「今まで通りでは絶対に浮上しない」現役引退の南雄太、最後のクラブとなったJ3降格の大宮へ檄「生まれ変わる1つの大きなキッカケにしなければ」

大宮で現役を引退した南雄太[写真:©超ワールドサッカー]

今シーズン限りで現役を引退したGK南雄太が、27日に現役引退会見を行った。

東京ヴェルディの下部組織育ちで、静岡学園高校から柏レイソルでプロ入り。18歳でJリーグデビューを果たすと、その後はロアッソ熊本、横浜FCでプレー。2021年夏に大宮アルディージャへと期限付き移籍し、2022年からは完全移籍に切り替え。今シーズンをもって現役を引退した。

チームはJ3へと降格したが、南は最終節の東京V戦で久々に出場。J1で266試合、J2で400試合に出場し、GKとして歴代最多の666試合出場を果たし、スパイクを脱ぐこととなった。

「ゴールデンエイジ」と呼ばれる世代で、小野伸二(北海道コンサドーレ札幌)や高原直泰(沖縄SV)、遠藤保仁(ジュビロ磐田)らと同世代。U-20日本代表としては、2度のワールドユース(現:U-20ワールドカップ)に出場し、1999年大会は彼らとともに準優勝も経験した。

最後のクラブは大宮となったが、完全移籍に切り替わってすぐの2022年5月に試合中にアキレス腱を断裂。引退もよぎった中で復帰することを決め、懸命にリハビリ。するとおよそ1年後の今年6月17日のV・ファーレン長崎戦で復帰を果たした。

南はアキレス腱を断裂した際の心境を明かし、引退もよぎったものの、復帰しようと決めたとコメント。多くのメッセージをもらい、自分が復帰する姿を見せられて良かったとした。

「切った瞬間は、トレーナーと試合終わってすぐに病院に行きましたが、終わりだろうなと。引退したいとかではなく、状況的にあの時は42歳で、もうないなと思っていました」

「まさかそこから自分が…大宮が契約を延長してくれたのが全てですが、復帰できて試合にも今年出るところまで持って来れたのは、トレーナー、ドクターのお陰ですし、ケガをしてから本当に同じような境遇の人からたくさんのメッセージをいただいて、アスリートもそうですし、一般の人もそうですし、自分がリハビリしていく中で、みんながレスポンスしてくれて。自分のことのように喜んでくれたり、勇気もらえますと言ってくれて、自分がこの年齢で復帰して試合に出るところまで持って来れたというのは、凄くそういう人たちにリハビリ辛いとか、ケガが治った後もうまくいかないという方とかにちょっとでも希望というか、ちゃんとやればここまでできるんだということを思えてもらえたと思います」

「そういう話をメッセージでくれるので、ケガをして復帰して良かったな、そういう姿を見せられて、何かを感じてくれる人がいたのは凄く幸せです。そういう人に支えられてここまで来られたので、ありがたいなと感謝しています」

多くの人に支えられ1年で復帰した南。その姿を今季は3試合の出場に終わったが、見せられたことは良かったとした。

大宮では2年半の在籍だったが、最も印象に残っている試合は「最初の新潟戦ですね」と語り、大宮でのデビューとなったアルビレックス新潟戦をあげた。

「自分自身も横浜FCで少し試合に出られなく時期でもありましたし、そこでチャンスを与えてくれた大宮ですぐにピッチに立たせていただいて、試合には勝てませんでしたが、PKを止めたりもありましたし、認めてもらえた感じが試合でした」

「最初だったので印象に残っていて、今でもハッキリ覚えている試合です。それと、この間のヴェルディ戦。これは大宮というより、現役最後の試合だったので、そこは凄く印象に残っています」

大宮での最初の試合と最後の試合を挙げた南。しかし、チームは近年J2で残留争いをしていた中、ついにJ3への降格が決定した。

大きな話題となった大宮のJ3降格。過去に、J1からJ2への降格や昇格など多くを経験してきた南は、自分が去るクラブへの期待と、檄を飛ばした。

「いち選手として、今年関わった選手として凄く責任を感じています。自分は1番の年長者でしたし、苦しい状況をピッチの上でも、ピッチの外でも打破することができなかったということに強く責任を感じています」

「J3降格となってしまいましたが、長いこの先の歴史の中で、これがあったから良かったと思えなければいけないと思いますし、クラブが生まれ変わる1つの大きなキッカケになったとしていかなければと思います」

「来年以降というのは、今まで以上に変化というか、今まで通りやっていれば絶対に浮上しないです。成績が物語っていますし、ここ数年の結果が全てだと思うので、思い切って何かを、その何かはわからないですが、クラブも選手も1人1人が変わっていかなければいけないです」

「変化を恐れずに進んでいってもらえればなと。そこにファン・サポーターが期待している結果をつけていかなければいけないと思います」

「本当に大変な道のりだと思いますし、簡単ではないと思うので、痛みは大分伴うと思いますが、長い目で見てこれがクラブが変わるキッカケになってくれれば良いなと思っています」

過去10年J1に残留し続け、クラブ最高位の5位も記録した時の大宮はもうそこにはない。Jリーグ最下層のカテゴリーからの出発は正にリスタート。チームを去る南の言葉をクラブや残る選手がどう受け止め、改めていくのか来シーズンに注目だ。

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