最大17万人避難と試算 東海第2原発 放射性物質拡散予測 茨城県公表【更新】

日本原子力発電東海第2原発(奥左)の周辺には多くの住宅が密集する=東海村(2021年8月撮影)

茨城県は28日、東海村の日本原子力発電(原電)東海第2原発の事故発生時、放射性物質がどのように拡散するのかを示す予測を公表した。災害による炉心の損傷を想定し、24時間後の拡散範囲を事故状況や気象条件ごとに計22通り分析。避難や一時移転の対象となる住民は最大で約17万人と試算した。

県によると、自治体が放射性物質の拡散範囲を独自に予測し、公表するのは全国で初めてという。

予測は、事故時に放射性物質を取り除くフィルター付きベントなど安全対策設備が動作した場合と、設備が全て喪失した場合を分けた。気象条件は、①同じ方向に風が長時間吹く②加えて雨が長時間降る③わずかな風が続く-状況を風向きごとに分析した。

最大17万人が避難対象となるのは、安全対策が機能せず、②の気象条件で風が南西に吹いた場合。事故時に即時避難となる半径5キロ圏内の東海村などに加え、ひたちなか市、那珂市が一時移転となった。

拡散予測が最長・最大面積となるのは、風向きが北西、いずれも②の気象条件で、距離30キロ、面積110平方キロとなった。

ベントが動作した場合はどの気象条件でも、住民避難が必要となる毎時20マイクロシーベルト以上の放射性物質の広がりはなく、一時移転の対象地域はないと試算した。

東海第2原発は、2011年の東日本大震災で被災し、運転を停止している。半径30キロ圏には水戸市を含む14市町村があり、全国で最多の91万人以上が住む。水戸地裁は21年3月、避難計画の不備を理由に再稼働を認めないとする判決を出した。再稼働には予測を反映した避難計画の策定が不可欠となる。

予測は14市町村が策定する広域避難計画の実効性につなげるため、県が原電に求めて作成した。

県は「安全対策設備が一斉に機能喪失する事態となることは考えにくい」と強調。「設備が有効に機能すれば放出される事態にはならない」と説明した。

県はこれまでに予測の妥当性を検証。専門家による第三者委員会も「おおむね妥当」と評価した。周辺市町村長でつくる会議で「混乱を招く」と懸念が示されたことで、県は公表を見送っていたが、発表資料を加えるなどした上で了解を得た。

予測については、県が同日、ホームページで公開した。

■「実効性ある避難計画の目安に」茨城県知事

東海第2原発の重大事故を想定した放射性物質拡散予測の公表を受け、大井川和彦知事は28日の定例記者会見で、「実効性ある避難計画(策定)の目安になる」と述べ、予測を活用することで計画策定が前進するとの考えを示した。

予測は、安全対策が喪失して炉心損傷した場合、避難対象が最大約17万人と試算するなど、計22通りを示した。大井川知事は「(各想定に)対応できるような避難計画を準備すれば、実効性が担保されたといえることになる」と話した。

一方、事故時に安全対策が機能する場合は、半径5キロ圏外で避難の必要性が生じないという予測を受け、「新規制基準による安全対策で考えると、17万人の避難が想定される事故というのはほぼ想定できない」とした。

広域避難計画が義務付けられる14市町村のうち、策定済みは現時点で5市町にとどまる。予測の公表により、「(避難に)必要な車両数、検査するための検問施設数など、まずは県自らが体制を整え、各市町村にも必要な調整を行う」と話し、県が必要な体制を示した上で、市町村の実効性ある避難計画の策定を促す考えを示した。

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