日本の世界遺産【17】日本の信仰と世界の芸術に影響を与えた名峰「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」

日本を象徴する名峰「富士山」。冬の空気が澄み渡った日に富士山を眺めると、その美しい姿に魅了されます。富士山は古くから信仰を集め、絵画や詩歌といった多数のアート作品の題材にもなっています。今回は、そんな「富士山-信仰の対象と芸術の源泉-」にフォーカス。概要や見どころのほか、行き方、周辺の人気スポット・グルメもわかりやすくご紹介します。

古来、死と再生を象徴する登拝が行われてきた「富士山-信仰の対象と芸術の源泉-」

東京の南西約100kmに位置する「富士山」は、標高3,776mの独立成層火山です。左右対称の円錐形の山容と、断続的な火山活動により、人々に畏怖の念を抱かせ、何世紀にも渡り、死と再生を象徴する登拝が行われてきました。

古くから、巡礼者は山麓の浅間神社の境内から出発し、富士山の頂上にたどり着くと「お鉢巡り」という修行を行ってきたのです。室町時代には、「富士講」と呼ばれる富士信仰が生まれ、江戸時代に最も多くの巡礼者がいたとされています。

そして、18世紀に入ると巡礼が大衆化。巡礼者を支援する組織が作られ、登山道や山小屋が整備されると同時に、神社や仏教施設が建てられました。さらに、溶岩流で形成された火山地形が神聖な場所として崇拝されるようになったり、湖沼や湧水地は巡礼者が身を清める「水垢離」として使われるようになったりしたのです。

また、富士山のアートへの影響力は絶大! 17世紀から19世紀にかけて絵画をはじめ、和歌や庭園、工芸品など多数の作品のモチーフに。なかでも葛飾北斎の浮世絵『富嶽三十六景』は、富士山の存在を世界中に広め、西洋芸術に多大な影響を及ぼしました。

このように信仰の対象と芸術の源泉として知られる富士山は、顕著な普遍的価値があると評価され、2013年に世界文化遺産に登録されました。

富士山の見どころは?

©️MADSOLAR / Shutterstock.com

富士山には「一度も登らぬ馬鹿に二度登る馬鹿」 という言葉があります。諸説ありますが、この言葉には、“富士山は一度は登らなければいけない有名な山ですが、二度登るのは大変”という意味が込められているとか。

この言葉の真意を確かめるためにも、富士山を登って訪れたいのが山頂の「信仰遺跡群」です。富士山本宮浅間大社奥宮、浅間大社東北奥宮(久須志神社)、金明水、銀明水といった宗教施設があります。

富士山頂上浅間大社奥宮は、表口(富士宮口)から登りつめた頂上に鎮座し、浅間大神が主祭神として祀られています。7〜8月の開山期には、神職の方が国家安泰、氏子・崇敬者・登拝者の安全を祈念するほか、お札やお守りなどの授与も行っています。

ご来光を拝んだり、夜景を眺めながら、日本一の山の頂上からしか見られない絶景を堪能してくださいね。頂上のわずかな落差によって湧く御霊水である金明水、銀明水もぜひチェックを!

また、富士山の南西麓に位置する、高さ20m・幅150mの「白糸ノ滝」も一見の価値ありです。この滝は、富士山の雪解け水が、新富士火山層と古富士火山層の境の絶壁から流れ出しているのが特徴で、その名の通り、湾曲した絶壁から大小数百の滝が流れ落ちていて、いくつもの絹糸をさらしているように見えます。その女性的な美しい流れに見とれてしまいますよ。バスで行けて登山する必要がないため、体力に自信がなくても気軽に訪れることができるのも魅力です。

富士山の絶景が望める「河口湖」もおすすめのスポット。観光の中心地区である船津浜の背後には富士山パノラマロープウェイがあり、富士山が間近に見える展望園地「天上山公園」に行くことができます。天上山の中腹には10万本のアジサイも! 7~8月にかけて見頃を迎え、富士山とアジサイという素晴らしいコラボレーションを楽しめますよ。

さらに、富士山を背景に冬の澄み切った夜空を鮮やかに彩る「河口湖冬花火」も! 例年1月中旬〜2月中旬の土日および富士山の日に開催しています。2024年は、1月20日(土)~2月18日(日)の土・日曜日および2月23日(金)、午後8時~8時20分に開催予定です。

富士山山頂(信仰遺跡群)・白糸ノ滝・河口湖への行き方

今回、見どころとしてご紹介した3カ所への行き方は下記の通りです。

富士山山頂(信仰遺跡群)

JR東海道線「三島駅」「新富士駅」「富士駅」、JR身延線「富士宮駅」から登山バス(路線バス)で富士宮口五合目へ、頂上までの所要時間は各自異なる

富士山山頂(信仰遺跡群)

住所:静岡県富士宮市粟倉地先

公式サイト:https://fujisan-climb.jp/

白糸ノ滝

JR「富士宮駅」から富士急静岡バスで約30分、「白糸の滝」下車

白糸ノ滝

住所:静岡県富士宮市上井出273-1

電話:0544-27-5240(富士宮市観光協会)

公式サイト:http://www.city.fujinomiya.lg.jp/kankou/llti2b00000018ez.html

河口湖

富士急行線「河口湖駅」から徒歩約10分

河口湖

住所:山梨県南都留郡富士河口湖町

電話:0555-28-5177 (富士河口湖町観光連盟)

公式サイト:https://fujisan.ne.jp/

富士山に関する豊富な資料や映像が見られる「ふじさんミュージアム」

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「ふじさんミュージアム」は、富士山信仰に関する資料をメインに、富士吉田市の構成資産や、富士山とともに歩んできた同市の歴史、民族、産業などを展示しています。2023年4月にオープンした「ふじさんVRシアター」は、床面に高精細な画像で富士山が映し出され、富士山の息を呑むような美しさをとことん堪能できますよ。

そのほか、江戸時代の富士登山の様子などの映像が見られる「御師町にぎわいシアター」、富士山の伝説を紹介するアニメーション「富士山昔ばなし」も! 富士山のことを知りたい! という方はぜひ訪れてみてくださいね。

また、富士山周辺の地域には多くのグルメがありますが、なかでも一度は味わいたいのが「吉田のうどん」です。富士吉田の名物のひとつで、コシと歯ごたえが強いうどんが特徴的。このうどんは噛めば噛むほど、出汁や素材の旨みがあふれ出し、くせになりますよ。

麺や出汁のおいしさを楽しめるように、シンプルな味つけで提供されることが多く、キャベツや馬肉がトッピングされているのが一般的です。「すりだね」と呼ばれるこだわりの薬味を振って、味変するのもおすすめ。

ふじさんミュージアム

住所:山梨県富士吉田市上吉田東7-27-1

電話:0555-24-2411

開館時間:9:30~17:00

休館日:火曜日、年末年始(12/28‐1/3)

入館料:(御師旧外川家住宅との共通入館券)大人400円、小中高生200円、(富士山レーダードーム館御師旧外川家住宅との共通入館券)大人800円、小中高生450円

公式サイト:https://www.fy-museum.jp/

[参考]

富士山世界文化遺産協議会

山梨県立富士山世界遺産センター

富士宮市

一般社団法人富士河口湖町観光連盟

一般財団法人 ふじよしだ観光振興サービス

[Photos by Shutterstock.com]

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