内田雄馬、3rdアルバム『Y』全曲レビュー! 挑戦を続けた日々の集大成を詰め込んだ、今の自身を象徴する1枚に

11月29日(水)に、声優、アーティストとして活動している内田雄馬の3rdアルバム『Y』がリリースされる。
2023年も前年に続き多数のアニメ作品にメインキャストとして出演し、現在放送中の『シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~』(サンラク / 陽務楽郎役)や『MFゴースト』(片桐夏向役)といったアニメでは主演も担当。さらなる飛躍の1年となった。
また、アーティスト活動の面でも充実の1年となったことは言うまでもないだろう。5月からは6都市9公演におよぶ全国ツアー「Keep in Step with」を開催しただけではなく、6ヶ月連続でのデジタルリリースもスタート。ライブ・制作それぞれの中での挑戦を通じて、得るものも大きかったはずだ。

そんな1年を締めくくる形でのリリースとなったのが、この『Y』である。本作はリード曲「Joyful」をはじめとする前述の6ヶ月連続デジタルリリース楽曲や「Salt & Sugar」「Hope」といったTVアニメ主題歌など、全13曲から構成。CD+BD盤のBlu-rayにはMVやメイキング、「Jouful」「DangeR」のDance Shotも収録している。さらに完全生産限定盤には “内田雄馬の今”を撮り下ろした80ページにもおよぶ豪華写真集「&JOY」や、「Salt & Sugar」でも話題を呼んだ「内田雄馬化カード(内田雄馬の音楽を聴いて興味を持ってもらう=内田雄馬化するためのカード)」も付属しており、様々な意味でファン必携のアイテムとなった。

ここからは、そんな本作収録の全13曲の全曲レビューをお届け。内田の多彩な表現やそこに込められた想いに、各曲を深掘りしながら迫っていこう。

M1「I’m here」
冒頭ではエフェクトがかけられやや丸みを帯びたサウンドが徐々にクリアになり、夜明けを感じさせたところで内田の歌声が響きはじめる、ややスローなテンポのEDM。その歌声には内田ならではの爽やかさもしっかり存在する一方で、若干ザラつきを感じるほどに力も込められた印象も。それはやや重さを感じさせるトラックにマッチするのと同時に、「変わることなく変わってくから」のフレーズに象徴されるように、改めてファンの先頭に立つ決意や覚悟も込められたようにも感じられる。前作からの2年間で様々な挑戦に身を投じてきた彼による、固い決意表明の込められたナンバーだ。

M2「Shot」

ここから数曲は、内田らしい明るくダンサブルなデジタルポップの楽曲が続く。まず、Tリーグの2023-2024シーズン公認テーマソングとなっているこの曲は、歌詞や歌声がもつメッセージ性も相まって、前向きさと高揚感を与えてくれる1曲に。それは卓球をはじめとするスポーツ選手全般にズバリ刺さるものでもあり、日々夢に向かって努力を続ける全ての人たちを応援するようでもある。また、サビを中心に随所に散りばめられた「Shot!」のフレーズは、ライブにおいてもその会場に高揚感と一体感を与えてくれることだろう。

M3「Joyful」

サビのラストに登場する「分かち合っていこう Joyful」のフレーズが、アーティスト・内田雄馬の姿勢と見事にリンクする、本作のリードトラックでもあるハッピーチューン。イントロから響き渡るクラップも、「一緒に音楽を楽しもうぜ!」と呼びかけている姿さえ想起させる。だからこそ、冒頭で歌われる「本音は結構キツかった」の言葉は衝撃的でさえあるのではないだろうか。ただ、それを言葉にできるのも、その渦中を抜け出すことができたからだろう。ここまでの紆余曲折の中で抱いた想いをまず率直に歌うことで、ファンとの絆をさらに強固にし、最後にはより明るく響く曲へと見事に昇華させてみせた。

