2023年11月23日(木・祝)関東大学対抗戦Aグループ 対 早稲田大学 @国立競技場
慶大は立ち上がり、島本に先制トライを許すと安恒、伊藤にもトライを許し21点をリードされる。反撃したい慶大は、山田が会場を沸かせる個人技を見せ7点を返すと、34分にはFW勝負で中山がトライを取り切り7点差と追い上げる。後半、得意のモールで富田がトライを決めるなど持ち味を発揮するも、序盤の失点が響き、100回大会を勝利で飾ることはできなかった。しかし、「魂のタックル」など慶大らしさを存分に発揮し、早慶ラグビー史に残る一戦となった。
※記事掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。
関東大学対抗戦Aグループ 第6節 慶應義塾大学 2023/11/23(木・祝) 早稲田大学 前半 後半 ロスタイム: 前半 後半 2 1 トライ(T) 4 2 2 0 コンバージョン(G) 4 1 0 0 ペナルティゴール(PG) 0 1 0 0 ドロップゴール(DG) 0 0 14 5 計 28 15 19 合計 43 前半23分 山田(T) 得点者 前半4分 島本(T)
「歴史を変える」。この1年間、全てはこの日のためにやってきた。ここまで早稲田が72勝、慶應が20勝、7つの引き分け。27,609人もの観客が、学生ラグビーの最高峰である早慶戦を見届けた。塾歌、校歌斉唱は例年テープ流す形式だったが、今年は慶應義塾大学應援指導部、早稲田大学応援部の生演奏により行われた。生演奏には心も体も響くだろう、選手らは他の試合よりも声を張り、感極まって涙する選手もいた。
塾歌斉唱で涙する選手たち
早慶戦100回目のホイッスルが鳴り、今野のキックで幕を開けた。慶大は試合冒頭から力を入れてきた「魂のタックル」で早大の攻撃を食い止める。しかし右サイドに数的優位を作られると、池本が内側に切り込み島本へボールが渡りトライ。コンバージョンも決まり7点を先制される。
6分、注目のファーストスクラムとなるも両者譲らず展開に。その後エリア取りのキック合戦となるが伊藤が仕掛け、ランで走られ矢崎までボールが渡り、オフロードで繋がれ22メートルライン深く攻め込まれる。オフフィートを取られラインアウトモールを組まれると、サックするも止められず連続トライを許した。
その後、慶大は今季多用しているアップアンドアンダーで相手のノックオンを誘いチャンスを作るも、ノックオンもありフェーズを重ねられない。一方の早大は同じ戦術が功を奏し、スクラムから敵陣で展開。久富のパスを山田がインターセプトしようとしたが、惜しくも取れず。最後は伊藤に決められてしまう。
モールを組む慶大
なんとしても攻撃の糸口を見出したい慶大は、ハーフウェイラインから今野がハイパントをあげる。そのボールが慶大に入り攻撃を展開する。山田にボールが渡ると、グラバーキックを蹴りディフェンスラインの裏へ走る。伊藤とボールを競るが、バウンドするボールは山田を味方するかのように大きく跳ね上がり、山田の元へ。島本にタックルを受けながらもトライを決めた。山田の個人技に会場は大盛り上がり、客席は多くの黒黄の旗で靡いた。コンバージョンも決まり7点を返す。
山田の個人技で会場が沸いた
これで慶大に一気に流れがきた。相手のハイパントを大野がジャンピングキャッチ。今年、ハイボールのキャッチに磨きをかけてきた大野が鍛錬の成果を発揮する。タッチキックでエリアを戻し相手ボールとなっても佐々、永山が強烈なタックルを決めターンオーバー。フェイズを重ねてのアタックが生まれ始め、ラインアウトからのドライビングモールと得意な形に持ち込む。一気にゴールライン前まで運ぶと、あとは数センチを巡ってのF W同士のぶつかり合いに。決死に押し込む慶大に対し、守る早大の構図。意地と気迫の20フェイズは、慶大に軍配。グラウディングしたのは「しんどい時に、自分が一番頑張れるように」と語っていた中山。トライの笛が鳴った瞬間、ボールを真上に投げ上げ雄叫びを上げた。
