【後編】裸眼の視力と眼鏡の視力、どちらで判断すればいい?近視の治療法やブルーライトについて眼科医小川院長に教えていただきました

【前編】の話
視力って測定値が正確じゃないの?裸眼の視力と眼鏡をした視力、どちらで判断すべき?そんな疑問に、 医療法人SCM 新川中央眼科院長 小川 佳一先生から前後編に分けてお答えいただきました。今回は後編です。

前回は眼科医の視力の見方や、近視の仕組みについてお話ししました。
今回は近視の治療法や、ブルーライトについてです。

最近の近視治療法について

太陽光をたくさん浴びることによって、脳内の活性化物質ドーパミンが増加すると眼軸の成長が抑制されます。ですから、外でたくさん遊んでいるお子さんは戸外活動の少ないお子さんよりも近視の量は少なくなる傾向にあります。
特殊なコンタクトレンズを夜間装用するオルソケラトロジーは、黒目(角膜)を変形させコンタクトレンズの圧痕をレンズのように使うことで、一時的に裸眼視力をよくする器具ですが、周辺視のぶれを減らすことによって眼軸進展が抑制され近視の進行が遅くなることが報告されています。
また、近方を見る時にピントの調節をかけるのですが、この調節がうまくかけきれず調節ラグというものが大きい方には、累進眼鏡や累進コンタクトレンズを装用することによって近視の進行を抑制できるとされています。
近年、最も注目されているのが低濃度アトロピン点眼による眼軸進展抑制治療です。アトロピンは先ほどのドーパミンと同様に眼軸の成長を抑制する効果があるため、近視進行抑制治療としては効果が高く、台湾・シンガポールでは一般的な治療法になっています。日本では一部の眼科の先生が個人輸入で処方されているようですが、将来的には日本でも普通に処方されるようになることが見込まれています。
さらに赤色光や紫色光の照射による眼軸進展抑制治療が試されていますが、赤色光による網膜光障害の報告もあり、一般的な治療にはまだまだならないようです。

ブルーライトカットメガネってどうなの?

ところで、一時期よく話題になっていたブルーライトカットメガネはどうなのでしょうか?
強い光を見たときに網膜が傷んでしまう網膜光障害が生じることがありますが、青の波長の光が特に障害性が高いことから眼に良くないとされていました。
しかし、実際の生活で網膜光障害を起こすほどの強い光を浴びることはまずありません。また、青の波長の光は覚醒情報といって「今昼間なので目を覚ましていなさい」という命令を脳に与える光です。そのためブルーライトカットメガネを装用すると日中の眠気につながることがあります。ですから、ブルーライトカットメガネの装用はむしろ弊害さえ起きます。
ただ、寝る前にブルーライトをたくさん取り入れてしまうと脳は覚醒状態を続けてしまいます。そのため、寝つきが悪くなり入眠障害の原因になりますので、夜間寝る前にスマホやタブレットを見る場合にはブルーライトカットメガネをかけるのが良いでしょう。

執筆者

小川 佳一先生
新川中央眼科院長
札幌生まれ 平成8年旭川医科大学卒業
札幌医科大学眼科学教室で研修し、旭川厚生病院、苫小牧市立総合病院、道立江差病院、札幌医科大学付属病院を経て平成18年新川中央眼科を開業。
札幌医科大学では斜視弱視外来のスタッフとして斜視・弱視、先天性白内障などの小児眼科を担当。
専門の斜視・弱視、屈折矯正、白内障手術だけではなく、開業後、総合病院では少なかった「眼科不定愁訴」の訴える患者が多いことから、ドライアイやマイボーム腺の疾患に興味を持ちドライアイ研究会・LIME研究会に所属し積極的に治療に取り組んでいる。

新川中央眼科ホームページ
https://www.shinkawa-med.jp/

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