「収入も需要もあるレモン」茶どころ静岡・牧之原でレモンづくりが盛んに…「お茶が安くて」耕作放棄地を減らし 持続的な生産へ【SDGs】

茶どころ、静岡県の牧之原で今、レモンを作る農家が増えています。背景にあるのは消費者のお茶離れ。放置される茶畑の問題を解消しつつ、持続的に生産できる新たな名物をつくろうという動きが進んでいます。

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<篠原大和記者>
「牧之原市では今、レモンの生産が盛んです。収穫が行われているここは、もともと茶畑があった場所でした」

収穫の時期を迎えたレモン。全国トップクラスの日照時間と冬でも温暖な気候がおいしいレモンを育てます。

10年ほど前、牧之原市でレモンをつくっている人は数えるほどしかいませんでしたが、現在は約30人が生産に取り組んでいます。その多くが、現役の茶農家です。

<5年前からレモンをつくる 井根和之さん(63)>
「お茶が安くて安くて。お茶を生産しても残るお金がない状態。違う作物を考えたときに、そこそこ収入も需要もあるレモンというアドバイスがあった。元気なうちはやっていきたいと思います」

消費者のお茶離れなどで価格が下がるなか、農業を続けていきたいという気持ちから、レモンづくりを始めました。井根さんのレモンは、静岡県内のスーパー20店舗以上で販売されています。

<農家>
「(収穫まで)まだ置いたほうがいい?」

<多々良大吾さん>
「ちょっと様子を見たほうがいいと思います」

<農家>
「サイズ的にな」

<多々良大吾さん>
「モノは大丈夫だと思うので」

農家にレモンづくりのアドバイスをする肥料店の多々良さんです。レモンは「牧之原の茶農家」と相性がいい作物だといいます。

<タタラ商店 多々良大吾さん>
「レモンは急斜面でも生育することができます。いま牧之原市でも山の上の耕作放棄地が多くなっているが、(レモンは)そのまま転作できるメリットがある」

牧之原市では、茶園の面積が5年間で4分の3にまで減りました。荒れた農地が少しずつレモン畑に変わっています。

<呼びかけ>
「牧之原市、波乗りレモンです。いかがですか」

牧之原市をあげて、地元のレモンをPRしようと2023年の夏「波乗りレモン」というブランド名を決めました。サーフィンが盛んな土地柄から名付けました。

<牧之原市地域おこし協力隊 堀内虹弥さん>
「波に乗って、東京、首都圏、関東の人にたくさん届けていきたいという思いがあります」

<牧之原市 杉本基久雄市長>
「レモンを栽培したいという農家が40人ぐらい集まっているので、もっともっと挑戦していただくように支援していきます」

地元の飲食店「古民家カフェ とこ十和」では「波乗りレモン」を使った新メニュー作りも進んでいます。

<とこ十和 山本功子さん>
「牧之原産のレモンを使って、生地に練り込んだレモンのパウンドケーキを作りました。新鮮なレモンが手に入りやすくなったので、とてもいい香りのものができた」

雑草や害虫の発生など、何かとトラブルにつながる「耕作放棄地」を減らし、収入も得られるレモンの栽培。お茶のまちでSDGsにかなった新たな名産が生まれようとしています。

レモンは、お茶と収穫などの時期が被らないので、お茶との両立もできる作物です。

傾斜が急な山などにある畑では、ミカンなども育てられますが、肥料店の多々良さんによりますと、レモンはミカンとくらべて、糖度の管理や収穫後の貯蔵が必要がないため、生産者の負担が比較的少ないそうです。

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