キャリーをする中山
慶大は敵陣で攻め込まれる時間も続いたが、タックルの応酬で相手を食い止めた。橋本が自身より10kgも重い岡崎を完璧に倒す好タックルも見られた。一つ慶大に惜しいタックルがありペナルティを取られ、残り時間は3分だが早大はショットではなくトライを狙ってきた。「早大の強気の判断が実った」というような上手い話を実現させてたまるかと、サックでモールを崩した後も低いタックルをどんどん刺していく。しかしもう一度ラインアウトとなり、意地でもトライを狙う早大にモールを決められ、14―28で前半を終えた。
「魂のタックル」を突き刺す慶大選手たち
後半序盤、シュモックがモールでボールの争奪に成功するなど、慶大ペースに見えた。しかし、山田のパントが少し伸び、フェアキャッチした伊藤がすぐにリスタートすると、佐藤のビックゲインにサポートについていた矢崎に走られトライを決められた。
24点差とされた慶大に火をつけたのは、またもやあの男だった。山田がハーフウェイラインからショートパントでディフェンスの頭を越すと、自分でキャッチし一気に前進。足がもつれるも三木が好カバーをし、攻撃の流れを作っていく。相手のオフサイドも誘い、タッチに出す。こだわりのラインアウトモールで、宿敵相手を圧倒できるかに注目された。中山のスローを冨永に合わせるとモールを組むかと思われたが、そのモールの後ろにいた中矢を中心としたモールが前進。グラウディングしたのは富田だった。用意してきたプレーを、完璧に再現し、19−38と反撃する。
猛虎の勢いは止まらない。池本に対して、佐々が膝下に突き刺さるタックルを決め、ボールを弾かせタッチを割らせる。佐々が渾身のガッツポーズをし、富田と抱き合った。ハイパントで競る戦術で攻め続け、敵陣でプレーする。33分には橋本のハイキックを大野がキャッチに成功したり、今野がスペースに蹴り込んだりするも、得点には結び付かず。ロスタイムに入り43分、山本の突破から山田が左サイドへキックパスをするも、大野の元には惜しくも入らず。逆に早大に最後トライを決められ、19―43となったところでノーサイドとなった。
強烈なタックルを決めた佐々
ハイボールキャッチを成功させた大野
100回目となる伝統の一戦は、早大に軍配があがった。しかし、慶大は「魂のタックル」をはじめ慶大らしさを国立の地で発揮した80分間であった。また、新チームになってからこの一戦にかけてきた想いを、出し尽くした一戦になったのではないか。試合終了後、悔し涙を流した岡の姿がそれを物語る。山田は「自分らしいSOを見せる」と語っていたが、個人技で会場を沸かせた。佐々は塾歌斉唱の時から涙し、気迫のタックル後の雄叫びが印象的だった。大野は1年間練習してきたハイボールキャッチを何度も獲得した。富田は憧れの舞台で対抗戦初トライを決め、誰かの心を動しただろう。早慶戦は終わったが、まだ対抗戦は残っている。次の帝京戦も、果敢にファイトして、大学選手権につなげてほしい。
試合後には涙を浮かべた岡主将
(記事:野上 賢太郎 写真:愛宕百華、濱島達生、重吉咲弥、ウジョンハ)
慶應義塾大学 # 氏名 身長(cm)/体重(kg) 学部学年 出身校 1 木村 亮介 173/103 環4 慶應 2 中山 大暉 176/102 環3 桐蔭学園 3 岡 広将 173/107 総4 桐蔭学園 4 シュモック オライオン 181/100 環4 Mount Albert Grammar School 5 中矢 健太 184/104 総3 大阪桐蔭 6 樋口 豪 174/98 文4 桐蔭学園 7 富田 颯樹 173/93 経4 慶應志木 8 冨永 万作 187/102 商3 仙台第三 9 橋本 弾介 169/77 法2 慶應 10 山田 響 174/82 総4 報徳学園 11 佐々 仁悟 173/80 総4 國學院久我山 12 