M4「Congrats!!」

自らを祝うような形で昨年、自身の誕生日当日にシングル曲としてリリースされたこの曲は、本作においてはM3からの流れもあって、奇跡的に出会えて楽しい時間を過ごす自分とファンたちを祝福するような存在にも感じられる。それを「おめでとう!」と言い合おうぜ――と言わんばかりの自信満々さも頼もしい。また、2-Bメロではジャングルの要素がアクセントになっていたりと、ただ底抜けに明るいだけで突っ走るわけではない部分もポイント。何度も繰り返し登場する「Co-Co-Congrats!!」のフレーズも非常に耳馴染みが良く、いつの間にかついつい口ずさんでしまうほどだ。

M5「DangeR」

ライブでいうなれば、この曲が魅せる・聴かせるゾーンの入り口となるのだろうか。直前までのムードとはうって変わって、ハードなEDMの登場である。そのハードなトラックにある程度身を委ねながら、拍子にカチカチッと乗りすぎずに、グルーヴィーさを生み出しながら乗りこなしていく内田。1-Bメロのフロウをはじめ、吐息成分多めに歌って少々セクシーさもにじませるなど、タイトルどおり少々危険な香りも醸し出しながら、スタイリッシュなボーカルで楽曲を彩り、リスナーの心を先ほどまでとは違ったアングルから惹きつけていく。

M6「Hope」

現在放送中のTVアニメ『デッドマウント・デスプレイ』第2クールのEDテーマに起用されているこの曲は、アニメ本編のシビアな世界観に直結する、非常にハードなデジタルロック。苛烈な運命の中であがくように、荒々しささえ感じられるアプローチをもって、楽曲の世界を表現していく。その中で自身の心の内を開放しているようでもある歌声もまた、心に刺さるものではないだろうか。

M7「iDea」
この曲は「Take off on Friday」のフレーズが象徴するように、全力で走ってきた後に一息ついてリラックスして、ふっと思考を巡らせた瞬間やそのとき浮かんだ想いを描いた、ほどよく肩の力を抜きつつ聴ける・歌えるR&B調のナンバー。単体としてもチルしたいときのおともにピッタリであるうえに、アルバムにおいてはハードな2曲を受けて場面を切り替えるための役割も果たす、中盤の重要曲と言っても過言ではない1曲だ。

M8「Salt & Sugar」

後半戦の幕開けを飾るのは、内田雄馬“らしさ”あふれるダンス・ポップ。メロラップ部分の軽快さなども通じて、再び心をアゲてくれる。この曲のテーマとなっているのは、EDを飾るアニメ『THE MARGINAL SERVICE』の主題に沿った“多様性”という、文字面だけで捉えるとやや重めのもの。だがそれを正反対の“味”を例として用いながら、内田の明るく爽やかなボーカルに乗せて、押し付けがましさなく描かれている。頑なになりすぎず、だけど互いに想いを伝えあった先にあるのが、この曲のような明るいムードの中の「Tastes so good」なのだろう。そんなヒントや希望も与えてくれる1曲にも感じられた。

M9「ものたんない」

主にデジタルサウンドを用いたダンサブルなこの曲は、「ものたんない日常」を感じている者の共感を呼ぶのと同時に、叱咤するようなメッセージも込められたナンバーに仕上がった。しかもその叱咤にはM8同様に説教臭さはなく、音とリズムに軽やかな歌声を乗せて、自然と動き出せるように楽しそうに手を引っ張ってくれているようなイメージが浮かぶ。ぜひこの曲に勇気をもらって、自分の中にある「ものたんない」何かを打破する一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

M10「旅路」
初めて自ら作詞・作曲を手掛けたナンバー。楽曲冒頭のアコースティックギターとともに描き出した後ろ向きな部分は、ひょっとしたらパブリックイメージからは少々意外にも感じられるものかもしれない。だが、そういった部分を包み隠さずに自らの言葉と音で表現するからこそ、“アーティスト・内田雄馬”が放ちつづける光もさらに際立つはず。しかもこの曲自体も、ただ後ろ向きで終わるわけではない。ファンへの感謝とともに、前を向いて世界を歩みはじめるまでの姿を描きひとつの作品として完成させているのだ。そうした楽曲単体の素晴らしさと、自身の活動全般の奥行きをさらに増させるという素晴らしさを兼ね備えた楽曲として、記念すべき1曲は誕生した。

