ティワットの数々の思い出が蘇る「原神」コンサート横浜公演をレポート――壮大なオーケストラと懐かしい映像のハーモニーに感涙

COGNOSPHEREは、オープンワールドRPG「原神」のオーケストラコンサート「GENSHIN CONCERT」を、11月25日にパシフィコ横浜国立大ホールにて開催した。

日本をはじめ、シンガポール、メキシコ、マレーシア、アメリカ、韓国、イギリス、ドイツといった世界各国で開催されている今回の公演。

日本においては、2023年2・6月に開催された「原神 Symphony」に引き続き、栗田博文氏が指揮を務め、国内屈指の名門オーケストラ・東京フィルハーモニー交響楽団が演奏を担う豪華な布陣で行われた。

■第一部では、モンド・璃月に関連した楽曲が奏でられる

まずは、静かな始まりから様々な楽器が加わり壮大なメロディへと変わっていく、「原神」メインテーマからコンサートの幕は上がる。ゲームの起動時に流れる、何百、何千回と繰り返し聴いた楽曲だが、じっくりと最後まで曲を聞く機会は意外と少なかった。今回、生のオーケストラとの相性が抜群であることに改めて気付かされる形に。

その後は、これまで旅人が冒険してきたそれぞれの国をテーマに楽曲が演奏されていく。

モンド編は、あらゆるプレイヤーにとって馴染み深いであろうモンドの街のテーマである「モンドの一日」からスタートし、クレー・ウェンティのPVにも採用された「真紅の騎士、出発!」と「詩人の仕事」が奏でられる。とくに賑やかで明るいクレーの楽曲は、それまで厳かな雰囲気もあった会場の空気も一変させてくれる。

さらには、モンド大聖堂の「風が運んだ聖歌」、共にアカツキワイナリーの「孤独の旅路」に「アカツキワイナリー」、ドラゴンスパインの「銀白の希望」に「清らかな笑顔」といった、様々なフィールドで流れる楽曲が続く。

中でも印象的だったのがドラゴンスパインの2曲で、演奏と共に流れた映像には、イベント「白雪に潜みし影」に登場した雪だるまの横に並んでいるエウルアの姿が。かなり初期の方に行われた懐かしのイベントで、「あのいろんな雪ダルマのパーツを集めたなぁ」という記憶が自然と蘇ってくる。

ラストは、魔神任務1章ラストとイベント「杯の中のバラッド」の映像と共に、「仲間の力」「ささめく帰風」という優しげなピアノの音色が印象的な2つの楽曲で、しっとりとした雰囲気の中モンド編は締め括られた。

続く璃月編は、2022年に行われた海灯祭イベント「華々しき流年」で流れた「華やかな灯火、星々の如く」からスタート。

ゲーム内季節イベントとして恒例の海灯祭だが、中でも筆者はこの「華々しき流年」が一番のお気に入りで、ラストに刻晴と共に群玉閣で花火を見て迎える美しいエンディングは、今でも鮮明に覚えているほど。胡桃と鍾離をはじめ、大勢の璃月のキャラクターたちが花火を眺める尊すぎるラストのムービーもあわせて、始まりからほぼクライマックスのような盛り上がりとなっていた。

その後は、胡桃の「生と死の送迎者」、タルタリヤの「雪国より訪れし者」「アヤックスからの返信」、鍾離の「浮世閑歩」、甘雨の「麟躍幽岩」、白朮の「治病求本」といった、様々な璃月キャラクターをテーマにしたバリエーション豊かな楽曲が続く。

それぞれの楽曲ごとに主役となる楽器が大きく変わり、各々のキャラクターの個性が伝わってくる。キャラクター実践動画では、声やSEも入っているためBGMだけを聴く機会というのがあまりなかったこともあり、新鮮な気持ちで曲を堪能できた。

璃月編最後の曲となったのが、璃月の物語のクライマックスでもある魔神任務第2章で用いられた「生と死の刹那」。それまでの楽曲とは一風雰囲気が異なる、緊迫感と切なさがあわさった2面性のあるメロディを、一瞬弱くなったかと思えば、ここぞというところで音の厚みが増す、生演奏ならではのメリハリで表現されていた。

