠鏡は視野が広く、冒頭の画像は1時間の観測で取得することができたといいます。

【▲ Euclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡で撮影された球状星団「NGC 6397」の一部を拡大した画像(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi)】

2023年7月に打ち上げられたEuclid宇宙望遠鏡は、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)や暗黒物質(ダークマター)の謎に迫ることを目的に開発されました。数十億個の銀河の画像化を目指すEuclidの観測データをもとに、暗黒物質が形成したと考えられている宇宙の大規模構造に沿って分布する銀河の立体地図を作成することで、宇宙の膨張を加速させていると考えられている暗黒エネルギーについての理解も深まると期待されています。

冒頭の画像はEuclidミッションにおける初のフルカラー画像の一つとして、ESAから2023年11月7日付で公開されました。過去に起きた銀河との相互作用によって生じた可能性がある球状星団の潮汐尾(潮汐腕、tidal tail)をEuclid宇宙望遠鏡で捜索し、天の川銀河を周回する球状星団の動きを正確に計算することで、天の川銀河における暗黒物質の分布を調べることができると期待されています。

■脚注
※…地球に最も近い球状星団はさそり座(蠍座)の「M4(Messier 4)」とされていて、アメリカ航空宇宙局(NASA)によれば地球からの距離は約5500光年です。また、Baumgardt & Vasiliev (2021)はM4までの距離を約1.851キロパーセク(約6037光年)、NGC 6397までの距離を約2.521キロパーセク(約8223光年)と報告しています。

Source

  • ESA \- Euclid’s view of globular cluster NGC 6397
  • NASA \- Messier 4
  • Baumgardt & Vasiliev \- Accurate distances to Galactic globular clusters through a combination of Gaia EDR3, HST, and literature data (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)

文/sorae編集部

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