M11「Happy-go-Journey」

自身が主演も務めるTVアニメ『とんでもスキルで異世界放浪メシ』のEDテーマであるこの曲は、M10に続いて“旅”を主題とした、ヒップホップ色強めのR&B。いわゆる近年のアニソンの主流である音数の多さやテンポの速さなどの要素はないものの、陽の光を浴びながら楽しそうにゆったりと旅路を進んでいく姿がよく似合う、ほのぼのとした雰囲気強めのアニメ本編にもマッチする楽曲だ。そんなこの曲は、サビの「Going going now」のハマリの良さを筆頭に、とにかくメロディが非常にキャッチー。それを内田が明るくグルーヴィーに歌唱することで、その良さをさらに引き出している。

M12「Good mood」

2022年2月リリースのシングル表題曲は、直前までのハッピーさを一気にひっくり返すかのような、叶わぬ恋を歌ったR&Bバラード。ただ、ムードがガラッと変わるからといって全く断絶しているわけではない。むしろグルーヴィーさあふれるM11の後に「このgroove にどれだけ君への想いを乗せても届かない」から始まるこの曲を置いた点や、中盤以降にヒップホップの要素が色濃くなる楽曲に乗せたグルーヴィーな歌声が、より切なさを引き立てていく。そこに非常に大きな想いを乗せつつも、キーの高いサビを透き通るようなファルセットを駆使して歌うなど、ボーカルには熱さよりも美しさが宿っていることが、またたまらなく哀しい。

M13「1 LOVE 1」

アーティストデビュー5周年の翌日に配信リリースされたこの曲は、アルバムのラストにおいて、エンディングソングではなく未来へと続くエピローグソングとしての役割を果たす。これまでのファンへの感謝や愛を込めるのと同時に、これからも共に前進していくという誓いも盛り込んだ“内田雄馬の未来”を感じさせるナンバーに仕上がっており、それを彼のホームグラウンドとも言えるダンスポップに乗せてスタイリッシュに歌うことで未来への期待感をさらに高まらせて、『Y』という1枚の物語を締めくくってみせた。

改めて13曲を振り返ると、その構成の巧みさにも舌を巻く。アニメ主題歌も組み込みながらひとつの物語を作ったかのようにスムーズで、曲順どこを取っても意味が存在するため、まずは曲順どおりに全体を味わうことをおすすめしたい。そうすることで、従来以上に多彩な表情を詰め込んだ『Y』という1枚をより深く味わうことができ、“内田雄馬の未来”への期待を高めることもできるはずだ。

Information

内田 雄馬 3rd アルバム『Y』2023年11月29日(水) 発売<5th Anniversary BOX> CD+Blu-ray ※完全限定生産
品番:KIZC-90737~8
価格:¥9,900(税抜価格¥9,000)
・ワンピースBOX仕様

<CD+BD盤> CD+Blu-ray
品番:KIZC-739~40
価格:¥4,290(税抜価格¥3,900)
〈初回製造分のみ〉
・スリーブケース
・ミニ写真集

<通常盤> CD
品番:KICS-4112
定価:¥3,520(税抜価格¥3,200

【収録内容】
◾️CD
1. I'm here
2. Shot
3. Joyful
4. Congrats!!
5. DangeR
6. Hope
7. iDea
8. Salt & Sugar
9. ものたんない
10. 旅路 ←NEW!
11. Happy-go-Journey
12. Good mood
13. 1 LOVE 1

◾️Blu-ray
〈Music Video〉
1. Joyful
2. Hope
3. ものたんない
4. 1 LOVE 1
5. Salt & Sugar
6. Happy-go-Journey
7. Congrats!!
8. Good mood

〈Dance Shot〉
・Joyful
・DangeR

〈Making〉
・3rd Album「Y」
・Salt & Sugar
・Congrats!!
・Good mood

購入はこちら

https://kingeshop.jp/shop/g/gKIZC-90737/

ダウンロード・ストリーミングはこちら

https://yuma-uchida.lnk.to/3rdAlbum_Y

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