三木 海芽 167/83 総4 徳島県立城東 13 永山 淳 188/94 総4 國學院久我山 14 大野 嵩明 177/80 法4 慶應 15 今野 椋平 183/86 環2 桐蔭学園 16 酒井 貴弘 169/98 商4 慶應 17 井上 皓介 176/106 経4 慶應 18 吉村 隆志 177/108 環3 本郷 19 浅井 勇暉 188/107 総3 仙台 20 田沼 英哲 176/94 総3 國學院久我山 21 小城 大和 168/73 商3 北嶺 22 山本 大悟 174/87 環2 常翔学園 23 伊吹 央 176/81 経2 慶應
早稲田大学 # 氏名 身長(cm)/体重(kg) 学部学年 出身校 1 山口 湧太郎 176/111 スポ2 桐蔭学園 2 佐藤 健次 177/107 スポ3 桐蔭学園 3 川﨑 太雅 171/109 スポ4 東福岡 4 栗田 文介 184/104 スポ2 千種 5 池本 大喜 186/105 文構4 早稲田実 6 安恒 直人 172/99 スポ3 福岡 7 永嶋 仁 178/96 社4 東福岡 8 松沼 寛治 177/93 スポ1 東海大大阪仰星 9 島本 陽太 167/72 スポ4 桐蔭学園 10 久富 連太郎 173/84 政経4 石見智翠館 11 矢崎 由高 180/86 スポ1 桐蔭学園 12 野中 健吾 180/96 スポ2 東海大大阪仰星 13 岡﨑 颯馬 177/90 スポ4 長崎北陽台 14 守屋 大誠 175/84 政経3 早稲田実 15 伊藤 大祐 179/89 スポ4 桐蔭学園 16 清水 健伸 178/102 スポ1 國學院久我山 17 杉本 安伊朗 176/99 スポ1 國學院久我山 18 亀山 昇太郎 176/119 スポ3 茗溪学園 19 細川 大斗 182/102 社4 早稲田実 20 中島 潤一郎 171/89 教2 桐蔭学園 21 清水 翔大 170/71 スポ3 早稲田実 22 吉岡 麟太朗 170/81 スポ3 本郷 23 福島 秀法 183/92 スポ2 修猷館
慶應義塾大学 早稲田大学 101.1kg FW平均体重 103kg 809kg FW合計体重 824kg 177.6cm FW平均身長 177.6cm
慶應義塾大学 種別 時間 IN OUT 入替 後半6分 17・井上 1・木村 交替 後半20分 22・山本 13・永山 入替 後半30分 18・吉村 3・岡 交替 後半32分 23・伊吹 11・佐々 入替 後半35分 21・小城 9・橋本 入替 後半44分 16・酒井 2・中山 入替 後半44分 19・浅井 4・シュモック 入替 後半44分 20・田沼 7・富田
早稲田大学 種別 時間 IN OUT 入替 後半23分 19・細川 7・松沼 入替 後半29分 18・亀山 3・川﨑 入替 後半34分 17・杉本 1・山口 入替 後半35分 23・福島 15・伊藤 入替 後半44分 20・中島 5・池本 入替 後半44分 16・清水健伸 6・安恒 入替 後半44分 21・清水翔大 9・島本 入替 後半44分 22・吉岡 10・久富
帝京大 明大 早大 慶大 筑波大 立大 青学大 成蹊大 勝 敗 分 勝点 帝京大 ——— ○ ○ 12/2 ○ ○ ○ ○ 6 0 0 29 明大 ● ——— 12/3 ○ ○ ○ ○ ○ 5 1 0 25 早大 ● 12/3 ——— ○ ○ ○ ○ ○ 5 1 0 24 慶大 12/2 ● ● ——— ● ○ ○ ○ 3 3 0 14 筑波大 ● ● ● ○ ——— 12/2 ○ ○ 3 3 0 15 立大 ● ● ● ● 12/2 ——— ○ ○ 2 4 0 10 青学大 ● ● ● ● ● ● ——— 12/2 0 6 0 0 成蹊大 ● ● ● ● ● ● 12/2 ——— 0 6 0 1 ◎勝ち点の多い順に順位決定を行う。(並んだ場合は勝利数で決定)