朝ドラ「ブギウギ」脚本・足立紳さんら招き読書会、創作裏話も 10~80代の12人が参加

ゲストの足立さん夫妻(中央奥)を囲み交流を楽しむ参加者ら=19日、埼玉県深谷市普済寺の岡部公民館

 NHKで放送中の連続テレビ小説「ブギウギ」を手がける脚本家・映画監督の足立紳さん(51)と、妻でプロデューサーの晃子さん(47)をゲストに招いた読書会が19日、埼玉県深谷市の岡部公民館で開かれた。足立さんの著書「弱虫日記」を課題本に、10~80代までの幅広い年代12人が出席。夫妻は創作の舞台裏などを明かして交流、飾らない温かな人柄で参加者らを魅了した。

 今年7月、映画「雑魚(ざこ)どもよ、大志を抱け!」が市内の「深谷シネマ」で上映。監督の足立さんは舞台あいさつで訪れた。読書会メンバーの同シネマ関係者が恐縮しながら「ダメ元で、恐る恐る」ゲスト参加を願い出たところ、足立さんは「書いた本の感想をじかに聞けるのはありがたい」と快諾。原作を課題本に、初プロデューサーを務めた妻晃子さんの同行も実現した。

 「弱虫日記」は、昭和後期に鳥取県で子ども時代を過ごした足立さんの実体験をベースに、友人関係や家庭の事情に悩み、もがきながらも前進する少年たちを描いた一冊。足立さんは「読書嫌いの自分がこのような会に呼んでいただけるなんて。いかに本を読んでいないかが皆さんにバレそうで、どきどきしてます」とあいさつ。会場を笑いとアットホームな雰囲気で包んだ。

 参加者らの感想は「子育てを思い出し涙が出た」「仲間同士の絆がうらやましい」などさまざま。主人公の少年は葛藤の中で「でも、自分で自分を好きになるって…大変だよ」と語る。この言葉には世代を超えた共感の声が上がり、メモを取りながら耳を傾けていた足立さん夫妻もうなずいた。

 話題を集める「ブギウギ」への質問にも応えた。「オファーはうれしかったが、これまで元気で明るい『朝ドラ』的主人公と正反対の人物を描いてきた自分でいいのか自信がなかった」と足立さん。晃子さんは「絶対にやった方がいい」と励ましつつ後押ししたという。現在執筆中の脚本には「チャーミングな主演の趣里さんがさらに輝くようなアイデアを次々に盛り込んでいる」と話した。

 初めて参加した市内の中学3年生、増野凪(なぎ)さん(15)は「本も面白かったけれど、何より人それぞれの感想が楽しい。憧れていた演劇界の話も聞くことができ、高校受験を頑張ろうと意欲が湧いてきた」と充実の表情。夫妻は「細部にわたっての、作品の深い読み込みに感激した。大好きな映画館があるこのまちを、必ずまた訪れたい」と笑顔で声を合わせた。

足立紳さん(右)と晃子さん夫妻。結婚20年、晃子さんは、紳さんを叱咤(しった)激励しながら支え、作品のモデルにもなっている

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