<レスリング>ドイツ単独修行の日下尚(男子グレコローマン77kg級=三恵海運)が帰国

10月中旬からドイツへ遠征していた男子グレコローマン77kg級の日下尚(三恵海運)が11月27日、修行を終えて羽田空港に帰国した。現地では、歴史のあるプロリーグの「ブンデスリーガ」のクラブに所属して練習と試合出場をこなし、時にグレコローマンの強いハンガリーにも向かい、世界トップクラスの選手と練習を積んだ(関連記事)。

▲約1ヶ月半にわたるドイツ単独遠征を終えて帰国した日下尚

約1ヵ月半ぶりに日本の地に降り立った日下は「人に恵まれたことを感じました。待遇がすばらしく、多くの人から面倒を見てもらいました」と第一声。異国での単独修行となれば戸惑うことも多いと思われるが、多くの人からの“もてなし”を受け、練習やそれを支える生活にはさほど不自由しなかったと言う。ときにハンガリーへ遠征したが、地元の人が車を運転してくれ、練習に集中できた。

「結局、松本先生(慎吾=日体大監督)が外国の選手をあたたかく受け入れ、そのお返しでやっていただいたわけです。感謝の気持ちでいっぱいです」と話し、こうした国際交流の重要性を痛感。「今はパリ・オリンピックを目指して頑張るだけですが、それと並行して、こうした交流を大事にし、後に続く人に還元できるようにしなければならないと思いました。人脈もできましたし、ぜひつなげていきたい。それが自分の使命、役目と感じました」と、強化とは別の面で感じることが多い遠征だったことを強調した。

「ブンデスリーガ」では、毎週末に行われる試合で全勝をマークした。世界トップレベルの選手はいなかったものの、世界3位の選手として常に注目され、熱狂に包まれた中で試合をこなし、日本ではできない経験を積んだ。ハンガリーではオリンピック王者や昨年の世界2位の選手などとも練習し、有意義な遠征となった。

今後は、対外国選手の対策に力を入れ、来年1月の「ザグレブ・オープン」(ランキング大会=クロアチア)や4月のアジア選手権(キルギス)の出場を視野に入れる。世界選手権で3位になったとはいえ、チャンピオンのアクジョル・マフムドフ(キルギス)、2位のサナン・スレイマノフ(アゼルバイジャン)、同じ3位のマルハス・アモヤン(アルメニア)は、過去敗れたことのある相手。3位から先の道は険しい。

オリンピックでは上下の非オリンピック階級から強豪が参入してくるのが普通。ますます厳しい闘いが待ち受けているが、「外国の選手との試合の中で、いろんな経験をしたい。トライアル・アンド・エラー(試行錯誤)の精神で、最終的にパリで金メダルを取れるように頑張っていきたい」と気合十分。「自分の敵は自分だと思います。いかに練習で追い込めるかが、パリの結果につながると思っています。自分との闘いに勝ち抜いて、パリで花を咲かせたい」と話した。

▲今年の世界選手権・男子グレコローマン77kg級表彰式。日下(右端)にとっては、表彰台の全選手がリベンジしなければならない相手だ

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