雨の予選がタイトル候補を翻弄。フェリペ・マッサ初勝利で7名が王座最終決戦へ/SCB第11戦

 王者ルーベンス・バリチェロ(モービルエール・フルタイム/トヨタ・カローラ)を含め、緊迫のタイトル戦線が続く2023年SCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”の第11戦が11月24~26日に開催され、オープニングヒートではTOYOTA GAZOO Racingブラジル陣営のブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)が、難しいダンプ路面を制してポール・トゥ・ウインを達成。

 続くレース2では前戦でも優勝争いを演じた42歳のフェリペ・マッサ(ルブラックス・ポディウム/シボレー・クルーズ)が覚醒し、待望のストックカー初勝利をマークする結果に。この優勝により、自身にとって忘れられない2008年インテルラゴス、F1ブラジルGP以来のポディウム頂点に登壇することとなった。

 今季も残り2戦となったSCBはパラナ州西部カスカバルでの勝負を迎え、チャレンジングな高速コーナーが特徴のアウトドローモ・インテルナシオナル・ジルマー・ビューでの金曜走り出しは、気温22度と肌寒い曇り空のコンディションのもと、まずはセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)のトップタイムで始まった。

 この時点でランキングトップ5内で最上位につけたのがシリーズ3連覇王者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)の7番手で、予選に向け各タイトル候補に緊張感が漂うと、直前に降り始めた雨の影響でさらに困難な条件となったQ1、Q2、Q3の各セッションでは、実力者たちがセッション開始早々に排除される厳しい展開となる。

 ここで史上最年少SCBタイトル記録保持者でもある2戦連続ポールシッターのフェリペ・フラーガ(ブラウ・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)や、チームタイトルでも重要な役目を演じるランク3位のチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)、さらに選手権首位で2021年王者のガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)やディフェンディングチャンピオンのバリチェロといった面々が早々に姿を消し、軒並み20番手前後からの勝負を強いられる。

 ここでセラを退け今季2度目、キャリア通算4回目のポールポジションを獲得した26歳のバプティスタは、明けた日曜も濡れた路面と乾いた部分の混在する「レースの複雑さ」も克服し、タイトル候補セラとの熾烈なマッチアップも制しての“ライト・トゥ・フラッグ”を決めてみせた。

フェリペ・フラーガ(ブラウ・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)や王者ルーベンス・バリチェロ(モービルエール・フルタイム/トヨタ・カローラ)らが、雨の予選で早々に姿を消してしまう
ブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)が、予選最速を奪ってみせた
「路面がまだ濡れていて、スリックタイヤを履いた状態でスタートしたから本当に大変だったが、条件は誰にとっても同じ」とレース1“ライト・トゥ・フラッグ”のバプティスタ

■SCB初制覇を喜ぶマッサ「表彰台の頂上が僕らにとって最高の場所」

「昨日のポールポジションが今日の勝利に貢献した。路面がまだ濡れていて、スリックタイヤを履いた状態でスタートしたから本当に大変だったが、条件は誰にとっても同じ。ダニエルは(義務)ピットの出口で僕を追い抜いたが、なんとかコース上で彼を逆転し、追い抜くことができた」とバプティスタ。

 続けて日曜の午後開始された30分+1周のレース2は、前戦トップ10リバースで首位発進を決めたルーカス・フォレスティ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)に対し、フロントロウに並んでいたマッサが強襲。

 オープニングラップではルーキーのジャンルカ・ペテコフ(フルタイム・スポーツトヨタ・カローラ)が同じトヨタ陣営のカミーロと絡み、早々にレースを終える波乱も起こるなか、ファン投票によるオーバーテイクボタン“ファンプッシュ”を活用したマッサが首位浮上に成功し、レースをリードしていく。

 義務ピットのルーティンを終えた後半スティントでは、王者バリチェロもピットでレースを終える一方、同じくF1時代に跳ね馬をドライブしたマッサは、キャリアにおける歴史的な勝利を達成すべく28周を走破。“あの”ブラジルGP以来、約15年ぶりに表彰台の頂点にカムバックした。

「どのカテゴリーにおいても初勝利はつねに特別なものだ。F1でも2006年にトルコで優勝したときのことをよく覚えている。そして今、僕らはここストックカーで勝利を収めたんだ」と、もうひとつの特別な勝利に言及し、SCB初制覇の喜びを語ったマッサ。

「今日の仕事は、戦略とタイヤの点で僕もチームも完璧だった。ここでのレースペースは非常に良く、とくにレース2ではタイヤがすでに古かったなか、素晴らしい結果を得ることができた。2番手からスタートして首位に浮上し、すぐにリードを広げてられた。ピットストップしてもトップに戻ってこられたから、本当に素晴らしい展開になった。表彰台の頂上に立つことが僕らにとって最高の場所だし、とてもうれしい。ここカスカバルのファンやチーム、そしてこの瞬間を一緒に共有してくれた皆には感謝しかないよ」

 これで12月15~17日にサンパウロのアウトドローモ・デ・インテルラゴスで開催される最終戦『スーパーファイナルBRB』では7名のタイトル候補が参加することになり、ランク首位のカサグランデを筆頭にセラ、フラーガ、カミーロ、そしてタイトル防衛に挑むバリチェロやリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)らに、自身初のファイナリストの地位を獲得したラファエル鈴木(ポール・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)らが王座に挑む。

「あまり良くない週末を過ごした。土曜日が僕らに大きなダメージを与えて予選で出遅れたし、前進する道はあまりなかった」と選手権首位で2021年王者のガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)
レース2では前戦でも優勝争いを演じた42歳のフェリペ・マッサ(ルブラックス・ポディウム/シボレー・クルーズ)が覚醒
「F1でも2006年にトルコで優勝したときのことをよく覚えている。そして今、僕らはここストックカーで勝利を収めたんだ」SCB初勝利を喜ぶマッサ

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