【特集】高松市サンポート地区で遊歩道化へ社会実験 近隣住民から不安の声「子どもたちの事故が心配」

体育館や駅ビル、大学など新たな施設の建設が進む高松市のサンポート地区を「プロムナード化」、いわゆる「遊歩道化」するための2回目の社会実験が行われています。
目的は「にぎわいづくり」ですが、近隣住民からは懸念する声があがっています。

11月17日に高松市のサンポート地区で始まった社会実験。JR高松駅の北側の道路は車両を通行止めに……建設中の県立アリーナの北側は片側2車線のうち1車線が規制されています。

周辺の道路の混雑状況や、車がどのルートに迂回するのかを調べることが目的で、11月30日まで2週間にわたって行われています。

県が示したイメージでは、JR高松駅の北側と県立アリーナの北側は車道がなくなり「遊歩道」になっています。

車中心の空間から歩行者中心の空間にして、にぎわいづくりにつなげようという計画で、香川県は高松市民へのアンケートで9割近くが「遊歩道化」に好意的な回答をしたと発表しています。

しかしサンポート地区の隣、「浜ノ町」の住民からは不安の声が上がっています。

(高松市浜ノ町に住む/大池翼さん)
「封鎖された道の西側に駐車場だったり新しい大学ができますので、その車が迂回して、浜ノ町内に、住宅街の中に入ってきてしまうので、子どもたちの事故が心配だなと」

大池翼さんは3年前から浜ノ町のマンションに住んでいます。心配しているのは、周辺の道路が迂回路となって多くの車が通り抜けることです。

「遊歩道化」に伴い、車が通れなくなる道路の周辺には、JR四国本社や国の出先機関が入る合同庁舎があります。

また2024年3月に開業する駅ビル、2025年に開設予定の徳島文理大学のキャンパスなど多くの人が出入りする施設が続々とできる予定です。

(高松市浜ノ町に住む/大池翼さん)
「地域の方は『どこが危険だ』とか『どこが狭い』とか理解しながら通行しているんですけども、駅ビルの駐車場がこちら側にあるということで、県外の方であったり、あまりこの辺りに来ない方が車で来るんじゃないか」

また、浜ノ町に住む多くの子どもは近くの新番丁小学校に歩いて通っています。

通学路を走る車が多くなれば子どもが事故に遭うリスクが高くなるのではないかと大池さんは懸念しています。

2023年8月に行われた1回目の社会実験では車の渋滞も確認されました。

(記者リポート)
「プロムナード化の影響を受けているのがこちらの交差点です。通行止めの道を避けようと南に回り込んだり、アリーナ北側に回り込んだりするために車が多くなっています」

サンポート地区の多目的広場西交差点は、駅の北側の道路が遊歩道化された場合、浜ノ町に住む人が駅の南側に向かうにはこの交差点を右折して高架下をくぐるか、左折してアリーナの北側から回り込むことになります。

(高松市浜ノ町に住む/大池翼さん)
「さらにアリーナの北側の道は車線も減りますし、交通量がこちらに集中しますので向かう車だけでなく向こうから来る車も増えるので、渋滞が起きるんじゃないかなと」

10月に開かれたプロムナード化の検討会議でも「渋滞」について報告されました。それでも会議で確認されたのは、社会実験で行った形を「原案」として近隣住民と合意形成を図る方針でした。

(プロムナード化検討会議 委員長/日本大学 中村英夫 教授)
「交通問題のチェックについても大きな問題はない、大きな懸念はないということが示されたんじゃないか」

大きな問題はないとする根拠は「通過交通」です。

(香川県 都市計画課/西本大介 課長補佐)
「サンポートの中の道路は、サンポートに立ち寄らない『通過交通』が約5割。それをいかに減少させていくかが大事なことだと考えている」

県はサンポート地区の道路を規制した場合、ここを通過点として通っている車の量「通過交通」を減らせると考えています。その結果、大型施設が完成しても、全体の車の量を抑え込めるとしています。

それでも10月に開かれた住民説明会では、浜ノ町の住民から不安や反対の声が相次いだそうです。

(高松市浜ノ町に住む/大池翼さん)
「まだ駅ビルもできていませんし、アリーナも文理大学もできていない状態での交通量調査でどこまで見えてくるのかっていう疑問はありますし、本来であればそれらの施設が完成してしばらく運用した上で交通量調査を再度していただきプロムナードをどのようにしたらうまくいくのか検討していただきたい」

検討会議の副委員長を務める香川大学の西成典久教授が、この事業を進める上で重要だとするのは、「にぎわいづくり以外のメリット」を近隣住民に感じてもらうことです。

(香川大学/西成典久 教授)
「例えば夜間の通過交通がなくなって、非常に静かな住環境に変わる可能性もありますし、車道が通行止めになったことで観光客以外の地元住民が得られるメリットを認識しながら、行政も住民も共に同じ方向を向いていくことがとても重要」

香川県は12月25日まで「遊歩道化」について市民から意見を募るパブリックコメントを実施しています。

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