【フィリピン】マニラ湾埋立で税収7兆円[経済] パサイ市試算、経済効果大きく

パサイ市は埋め立て開発事業で長期の税収が見込めると試算している=8月、パサイ市(NNA撮影)

フィリピンのマニラ首都圏パサイ市はマニラ湾の埋め立て開発事業が実現した場合の税収効果が2兆5,400億ペソ(約6兆8,000億円)に上るとの試算を明らかにした。マルコス政権は埋め立て開発を全て凍結しているが、首都圏の余剰土地が減る中で経済効果が大きい不動産や商業施設の開発が見込まれる。下院の委員会でも開発再開を求める声が上がっており、政府の方針転換が待たれる。

パサイ市のピーター・マンザノ行政官が先週、埋め立て開発事業の経済的影響に関する下院の公聴会で明らかにした。新たな事業が完了した場合、市の不動産税や事業税が増え今後35年間で1兆1,500億ペソの税収が見込めると試算した。中央政府にも1兆3,900億ペソの税収効果が期待できると説明した。

パサイ市は首都圏のほかの自治体と比べても面積が狭く、土地の埋め立てによる開発事業の重要性が高まっている。既に埋め立て開発した面積は約1,000ヘクタールに上る。

新たに計画されている「パサイ・エコシティー沿岸開発事業」について、マンザノ氏は土地が少なくとも4メートル盛り土され、洪水や高潮、津波を防御できると主張した。100万人以上の雇用創出が見込めるとして、開発再開の利点を強調した。

同事業の開発面積は600ヘクタール超に上り、住宅や商業施設の開発が計画されている。大手財閥SMグループなどと共同で開発する。SMグループが運営する国内最大規模の複合商業施設「モール・オブ・アジア(MOA)」も初期の埋め立て開発事業で建設した。

首都圏では経済発展に伴って商業ビルが乱立し、新規に開発できる土地が少なくなっている。既存の土地を活用する場合、土地の契約問題が横たわり、拡張することも難しい。大規模な不動産や商業施設を開発する場合、埋め立て地ではこうした問題が少なくて済む。

政府は8月、マニラ湾の埋め立て開発事業22件の凍結を決めた。持続可能な開発や環境問題、土地の活用の観点から調査する方針を示したが、進捗(しんちょく)は明らかになっていない。開発事業はパサイ市などに集中している。

下院の歳入委員会でも事業再開を求める声が強くなっている。ジョーイ・サルセダ委員長は先月、埋め立て地の開発事業を円滑に進めるため、財政的な枠組みを策定することを明らかにした。埋め立て地の20%以上を低価格住宅の建設に充てることなどを検討している。土地の売却だけで23兆ペソの収入が見込めると指摘した。

一方で生態系を崩す恐れがあることから慎重論もある。ポール・ダザ下院議員は先週「環境天然資源省が付与した環境適合証(ECC)は5年前のものもある。全ての事業を再開することはせず、段階を踏んでいくことが望ましい」と話した。

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