<ライブレポート>ロザリーナ、真夜中の澄んだ空に浮かぶ“星”をさせた【ロザパーリーナイト vol.2】

シンガーソングライターのロザリーナが11月19日に東京・Shibuya eggmanにて、ワンマンライブ【ロザパーリーナイト vol.2】を行った。

今年の6月に東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEで約2年ぶりとなるワンマンライブ【ロザパーリーナイト vol.1】を開催したロザリーナは、メジャーデビュー5周年を迎え、「今まであまりやっていなかったライブをもっとメインにしたい」という心境の変化を語っていた。そして、前回のワンマンライブから4か月という短いタームで行われる2回目の【ロザパーリーナイト】。10月29日に梅田シャングリラで行われた大阪公演に続く東京公演は、アニメ『EDENS ZERO』第2期2クールのEDテーマとして書き下ろしたメジャー7枚目のシングル「my star」を中心に、真夜中の澄んだ空に浮かぶ“星”たちがよく見えるようなライブとなっていた。

ギター、ベース、ドラムという3ピースのバンドメンバーを従えて、満員のライブハウスのステージに上がったロザリーナは、“金星”に思いを巡らせ、オーディエンスを夢のような美しい世界へと誘う「メリーゴーランド」で星空パーティーをスタートさせた。オープニングから場内にクラップが鳴り響く中で、ハンドマイクを持った彼女は、マーチングドラムに合わせてティンカーベルのように飛び跳ねながら、<暗闇から抜け出す目標>となる“小さな星”を輝かせ、「ドレスコード」で大きく両手を広げて<まだ知らない世界に一緒に行こうよ>と呼びかけた。現実からゆっくりと離陸して、遥かな星空が広がる世界に羽ばたかせてくれる、旅のはじまりのような3曲となっていた。

最初のMCでは、【ロザパーリーナイト】というタイトルについて、「コロナ禍でのライブを経て、みんなが声を出せるようになったり、笑顔が見えた時に、ライブって最高だなって思えて。みんなでパーティーがしたいなという思いで付けました」と説明。「私が作った曲をみんなが歌ってくれるのが本当に嬉しくて。ただ、私は暗い曲が多いんです」と場内を笑わせた後、エレキギターの音色が追憶を引き連れてくる「君がくれたmelody」は、スタンドマイクで目を瞑り、ハスキーながらも幼さの残る歌声で“あの頃”の君への喪失と微かな未練を綴り、世間や他人の声に惑わされながらも<やっぱり自由に生きていたいよな>と自問自答する「飛べないニケ」ではゆったりしたグルーヴにオーデェンスは手を掲げて心地よく揺れていた。続く、「悲しみのセル」では「声を聞かせてくれる?」というロザリーナの呼びかけと<心の声を聞かせて>というフレーズに応えた観客から<ここにいるよmy friend/ひとりじゃないよmy friend>という大合唱が沸き起こり、「長い夜」では夢の中でしか会えない君に会いたいという強い思いを握りしめたスタンドマイクに全力でぶつけ、アニメ「歌舞伎町シャーロック」のEDテーマ「百億光年」で、ようやく暗闇だった夜空に月が浮かび、微かな星の輝きが戻ってきた。ひと言で言えば、星が見えなくなる暗い曲が並んでいたが、R&Bバラードからロックバラード、そして、ピアノとストリングスがフィーチャーされたエモーショナルなバラードと、ロザリーナのヴォーカル表現とサウンドの多彩さがじっくりと味わえるブロックとなっていた。

ここで彼女は、「百億光年」について、「ちょうどオリオン座が見えてくる頃だから、オリオン座を見ながら作った曲だなと思って、セットリストに入れました。オリオン座のベテルギウスはもう消滅してるかもしれないけど、何光年も先にあるから、いまも光が届いてる。それが素敵だなと思って書いた曲だったんですけど」と語った上で、今回のMCのために調べ直したところ、「肉眼では数千光年までしか見えないそうです」と驚きの真実が発覚したことを明かした。「……ちょっと盛りすぎちゃったよね」と笑わせた彼女が改めて、「人に話すときは盛った方が面白くなるので、これからも私は自信を持って“百億光年”で歌っていこうと思います!」と決意を表明すると、場内からは温かい拍手が沸き起こった。