■稲妻・スメールに加え、フォンテーヌの曲も演奏されるサプライズ

第2部の幕開けを飾るのは、伸びやかな笛の音が印象的な稲妻城の楽曲である「稲妻」。ここからは楽器の構成が変わり、三味線を始めとする和楽器が加わった、前半とは違った音の厚みを感じられるようになった。

その後は、神里綾人の「流水盈盈」、神里綾華の「風儀の舞」、珊瑚宮心海の「睡竜の目覚め」とキャラクター実戦動画の楽曲が続く。雷電将軍に関連した「薄櫻が綻ぶ時」「妄念と執念」の2曲では、和と洋の多様な楽器の入り混じり、神としての雷電の存在感、神々しさにあふれた迫力ある音色が奏でられる。

神里綾華がメインのストーリーPV「雪晴れに綻ぶ椿」の楽曲である「羽ばたく時」では、神里兄妹の過去を描いたPVと音楽の盛り上がりが完全にシンクロしており、良い意味で生演奏であることを忘れていたほど、その世界に引き込まれていた。

稲妻ラストの曲になったのが、祭りの終わりのような、どこか切なさを感じさせるメロディが印象的な宵宮のテーマ「瞬きの永遠」。宵宮はスメールと稲妻を繋ぐストーリーが描かれた伝説任務2幕が非常に印象的で、ムービーでも一部のメロディが使われていたのもあり、個人的にも納得の選曲だった。

一方のスメール編では、スメールシティの「揺らめく木々の影」、ヴァナラーナで流れるアランナラたちの各種メロディ、オルモス港の「賑やかな港」といった、ゲームでも馴染みの深いフィールドの楽曲が中心に。

ニイロウの「花神の舞」、アルハイゼンの「疑問、そして沈黙」とキャラクターの楽曲が続いた後、大きな盛り上がりとなったのはスカラマシュ戦のBGM「六輪一露の狂詩曲」と「三千婆界の御詠歌」。曲がスタートするとゲーム内でもボーカルを担当するPaolo Andrea Di Pietro氏が登壇し、オーケストラと共にその美声を会場中に響き渡らせる。

今回のコンサートでは、バトル時のBGMがまだ登場していなかったのもあり、このパートのインパクトは抜群。ゲーム内ではBGMのコーラスとして歌声が入っている印象だったが、コンサートではPaolo Andrea Di Pietro氏の声の迫力が凄まじく、主役といっていいほどの存在感を発揮しており、ゲームとは違った楽曲の良さを感じることもできた。

最後に、スメールシティでお馴染みの「いつかの知恵、いつかの願い」でしんみりとした後、スメール編を締めくくるのはフィールド、バトルなどスメール内の様々なBGMのメロディを内包する象徴的な楽曲である「スメール」。とくにバトルBGM部分は原曲より激しい、壮大なアレンジが加えられていたのが印象的で、コンサートならではの醍醐味を味わうことができた。

そこで幕は降りたかに思えたが、鳴り止まない拍手に答える形で、指揮の栗田氏が再登壇。

Ver.4.0.で実装され記憶にも新しいフォンテーヌから、巡水線の「あたたかな風を眺めて」、フィールド曲の「生い茂る木陰の原を訪ねて」、フォンテーヌ廷「衆の水の詩」の3つの楽曲が演奏され、歓喜の拍手の中コンサートは締め括られた。

モンド、璃月、稲妻、スメール、そしてフォンテーヌと、これまでの旅路を振り返るような構成で行われたコンサート。超一流の演奏が素晴らしいのはもちろんのこと、同時に流れていた映像とのシンクロっぷりがとにかく素晴らしく、各キャラクターが最初に発表される時のワクワク感、懐かしいイベントの記憶、フィールドで起こった出来事など、プレイしていた時の思い出が次々と溢れてきた。

コンサート終了後には、ゲームを起動して印象に残ったBGMが流れる場所に行き曲を聴き直して「こんなにいい曲だったのか」と改めて感動したのは、おそらく筆者だけではないだろう。今まで気づいていなかった「原神」の魅力を知るきっかけにもなった素晴らしいコンサートあり、今後の開催にも期待したいところだ。

会場では、来場者全員に風の翼などのゲーム内アイテムと交換できる来場特典と、コンサート記念チケットがプレゼントされていた。

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