そして、昨年、天国へ旅立った愛犬に向けて、実家で一緒に住んでいた14年間の思い出を込めた未発表曲のラヴァーズ「I miss you」から、かつてのインタビューで「ひいおばあちゃんのお墓の前でギターで弾きながら歌いたい」と語っていたスローバラード「my star」。そして、ドラマ「unknown」の挿入歌で“愛”を歌った「I knew」へ。喪失感や傷、言いようのない悲しみを乗り越えるために、ぐるぐると巡らせた思考の果てに、少しずつ出会いの意味を理解し、別れを受け入れ、ゆっくりと時間をかけて前を向いていく。その過程を静かに見届けるような彼女の語りかけるような歌声には、聴き手の心を癒してくれるような響きがあり、“夜型の引きこもり”を自認するロザリーナが真夜中に空を見上げ、<星になった君>を思い浮かべながら、“愛”や“命”といった身近なようで深遠なテーマと真摯に向き合ってきたことを再確認させられた思いがした。

観客に「恋してますか? 恋って楽しいよね」と呼びかけた彼女は、アコギを持って、前日にデジタルリリースしたばかりの新曲で、「どんなに小さい数字でも、どんなに大きい数字でも、0をかけると0になる」と説明した「0×98」を披露。諦められない“僕”(98)と気分屋の“君”(0)の空虚な恋愛模様を切なくもポップに表現すると、「ライブで一緒に歌いたくて作った」という「ハッピー注意報」では<tu ru ru……>のシンガロングと盛大なクラップが巻き起こり、ラストスパートへと突入。ダンスビートに乗せて<僕はまだ限界を知らない>とシャウトした「I.m.」から、「にじいろ」「Life Road」で虹を潜って大気圏を突き抜け、涙を流しながらも<今ありのままに>と繰り返す「何になりたくて、」では、再び盛大なクラップと大合唱が巻き起こった。最後は、出会えた喜びを綴った「通行人B」で<星を見失ってさまよう子羊のような>僕らだけど、<ずっと続いていく道を一緒に歩いていこうよ>と観客と一緒に歌い、会場が一体となって掲げた手を左右に振る中で本編は締めくくられた。

アンコールで再びステージに現れたロザリーナは、ファンクラブ開設と2024年3月8日に東京・shibuya WWWXでワンマンライブ【ロザパーリーナイト vol.3】を開催すること発表。場内からは喜びの声と拍手が上がった。

そして、「今日、ロザパーリーナイトにきて、楽しかったな、明日も頑張ろうって思ってもらえる曲ってなんだろう? と思って。次に歌うのは、私がすごい落ち込んでたんだけど、少し前向きになってみようかなと思っていた最中に書いた曲です。星って天気で見えないだけでさ、いつもそこにあるじゃん。今日、星見えないなって思うけど、本当は、その奥に星があって、絶対に。そうやって思って空を見ると、もうちょっと楽しく見えるんじゃないかなって。だから、同じ明日でも、ちょっと見え方を変えたら、なんか楽しくなるんじゃないかなという思いを込めて届けられたらなと思います」と語り、夜空に浮かぶ星の眺め方を提言する「星の王子さま」でエモーショナルな歌声を響かせた。そして、<YES!><NO!><HO!!>というコールで、まさにパーティーのような盛り上がりを見せた「Rolling Rolling」、<いつだってノープランで/星を見に行こう>と呼びかける「See U again」で笑顔で<バイバイ>と手を振りながら再会の約束をしてステージを後にした。

終演後、地下1階のライブハウスから螺旋階段を上がって外に出ると、渋谷の空にもオリオン座だけはしっかりと輝いていた。ロザパーリーナイトの余韻に浸りながら、オリオン座を眺めつつ帰路に着いた方も多かったのではないかと思う。

Text : Atsuo Nagahori

◎公演情報
【ロザパーリーナイト vol.2】
2023年11月19日 東京・Shibuya eggman

【ロザパーリーナイト vol.3】
2024年3月8日 東京・shibuya WWWX

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